Ⅸ:団員の声と英霊召喚
そして団員たちは口々に声を上げた。
「戦士長! 団長の覚悟を認めてあげてください」
「この人は、今まで誰も見捨てたことはありません!」
「だからこそ、自分たちはここまでついてきたんです!」
その言葉にエルリックは思わず声を漏らした。
「お前たち、そこまで――」
アルカナヴァンガードが発足してから6年間、彼らはカリナから片時も離れること無く共に闘ってきた。それは理想や正義のためだけでない。カリナという人物への信頼あってのものなのだ。
さらには兵科部門を束ねる兵科長たちからも上申が成された。
「歩兵兵科部門として、ケラブノス卿やゲオルグ卿には何度も助けて頂きました。ここで見捨てたら恩義が立ちません! 我々からもご支援をお願いいたします」
「魔導士部門として、カリナ団長の決断を支持します。魔王城本戦まで団長に負担がかからないように、我々がご支援いたします!」
「斥候兵兵科長です。技能士部門を代表してカリナ団長のご意思を尊重いたします」
そして、全員を代表するように、魔導士部門の中の魔導剣士の長である中年男性のアーヴァインが告げた。
「エルリック殿、カリナ団長に負担がかからないように、我々が全力で支える。今回だけは彼女のやりたいようにさせてやってくれ」
それがカリナの着いてきた者たちの全員の総意だった。これにはエルリックも頷くしか無かった。
「解った。皆の意見を尊重しよう」
カリナも笑みを浮かべて感謝を口にする。
「皆さん、ありがとうございます!」
「礼はいい、それよりケラブノスたちを助けてやってくれ」
「はい!」
カリナは勢いよく駆け出すと、開けた場所に立ち聖剣を抜刀して頭上へとかかげる。それを見てソフィアがつぶやく。
「あの子にはずっと甘さと無茶が同居していると思っていたけど、それはあの子の弱さじゃ無かったのね」
エルリックも彼女の言葉に同意する。
「あぁ、軍人らしからぬ、戦士らしからぬ、弱さと甘さ――、そして無謀――、それを含めて規格外なところこそがカリナの強みなんだ」
たしかにカリナは甘い。そして、心が弱い。だからこそ誰も見捨てず、真摯に戦いに向き合うのだ。
そんな確信を抱きながら二人もカリナの英霊召喚の姿をじっと見つめていた。
「エリュシオ! 英霊召喚するわよ!」
抜刀した金色の聖剣を頭上に掲げながらカリナは叫んだ。剣の十字唾の中心に嵌められている青く輝くクリスタルから神秘的な声が響いていた。
『お話はお聞きしておりました。リザードマン兵団のケラブノス様と、牙狼騎士団のゲオルグ様をご支援する英霊ですね?』
「えぇ! 数は出せないから、最強格を2柱選んで!」
『承知いたしました。すでに選択しております』
「それではやるわよ! 英霊召喚! 来たれ! リザードマンの戦士と、狼獣人の戦士を救う、太古の闘神よ!」
『英霊――蛇神ナハル・ニヴ、英霊――魔導戦士ケルヴェロス・スタール、召喚いたします」
天高く頭上に掲げた聖剣レギオンブレイド――その剣先から天空へと光の柱が伸びていく。そして、その光はさらに大きくなり光の扉を形成する。
そして――
――ガコンッ――
かすかに音を立てて、光の扉はひらいた。
――ザッ――
――ガッ――
大地を踏みしめる音が2つ響く。太古において活躍した、リザードマンと狼獣人の歴史的英雄にして、種族の中興の祖となる二人だった。
『妾は、ナハル・ニヴ――、鱗の眷属の母なる存在である』
『ケルヴェロス・スタール――、牙を持つ獣の民の始まりの者だ。俺を何故に呼び出した』
ナハル・ニヴはリザードマン種族が地上で勢力を増やす際に、戦いを率いて勝利を収めたと言う伝説の女性戦士だ。リザードマンとしてスリムな体つきながら、両手にはシャムシール剣を持ち、体にはわずかばかりの革鎧で身を守っている。
ケルヴェロス・スタールは狼獣人の歴史に名を残す狂戦士だ。魔族・人間問わず、狼獣人の生存のために生涯を戦い抜いた猛将――、狼獣人然とした風貌に、足にはグラディエーターサンダル、体には熊の毛皮を巻き、手にしているのは血まみれのスクラマサクス剣だ。
『正当な理由無く呼び出すのであれば、相応の報いが有ると知れ』
『俺達を地上に招いたのは貴様か?!』
リザードマンの祖と、狼獣人の祖――その太古の魂は荒ぶる魂であり、自らの眷属にのみ心を開く存在だった。明らかに敵意が見え隠れしている。場に居合わせた者たち全員が固唾を飲んで見守っている。やり取りを間違えれば、戦いになるのは明らかだからだ。
今回は、カリナの力の核でもある英霊召喚に関わる回でした。
仲間たちの声と、カリナの決断がどこへつながるのか、引き続き見届けていただけましたら嬉しいです。
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