148 王宮での暮らし4
そのあとは和やかに謁見が進み、国王夫妻はモニカが神聖宮で暮らすことには歓迎する意思を見せた。
とりわけ王妃が嬉しそうしていたのが印象的で、この様子だとうまくいきそうだとモニカは感じていた。
ただ一つ、気がかりなことは、王妃が笑みを浮かべるほどカリストの表情が冷たいように見えていたことだ。
「お疲れ様でした。私は女神らしく振舞えていましたか?」
謁見が終わり、国王夫妻を玄関まで見送ったあと、モニカはカリストを連れて庭を散歩することにした。
そろそろ季節は冬に差し掛かるので外は寒いが、緊張していたせいか冷え具合がちょうどよい。
「上出来だった。あいつらも従順な態度だったのが面白かったな」
カリストは口ぶりのわりに、表情が暗い。
モニカは今まで、カリストの生い立ちについては、父親との問題だと思っていたし、カリストの口からも父親の話しか聞いたことがなかった。
けれど、今日の謁見で気が付いた。
カリストにとっては母親は、話題にすらしたくないほどの相手だったのではないかと。
だからこそソフィアも、あのような態度だったのではないか。
「カリスト。私のために、今日のような無理はしなくてもいいんですよ」
「無理などしていないさ。あのじじいが俺たちを尊重している姿は、見ていて気分がいい」
「お父様のことではなく、お母様のことです」
「…………」
じっと見つめると、カリストは困ったような表情を浮かべてから、諦めたように笑みを浮かべる。
「モニカは察しが良すぎないか」
「そんなことないです。私がもっと早くに気がついていたら、ご両親にご挨拶したいなんて言いませんでした……」
「モニカは俺の婚約者としての礼儀を守ろうとしてくれたんだろう? それがうれしかった。だから俺も同行した。それだけだ」
カリストは自身の上着を脱いで、モニカに羽織らせた。じんわりと彼の暖かさに包まれたモニカは、いつも自分を犠牲にしているカリストが心配で抱きついた。
「つらい過去を洗いざらい話してとは言いません。ただ、ごまかさずに教えてください。これからご両親とはどう接していくのか。私も協力しますから」
カリストに代わって、彼の両親と良好な関係を築こうという考え自体が間違っていた。
両親と関わりたくないというなら、最大限に配慮する。モニカにはそれをできるだけの地位があるのだから。
「あいつ……父は呪いを畏怖しながらも、親として最低限の責任は果たしていた。必要に応じて関わってきたし、これからも父とは関わっていくつもりだ。――けれど王妃は、親とは思っていない。俺を完全に拒否して、育児のすべてをソフィアに押し付けていた。それにも関わらず、俺の呪いが解けた途端に、家族だと主張してきて腹が立った。今日もモニカに気に入られようとしている姿に苛立ちを覚えた。けれど、俺のために両親との交流を深めようとしているモニカに、こんな醜い感情を持っていると知られたくなくて、言えなかった……」
王妃のあの態度から、そんな過去があったとは想像もしていなかった。ソフィアはそれを知っていたから、モニカの質問には答えられなかったのだ。
自分で産んだこを完全に否定していたとは。呪いせいで拒否反応が出たのだろうが、それにしてもひどすぎる。
ゲーム的に考えると、モニカたちを牢屋に入れた国王のように、王妃もストーリーに都合よく過剰反応が起きていたとも考えられる。
それでも呪いが解けただけで態度が急変した王妃を、カリストが許せるはずがない。彼にとっては、産みの親という事実しかないのだから。
「醜くなんてないですよ。話してくれてうれしいです」
「モニカに気持ちを打ち明けるたびに、俺はダメな人間になっていく気がする……」
「そんなこと言わないでください! カリストの感情は人間として当たり前のことです。誰しも態度には出さなくても、受け入れられない人間の一人や二人はいます。それが自分に敵意を向けていた人間ならなおさらですよ」
「そうだろうか。俺は、態度を改めた王妃を受け入れられないことにも、嫌気がさしている……」
「それは王妃殿下から直接、謝罪の言葉を聞いていないからです。謝罪されたからといって許せるとは限りませんが、態度を改めたから許されると期待されるのも、負担でしかないですよ。だからカリストは、そのままで良いのです」
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