17 満月の夜
星見夢....花形咲と並んで最強と謳われる貴方。
彼と舞うには状況が悪すぎるわ。出来ればやりたくないのだけど....
ふぅん。満月姫ねぇ....アレは結構、というか上澄みレベルで強いね。
本気を出してもちょっと厳しいかなぁ....うん。情報は貰ったし、もう帰ってもらおうかな。
「意外ね。貴方が来るなんて」
「意外だよ。君みたいなのがこの世界に居たなんて」
世間話もそこそこに、星見は姫にスマホを投げ渡した。
画面の中では、姫の連れて来た少年たちがすやすやと眠っていた。
「これは....配信....?」
「そ。してもらったんだぁ~」
「えっ....なに....えっ?」
屋上に到着した一葉は目を疑った。
「繰り返します!!満月姫と名乗る女性と、この二人の子供に関する情報をお持ちの方!どのような物でも構わないので情報を下さい!コメント欄でもDMでも構いません!繰り返します!」
眠りこける二人の少年を配信画面に大きく映し、リスナーに情報提供を呼び掛ける翔太。
今に至るまで配信を止めなかった結果、同接は二万人を突破。
星見の指示の元、二万人分の知識と、新たな視点を活用して少しでも情報を集めて居た。
「累!Xの方は!?」
「いや!こっちはまだ何も!」
「晴喜!インスタの方は」
「悪い!こっちもなんもない!」
二人は眠っている........これは星見さんの厄介な花思ね。
でも、彼は動く気は無いみたい。アモロソ、アマビレの二人を回収したら今夜は退きましょう。
「ねぇ?星見さん?アイね、今夜はお開きにしようと思うの」
「おー良いね。でもその前に一つ答えてくれるかな?」
星見の願っても無い提案に、姫は快諾。
「一葉を襲った君の四人の友達、教えてもらっていいかな?」
「....いえ。いいえ。それは出来ないわ」
「”知らない”じゃなくて”出来ない”ねぇ....知ってはいるんだ」
「....」
しばらくの静寂の後、満月姫は大きく後ろへ飛んだ。階段の柵を飛び移るように、軽い身のこなしで屋上へ。
一方の星見は、姫とは反対側、建物入り口から外へ出ると、背中に大きな羽を編み、屋上へ飛翔。
バンッッッ!!
大きな音を立てて開いた扉から、風のように素早く姫が現れた。
姫は一直線に翔太の元へ。姫の美しく白い足が彼の命を捉える。
「なっ........」
姫の接近に気が付いたのは、脚撃が当たる直前だった。
死を覚悟する暇すら無い。音も風も存在しない。美しい死が硬直した体に迫る。
「だめ!!!!!」
一葉が翔太の体を突き飛ばした。
「まずっ――」
満月姫が初めて見せた焦り。
一度放った蹴りを止める事は出来ず、一葉の顎を砕き、その体を夜空へ吹き飛ばした。
が、間一髪、上空で一葉をキャッチした星見。
一葉を回収すると同時に反撃。右中指から伸ばした一本の鋭い根が、姫の太腿に穴を空けた。
本来ならば避けれたはずの攻撃。
っ!いけない!気を抜いてしまったわ!えぇ!いっそここで――
いえ、ダメよ。最優先はこの二人。熱くなってはいけないわ。
足に刺さった根を引き抜くと、二人の少年の元へ。
両小脇に抱え込むとその場を後に。しかし、星見は動かない。
星見は理解していた。満月姫の異常な強さを。
一葉を守りながらでは、まず勝てない。追いたくても追えない。
一葉に万能薬を垂らした数秒、視界の中から姫が消えていた。
世間が年越しに賑わう中、満月の夜が静かに終わりを迎えた。




