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Ⅴ:魔王城の岩場の警戒網 ―不穏なる奇襲―

 カリナたち率いる魔法剣士騎士団アルカナヴァンガード本隊は魔王城ダークフォージ城本体へと突き進む。


【――魔王城本城ダークフォージ城――】


 戦いはいよいよ、大詰めを迎えていた。

 残るは〝魔王城ダークフォージ城〟

 最後の覇王と呼ばれた〝魔王ヴァルガリアス〟が鎮座する居城だ。


 美しき少女である聖剣の巫女にして勇者カリナ・ウイングスは、魔王城へと至る進軍路に毅然として立っていた。

 カリナには3人の仲間にして側近がいた、戦士長エルリック、魔導士長ソフィア、技能士長ミリアの3人だ。


「カリナ、魔王城の周囲は険峻な岩場に囲まれており進軍ルートは制限されるぞ」


 エルリックの言葉にカリナは不安を口にする。

 

「このまま、直進すると左右の岩場から襲われるおそれがありますね」

「時間が無い。突破するしか無いだろう」

「やむを得ません、警戒探知魔法を最大限に発動してください」


 それにソフィアが応じた。

 

「了解、任せて」

 

 支援魔導士勢に命じて、伏兵の存在を探知する魔法を複数発動させる。そして、その状態でダークフォージ城に向けて慎重に進軍を続けた。

 魔王城外縁の壮烈な戦闘とは裏腹に、魔王城へのルートは静寂に包まれていた。逆にそれがことさらに不気味に感じる。

 カリナは問う。


「探知魔法、反応は?」

「ありません」

「こちらも無反応」

「逆に無反応すぎて変です」

 

 無反応という報告の意味にカリナは気づいた。

 

「無反応――ノイズすら無いのか――」


 敵が居なくとも風による草の擦れる音や、獣の気配、何かしらの音や振動はあり得るのだ。無反応という現実の恐ろしさをカリナは背筋に感じる。

 アルカナヴァンガード全員に不安が広まる。いっそ、全力で駆け出すべきだろうか? そんな事を不安に覚えた時だ。


――ヒュッ――


 ほんのかすかに風が揺らぐ音が消えこたその時だった。


「姐御! 危ねぇっ!」


 聞こえたのは、聞き慣れた狼獣人の男性の声――

 物陰からカリナを狙った短弓の暗殺の矢が射たれるが、それに気づいて瞬時に飛び出す〝影〟が、スクラマサクス刀を抜いて矢を弾き飛ばした。

 

――キィイインッ!――


 矢は金属製で折れなかったが、はるか彼方へと飛んでいく。突如駆けつけたその狼獣人の騎士の名をカリナは知っている。

 

「ゲオルグ?!」

「おうよ!」

 

 牙狼騎士団団長ゲオルグ・ハーグマン――彼はカリナに背を向けたまま構えを取りつつ周囲に視線と耳を向ける。背中越しにカリナへと告げる。

 

「遅くなってすまねぇ! 牙狼騎士団、生き残り約七〇〇騎! 遅ればせながら駆けつけたぜ!」


 さらには―― 

 

――ザザザザザザザッ――


 怒涛の勢いで隊列のはるか後方から駆けつけてきたのは、狼獣人の集団――、牙狼騎士団の団員たちだった。直ちに周囲の岩場に向けて散開すると綿密な警戒体制を取った。ゲオルグはカリナの声を待たずして配下の狼獣人騎士たちに向けて叫んだ。


「牙狼騎士団! 散開陣形! 周囲に潜む伏兵を暴き出せ!」

「おうっ!」


 命じられるがままに狼獣人たちは武器としてカットラス刀を抜き、その耳と鼻を駆使した。〝見えない敵〟に対して彼等の特性は有効な武器であった。 

 勇者カリナを狙い撃ちにする暗殺者の影にゲオルグは怒り猛った。


「隠身魔法を使ったうえで隠し通路から奇襲をかけやがったな?! そうはさせるか! 総員攻撃開始!」

「おおおおっ!」


 戦場での戦いで生き残ってそのままこの決戦の地に駆けつけたのだろう。狼獣人たちの姿を見れば戦いの血に汚れ、怪我や汚れにまみれていた。


お読みいただきありがとうございます。

カリナたちの戦いを見守っていただけましたら嬉しいです。

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