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Ⅹ:蛇神と狂戦士

 だが――

 

「はい、私がお二人を地上にお招きいたしました」


 カリナは迷うこと無く凛として答えた。そこにナハルが問うてきた。

 

『現世勇者よ。我らに何を求める?』


 ケルヴェロスも告げる。


『我らは共に自らの眷属のために戦った者、人間のためには戦わぬぞ?』


 カリナの毅然とした態度に二人の敵意は和らいだが、まだ助力を願えるような状況ではない。だが、それでもカリナは畏れること無く毅然として立ち向かった。

 

「私が戦っていただきたいのは私たちのためではありません。私たち人間と共に歩む道を選んだリザードマンと狼獣人たちのために戦っていただきたいのです」


 その言葉にナハルもケルヴェロスも目を細めた。そして、少しの沈黙の後に再び尋ねてくる。


『ならば聞こう、お主にとってリザードマンとは何だ?』


 ナハルに続いてケルヴェロスも問いかけてくる。


『軍属であるお前が、異なる種族と共に戦う。その武力で服従させたのではないか?』


 彼らの理解の中には異なる種族というのは制圧と服従によって連帯がなされる――、そういう認識があるのだろう。だがカリナはいい放つ。


「いいえ違います。彼らは私の仲間です」


 力強く放つその言葉にナハルもケルヴェロスも一応に目を見開いた。


「〝全てに自由を〟――魔王の武力のもたらす災禍の下に、苦しむ者たちが、自由を奪われた者たちが、理不尽に疑問を持った者たちが、ともに手を取り合い、自由を求めて〝仲間〟となったのです。少なくとも私は彼らを服属させたり、配下として組み入れるというつもりはありません」


 カリナのその言葉は彼女の決意そのものだ。それを耳にしたナハルが大声で笑った。


『何を言い出すかと思えば〝自由〟ときたか』

『だがその言葉に迷いがないのはわかる』


 ケルヴェロスは片膝をついて目線を下ろす。


『それに我らを召喚するのに貴様の生命を少しずつ削っているのであろう』


 ナハルも改めて武器を握りしめた。


『ならば時間はない。我らが助けるべき同胞たちの所へ向かおう』

「では!」

『お前のような、性根の甘い勇者は初めて見た』とナハル、

『だが、人も獣も夢を語り合えるからこそともに歩めるのだ』


 2人は立ち上がりカリナたちに背を向けて歩き出す。


『同胞たちの位置はすでにわかる。我らの見識で大体はつかめた』

『お主らは、お主たちの戦いに向かえ! ともに勝利を掴んだ時、また会おう!』


 英霊たちは実態を持たない魂だけの存在。空を舞うことも、飛びゆくことも、造作もないことだ。ナハルとケルヴェロスは瞬く間に空を行った。向かうところはケラブノスとゲオルグたちのところだ。

 2人が飛び去るのを見送った後、カリナは両手で握りしめたレギオンブレイドの切っ先を下ろした。


「よかった! 理解してもらえた!」


 そして思わず、両膝を地面に突く。エルリックたちが慌てて駆け寄った。


「大丈夫かカリナ!」

「どんな英霊を出すかと思ったら、あんな巨大な神級の魂を呼び出すなんて!」


 ソフィアもカリナの無茶をたしなめた。ミリアは大声で救命魔導士を呼ぶ。


「急いで! カリナ様にヒーリングを」

「はい!」


 すぐにヒーリングをかけられて顔色がかなり戻る。静かに立ち上がりカリナは言った。


「大丈夫です! すぐに回復します。それにケラブノスたちと同じ種族であれば、英霊とも連携しやすいでしょう」

「そこまで考えていたのね。分かったわ。この件に関してもう何も異論は言わない」

「ありがとうございます」


 そしてカリナは立ち上がり毅然とした姿で言った。


「我々は我々の目的地を目指して進みましょう! 魔王城の前哨地まであと一息です! 一刻も早くたどり着き魔王城攻略作戦に入ります!」


 カリナの声にアルカナヴァンガードの全ての者たちが姿勢を正して再び隊列を組んだ。

 エルリックが号令をかける。


「出発!」


 カリナがゲオルグとケラブノスを守るために2柱の英霊を送ったその後、さらに2日の工程をかけて魔王軍支配領域を苦難の末に踏破する。

 伏兵は数多く、危険な地形は、仲間たちを少しずつ少しずつ削り取っていく。それでもカリナとアルカナヴァンガードの者たちは歯を食いしばりながら、前へ前へと進んで行った。


魔王城への道には、なお強大な敵が立ちはだかります。

カリナたちがこの戦いをどう越えていくのか、引き続き見守っていただけましたら嬉しいです。

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