148 王宮での暮らし5
「そうだな……」
カリスト自身はまだまだ、葛藤があるようだ。
初めから王妃を受け入れるつもりがないなら、このような悩みは抱えていないはず。心の奥底には、本当は認められたい気持ちがあったのではないだろうか。
それなのに、王妃はあいまいな態度で自分がしてきたことをなかったかのように振舞っている。
だからこそカリストは、気持ちのやり場に困っているように見える。
お互いの気持ちを知る機会があれば良いけれど……。
その週の週末。
モニカは気晴らしもかねて、皆を昼食会に招待した。
元々はミランダにバケットサンドの作り方を教える予定だったが、どうせなら試食会も兼ねようということになったのだ。
「ここが神聖宮か? ずいぶんと古……っ!」
建物を見上げたルカは、率直な感想を述べようとしたところ、脇腹にミランダの肘鉄を食らって小さくうめき声をあげた。
「ルカ様。こちらは趣を感じられる素敵な建物ですわね」
「そうだな……。趣だな……」
初めのころは、ルカへの注意の仕方にかなり気を使っているように見えたミランダだが、ここまで雑な態度は初めて見る。モニカは少し驚いた。
ルカは騎士団の中で育ったので少々荒っぽい部分がある。実は女性もこういう感じのほうが付き合いやすかったのだろうか。
「ルカにダメージを与えられるとは。ミランダは、袖に鉄針でも仕込んでいるのか?」
ビアンカは、騎士を志す者として戦術が気になったようだ。 その疑問に、ロベルトは考察するように答える。
「痛くなくとも大げさに反応するのも、愛情表現の一つかと」
「なるほど。ではロベルトも私と対戦した時に大げさに負けるのは、愛情表現だったのか?」
「いいえ。あれは僕の全力ですので、ビアンカは愛情をもって手加減してください」
「悪いが、勝負で手加減は相手に失礼だからできない」
ビアンカらしい答えが返ってきたのでくすくす笑っていると、リアナがモニカの腕に抱きつきながら不思議そうな顔をする。
「ビアンカとロベルトが勝負したりするんだ~?」
「事務仕事を勝ち取れなかったので、武力で貢献できる守護者になろうと思いまして」
どうやらロベルトは、守護者の中で自分の立ち位置を明確にしようと努力していたようだ。本格的な活動はまだしていないが、意欲的に準備してくれていることがうれしい。
「ありがとうございますロベルト様」
「これくらい当然です」
モニカが感謝を伝えていると、ルカがにやりと笑みを浮かべながら、ロベルトの方に腕を回してくる。
「なんだよロベルト。そんなにやりたいなら、いくらでも事務仕事を分けてやるよ」
「事務仕事は初めの守護者の責務ですので。ルールは守ってください」
冷静に拒否されたルカは、頭を抱えながら叫ぶ。
「ああー俺も戦うほうやりてーーー!」
ルカも事務仕事ばかりでは息が詰まるだろうし、落ち着いたら魔獣討伐にでも赴こうか。
「兄上。本日はご招待ありがとうございます」
そんな皆の話も聞こえていない様子のブラウリオは、真っ先にカリストのもとへと向かい、手土産を渡している。
皆それぞれマイペースで、私たちらしい。
女神だと公表してからは環境の変化が大きくて一息つく暇もなかったが、今日は久しぶりに羽を伸ばせそうだ。
モニカはにこりと皆に笑みを浮かべる。
「皆様どうぞ、お入りくださいませ」
おかげさまで『悪女役らしく離婚を迫ろうとしたのに、夫の反応がおかしい』が無事に刊行しました!
お迎えしてくださった皆様、本当にありがとうございます!





