#2
あの故郷は今も変わってない。変わったのは自分だ。
子どもではないが大人としては不確定な立ち位置にいる。振り落とされないよう手すりにしがみついて留まっている。
ようやく慣れ始めた職場、どこか落ち着かない街。
現状に適応することに精一杯で、恋愛は空回りしてばかりだ。司といること、その影響を畏れてばかりで、自分の本当の気持ちが分からずにいた。
でもようやく分かった……吹っ切れた気がする。
司といたい。
彼といると安心する。稔のことを抜きにしても、自分の至らなさを受け入れてくれていた。しょうもない自分なんかを心配してくれる、お人好しな彼が心配だ。
これからは隠し事なんてしないで、まっさらな状態で彼の力になりたい。できるだけ周りに迷惑をかけないように、自分がやれることをやろう。
軽く深呼吸し、スマホのアドレス帳を開いた。
未練がましくまだ残している、「稔」と書かれたファイルを開く。電話を掛けると直ぐ、この番号は現在使われておりませんという音声が流れた。
然もありなん、冷静にファイルごと削除した。別に司のことを口出しする気はなくて、元気にやっているかだけ知りたかったのだが……もう彼のことは忘れよう。
スマホを仕舞って大きく背伸びし、屋内へ戻った。
この時はまだ気楽に考えていた。
稔が行方不明になっていると知ったのは、翌週のこと。彼によく似た廃人が夜に徘徊している、と知ったのもその時だった。




