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イチリン  作者: 火炙
21/22

20 開式

 そこはまさに大型テーマパーク。

大きすぎる門をくぐると、広大すぎる庭園が。


 初めて見る夢の様な光景に、興奮が収まらない古古伊(ここい)と落ち着きが無い美華条(みかじょう)。

美華条家の執事として、潜入、護衛を務める二人の殺し屋は今や仕事モード。背筋を正し、主人である美華条の三歩後ろを歩く姿は、さながら本職のエリート執事そのもの。


 「ちょっと貴方、一応新米執事として同行してるんですから、屋敷内に入ったらちゃんとしてくださいよ」

 「分かってますって。って!アレ!本物の噴水とか初めて見ましたよ!!」


 呆れ顔の美華条と、凛とした表情を崩さない執事達。


 歩く事十分。一行は入り口の前へ。


 「ここからはマジでちゃんとして下さいね!」

 「分かりましたって」


 「上乃上(あのひと)ホントにそーいうの細かく言ってきますの!だからホントに―」

 「大丈夫ですって。任せて下さいよ!」


 ギイイィィィ―――


 二人の執事が門を開けると、そこはまさに百合の花園。

美しく可憐な令嬢たちが、会話に花を咲かせている。


 「コラっ!目を奪われないっ!」


 そんな美華条の小言で目を覚ます古古伊。


 絢爛豪華なシャンデリア、銀に輝くカトラリー、鼻腔を擽る甘い香りは蜜を浴びた一口のドーナツ。

四人は花園の間を抜けると二階へ。階段を上った突き当りの奥から二つ目の部屋、美華条に用意された一室へ入る。


 部屋の奥のカーテンを開けると、先ほど一行が通り抜けた大広間が見下ろせる、マジックミラー仕様の窓があった。


 「ふぃ~~~~やーーっと着きましたわ~~~」


 どすんとベッドへ身を投げる美華条。


 「もーー。わーくし、こーゆう空間苦手なんですの。分かりません?息が詰まるというか」

 「うるせえぞ。ガタガタ文句垂れんじゃねえ。....ガキ、これ頭に入れとけよ」


 異神(いがみ)は古古伊に一つの小冊子を投げつけた。


 「なんです?コレ」

 「....チッ、ここに居る人間全員の情報だ。最低でも名前年齢趣味出身は覚えろ」


 「...え?全部?覚える?......ええ?」


 異神は返事代わりに、古古伊を睨みつけると部屋を退出した。

絶望と言わんばかりの古古伊の手から冊子を取ると、代わりに一枚の小さなメモ用紙を渡したもう一人の執事。


 「いーよ。そんなの覚えなくて。けど、この子達の名前だけは頭に突っ込んでて」


 ニコッと満面の笑み浮かべる執事に、一瞬心を持っていかれそうになるも、一つの問いを投げかける。


 「あっ....えと、なんて呼べば....?」

 「あー、そいえば名乗ってなかったね。”たーとん”でいーよ」


 褐色ギャル系殺し屋から、何とか視線をメモ紙へ移す。


 「そこに書いてる子達はね、この会の幹部たちなんよ」

 「幹部...へー、そうなんですね、へー、ふーん」


 「......あ、ムズイ字多いよね。じゃあ、上から順に教えてくね」


 ・ 煌和丞 撫子


 「これは、ひわなじょう なだこ。まー、ゼッタイ読めんよね」

 「なでしこ...じゃないんですか?」


 「そ。違うの。和装の美人さんだし、会ったら一発で分かるっしょ」


 ・ 鏡湖嬢 霧彩


 「で、コッチが みなこじょう きりあ。無理よね。コレも」

 「はえー、みなこじょう...凄い名前ですね...」


 「わかるぅー。アレ、あそこでお菓子をつまんでる露出度が極端に高い子ね」

 「わっ、ちょ、えっ、あれ大丈夫なんですか?」


 「あはは!童貞丸出しじゃん!だいじょーぶ。あー見えて大事な所は隠れて......あっ、全部出てるわ」

 「ほら。痴女嬢の事は放っておいて、シルクさんの説明に移りなさいな」


 爆笑するギャル執事を静かにさせ、脱線した話を戻す美華条。


 ・ 明星 シルク


 「あっははは!はーー、で、そう。 みょうじょう しるく。ね」

 「この人は流石に読めました」


 「お、やるねー。あの、ちびっ子使用人に囲まれてる、ゆるふわガールがそう」

 「あれはただのペドフィリア。ろくでなしのお嬢様ですわよ」


 ・上乃上 迦梨奈


 「で、コイツね」


 解説する声がワントーン低くなり、表情が真剣になった。


 「この子は、 かみのじょう かりな。僅か九歳で総統括官に任命されたお嬢様。世界一の美人で、人類史史上最高の美形とも称されてるの」

 「それは確かに分かります」


 「うん。あーしも思う。それと、彼女は能力者。花思(セラフ)が開花してるの」

 「セラフ?なんですかそれ?」


 ここに来て、あまりにも基礎的過ぎる問いに、本日二度目の呆れ顔を見せる美華条。


 「ん、おっけ。じゃあ簡単にだけど教えるね」



 ま、ちょーかんたんにだけど話すね。

まず、あーしら人間の体内には彗(すい)ってゆう種を包んだ臓器があるのね。これはどんな人間にも例外なくあるの。その中の種が開花すると、超能力が使える様になるって訳。

でも、開花出来るのは数千万に一人居るか居ないかってレベルだし、すんごい確率なの。


 ち な み に 彗から出てる根は体外に出せたりするの。......こーやってね。コレを根伸って呼んだりしてるよ。これの太さとか長さは人それぞれだから馬鹿にしないよーにね。



 「どう?こんな感じでおっけ?」

 「なんとなくは...」


 「ん、そんぐらいでいいよん。詳しくは咲ちゃんに聞いてねん」


 あーだこーだと話していると、ノックも無しに扉が開いた。

異神は戻るや否や、窓際へ。


 「始まるぞ。出なくていいのか?」

 「あーん?わーくしは開会式には出なくても良いんですの」


 「......ふん。阿呆丸出しだな」


 ぶっきらぼうな返答を鼻で笑うとこう続ける。


 「そんな奴でも幹部になれると言うから程度が知れるな。違うか、美華条」

 「うっせ」


 こうして”華のお嬢様会”は幕を開けた。

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