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イチリン  作者: 火炙
13/17

12 また明日

 翌日、花形咲の帰宅と共に、事件は意外な方向で片付いた。

それはもっとも簡潔で、誰しもが納得せざるを得ないもの。


 case622 ストーカー対処。担当者:花形 咲


 何でも屋への依頼として処理をすれば何人であっても手が出せない。

法が関与している訳では無い。この世界に生きる者の共通認識。不満があっても納得する他は無い。


 情報共有を終えた千羽は『いつか遊びに来い』と、雑な社交辞令を叩き付け立ち去った。

 スマホの内カメで前髪を整えながらダラダラと灰色が立ち去った。


 ここから始まるのは花形咲による傷の治療。

体の怪我は万能薬の活躍である程度は回復した。花形が気にかけているのは心の方。


 しかし、一葉を膝の上に乗せて抱きしめる事しか出来ない花形。

何でも屋でありながら不得手は多々。出来ないことはソレを得とする者に丸投げ、それが花形の働き方。

それでも今回は頼らない。何故か?それは本人もよく分かっていない。


 膝の上で生きているこの少女を。薄く小さなこの少女を。浅い呼吸を促す肺、脆い骨に役不足の臓物達。そしてそれらを包む傷ついた薄い皮膚。

そんな子供を放っておく事が花形には出来なかった。


 ここで一葉が吐いた戯言が花形の思考を一瞬停止させる。


 「ねぇ、今度....千羽さんのお家遊びに行っていい....?」

 「........ん?あーーーー、うん。気を付けて行っておいで」


 起きている人間から聞こえた寝言に花形はそう返すしかなかった。


 そして、後に花形は知ることとなる。この判断は正であり誤であったと。

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