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太陽の下に隠れた傍観者  作者: 紗倉 悠里
≪第二章≫崩壊解放。
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つまらない日常

《第二章》


【第十三話】<ただの日常> -白野 夜人-


 あー、つまらねー。

 俺は、ふぁぁ、と大きな欠伸をする。


 本当、この頃つまらない。


 俺の親友の真人だって違うクラスになっちまうし、担任の先生のひょろっとした男の先生だし。なんで、胸の大きい女の先生じゃないんだろ。

 こんな怠い毎日で、面白いことがあればいいのに、と思ってしまうのは、俺だけじゃあないだろう。

 そういえば、特別面白いってわけじゃないが、入学式の日に、可愛らしい女の子と会った。

 小柄ながらも、青いツインテールと青い澄んだ目はとても魅力的だった。まぁ、俺の好みは巨乳のお姉さんだから、彼女が好きってわけじゃないけどね。

 そんな彼女とも、入学式の日からの顔見知りとしてかなり仲良くなっている。名前は、高川 葵と言うらしい。俺の好みの『巨乳のお姉さん』である高川玲子先生の娘さんらしい。そりゃ、あれだけ可愛い容姿を授かれるはずだ。

 

 もう入学式の日から三ヶ月は経っていて、俺も真人も大分この高校での生活に慣れてきていた。

 だから、俺は、高校にいる女子のことは全部調べたし、好きだなーと思う子も何人かいる。一番は、やっぱり高川先生だけどね。

 世間から見れば、俺は軽い男なのかもしれないけど、俺は俺なりに青春恋愛を楽しんでいるつもりだ。ちなみに、これに関する異論は受け付けてない。

 

 それで、今日も、好みの女の子を探しながら真人と戯けるというアンニュイな日々が始まるわけだ。

 もっとも、もうこの高校の俺好みの女子は全員調べて話もしてみたから、新しい好みの女の子が見つかることなんて、殆どないけどね。ま、これはただの暇つぶしだから。本当の恋愛は、もっと相手の女子を養える男になってからやるつもり。そこらへんは、誰にどう言われようと変えられない。父さんや母さんに、何度も言われてきたからね。

 

 そうこうしているうちに、俺は朝ご飯も食べ終わり、ぱぱっと着替えて、高校に向かうことになってしまう。家から高校までの間にも、俺は目をキョロキョロさせて好みの女の子を探す。これはもう癖になっていて、直そうとしても直らない。真人によく「お前、気持ちわりーよ?」って言われるけど、直せない。

 と、前方に俺の親友を発見。なんと、機嫌良さげに鼻歌なんで歌っている。

 だけど、真人は高校へは向かっていない。制服もきちって着こなしているけど、高校へ向かってはいない。多分、真人が向かっているのは、隣町のゲームセンターだろう。あそこは安いし、色々いいらしいが、俺は言ったことがない(なんたって、健全な男子だからね、そんなことより女の子だよ)。

 よし、今日も真人狩りを始めるとするか。


 俺の親友の真人は、俺に会わない限り、すぐに学校をサボろうとする。だから、俺は、彼が家を出る頃に俺も家を出て、真人を捕獲して学校まで連れていっている。

 捕獲した後の真人は、いつも「これから、行こうとしてたんだよ、高校」という素振りをしていて、とても面白い。それをからかうのも、俺の日課。

 しかし、今日のように鼻歌を歌っている時は珍しい。彼女でも出来たのかな。もし出来たのなら、その彼女の友達をぜひ俺に紹介してもらいたい。


 なんだか、今日はちょっと面白くなりそうな気がした。


 気配を消して、鼻歌を歌いながら歩いている真人の後ろにそっと近づく。

 そして、真人の肩をぽんと叩いた。


「よっ、真人。一緒に学校いこーぜっ!」


 ニコッと笑いながら言ってやると、真人は驚いたような顔で振り向く。

 そして、俺の顔を確認すると、安心したように微笑んで、いつも通りに「おう。今から行こうとしてたんだよ」と返してきた。やっぱり、予想通りの切り返しだ。

 だが、今日の真人は、いつもとは違っていた。その右手には……なんと、スマートフォンが握られていたのだ。


 この俺でさえも、母さんに泣きついて頼んでやっと買えたあれは、一部の人しか手に入れることが出来ない神器なのだ。

 それを、真人は右手に持っていた。

 うおぉぉぉっ、と自分のことのように嬉しくなる。これでやっと、こいつとスマートフォンでやり取りができるようになるんだ、誰でも喜ぶだろう、こんな状況におかれたら。

 それにしても、真人は割とセンスがいい。持っているスマートフォンの色は、黒なのだ。俺も、本当は黒が良かったんだけど、母さんの好みで白に決められてしまった。あーあ、いーなー真人ーっ! 

 そんな感情を堪えながら、

「あれ、これなに?」

 と、ちょっとからかうような口ぶりで聞いてみる。

 そして、真人の隙をついて、スマートフォンを奪い取る。意外と得意技だったりするんだ、真人から物を取り上げるのは。

 だって、赤ん坊の頃からの付き合いだからね。




 真人のことなら、大体知っているつもりだ(あ、別に、ヤンデレ的な意味じゃないからな)。


 ま、それはいいとして。真人のスマートフォンを、俺はじっくりと観察することにした。と言っても、取り返そうとする真人の手があちこちから伸びてくるから、ゆっくり見ることは出来ない。

 黒い外装には、何故か赤い文字で「MAKOTO」と刻まれていた。うわぁ、なんでこんな装飾してるの!? もしかして、真人ってナルシスト? なんてバカな考えをどうにか頭から投げ捨てた。多分、かなり親バカなあの咲子さんがやったことなのだろう。


 あ、咲子さんで思い出したが、俺と真人は、お互いの両親を名前で呼んでいる。だから、俺の母さんは、真人に「梅子さん」と呼ばれているわけだ。これには、特に理由はない。ただの母さんの遊び心からできた決まりだから。


 それにしても、このスマートフォンは不思議だ。どこの企業で造られたのかが分からない。ロゴがない。どこにも。

 真人に背を向けて、カチッと電源をつけてみる。もしかしたら、電源を付けたら分かるかもしれない、と。

 しかし、真人にしては珍しく用意周到なことをやってくれちゃっていた。“ロックが掛かっている”。

 こりゃ、お手上げだ。流石に、ロックを開けようとデタラメな言葉を入れ続けるほどに俺は馬鹿じゃない、ガキでもない。もし俺が何回も失敗して、このスマートフォンが何分も使えなくなっては困ってしまう。それに、真人に怒られたくないし。真人は、怒ると結構怖いからな。

 俺は、そっと電源を消すと、真人にスマートフォンを渡した。

 真人は、それをぱっと受け取ると、今度は警戒して胸ポケットに入れてしまった。ありゃりゃ、警戒されちまった。もう触らないんだけどなー。

 言い訳をしても多分聞いてもらえないだろうから、黙っておいた。

 そして、あることを思い出した。

 スマートフォンといえばやっぱり……ゲームしょっ!!!! 

 ということで、早速このスマートフォンに今俺がオススメしているアプリをインストールしてやることにした。

 元からゲーム好きな真人だ。ゲームの話をふっかければ、すぐにスマートフォンを渡してくれた。さっきまで警戒してた癖に……と、苦笑いしてしまう。

 すぐにアプリを検索して、インストールのボタンを押した。と、なぜか注意書きのような赤い文字が画面に表れる。


『こちらのアプリケーションは一度消されています。再度インストールしますか?』


 どうやら、俺のオススメしているアプリ「Die Application」は、このスマートフォンに一度インストールされ、そして、削除されていたらしい。

 これはどういうことなのだろうか。

 俺は、咄嗟に『いいえ』のボタンを押した。

 もしかしたら、真人がやってみたけど面白くなかったから消したのかもしれない。

 そうだったら申し訳ないとは思いつつも、真人にこのゲームの事を聞いてみた。

 しかし、真人は首を傾げて「このゲームは知らない」と言った。なぜ知らないのだろう、確かに消されているのに。

 そう思いつつも、俺はもう一度インストールのボタンを押した。

 ありゃ?

 だが、今度は、さっきのような表示は表れなかった。その後も、何度かインストールを中止しては、インストールのボタンを押す、という機[はた]からみれば馬鹿らしい行為を繰り返してはみたものの、やっぱりあの表示は一番最初に出てきたっきりだった。

 もしかしたら、何かのバグだろうか。確か、昨日もらったばかりと真人は言ったはずなんだけど。

 

 ちょっとした奇妙さを感じながらも、俺はこのゲームを真人に勧めておいた。

 知らないのなら、是非知ってプレイした方がいい。このゲームはとても面白いから。

 そんな感じで、俺がこのゲームの良さを説明しているうちに、高校についてしまった。

 まだまだ話し足りなかった為に、放課後に真人と会う約束をした。そして、教室に向かった。

 

 ――この時の俺は幸せだった。だって、このスマートフォンのことを知らなかったのだから。ただのスマートフォンだと思っていたのだから。

 なんで、俺はこの後であんなことをしてしまったのだろう。馬鹿だ、俺は大馬鹿だ――


 そして、この瞬間に、俺の退屈な日常は終わりを告げた。


【第十三話 END】

 



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