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夢の雫
糸のように細く、幽かに伝い落ちる雫。
青紫の煌めきがその小さな被膜の中、宿っている。生まれて途絶えさせず水ながら熾火のように絶やさぬべく伝えていく。伝承の雫。私たちは知っていた。あなたが優しいこと。
私たちは知っていた。あなたが苛烈で残酷なこと。
誰もが夢を見ていた。青紫の夢。
零れ落ちる一刹那の記憶は夢に寄生した。夢の雫は膨張し、やがて宇宙と等しくなった。
それでも被膜の中で魂の震えは止まなかった。
興奮か怯えか。
やがて雫がついに割り毀されんとした時、その産声は虹となり地球という星に冠した。
魂はどこまでも自由に飛翔した。
あとには小さく光る青紫の破片が静かな微笑を湛えていた。
いつもお世話になっている空乃千尋さんに感謝をこめて。




