#4
稔は司と恋人になりたくて、神様の家について調べていた。結果失敗して、何らかの理由で姿を晦ましてしまった。
そんな勝手な憶測を立てた。でも噂からして、これが最も妥当に感じる。
電話も繋がらないし、家はもぬけの殻。稔は一人暮らしだった。由貴と同様、仕事の為にこの街に移ってきた。夢や目標は聞いたことがないが、仕事に対する情熱は人一倍あった。働く基本の姿勢は彼から教わった。
彼に対して恋情の類、未練などはない。だが彼の家族のことが気になった。稔にはもう高齢の両親がいて、毎月仕送りをしていると言っていたのだ。
司には夜に外へ出るなと言われているが、時間はまだ二十時。今なら平気だと思い、廃人が特に集まるストリートへ向かった。
鬱蒼とした空気、歩いている者はいない。強いて言うなら地面に伏せて寝ている者ばかりだ。景色だけ見れば地獄絵図のよう。街灯はひとつも点いておらず、ほとんどの建物に蔓が垂れ下がっていた。この辺りは、もう誰も住んでないのかもしれない。
恐怖感は、今現在息を潜めている。
歩いていると固い何かを踏んでしまった為、慌てて足をどけた。何かの液晶画面……目を凝らして見ると、見るも無残に破壊されたパソコンやタブレットが散乱していた。
────廃人さんは何でエンジニアばかりだと思う?
こんな時に司の言葉が思い浮かぶ。
何でITに精通している者ばかりが、神様の家に辿り着けるのか。
それは恐らく、神様の家とやらを攻略するのに情報技術が必要だからだ。ネットワークの仕組みの理解を求められる。それを知っているエンジニア達は、力試しのような気持ちでパソコンを使う。
思わず立ち尽くす。点と点が繋がったような想いで、折られたキーボードを手に取った。
何をするにもパソコンが必要。ということは、“神様の家”は……現実では手が届かない、ネットの中にある。
アクセスに成功して、無事に戻れたら好きな人と結ばれる。が、代わりに何かしらの自由を失う。
アクセスに成功しても、脱出に失敗すれば精神崩壊を起こして人としての全てを失う。初めから手を出すべきじゃない、危険な賭けだ。
「ここで何してるの?」
「うわっ!」
突然高い声で話し掛けられ、持っていたキーボードを落としてしまった。しかも足の上に落下し、痛みで悶絶する。
恐る恐る前を見ると、ロングヘアの少女が立っていた。髪は真っピンクで、夜中だとさらに浮いて見える。
「変なの。ここに来て驚いてる」




