第28話 第二試練:新星演武(ルーキー・トーナメント)
目が覚めると、ベッドの上にいた。
どうやら、第一試練の後に救護室に運ばれたらしい。窓の外からかすかに観客のざわめきが聞こえていた。
「カイ! 目、覚めましたか!?」
横からミリアの声がした。ベッドの脇の椅子に座って、こちらを覗き込んでいる。目が赤い。泣いていたのかもしれない。
「ミリア……僕、どのくらい寝てた?」
「1時間くらいです。第一試練が終わって、今は休憩時間で——」
「おう、起きたか」
扉が開いて、白衣を着た男が入ってきた。顎髭を生やした中年の男で、目つきは鋭いが雰囲気はどこか気楽だった。首からギルドの魔導士の証がぶら下がっている。
「体は完璧に直しといたから。骨にヒビ入ってたのと、内臓の打撲が結構ひどかったけど、まあこの程度ならどうってことねえよ」
「ありがとうございます!」
「ここは超一流の回復魔法の使い手がごろごろいるからな。腕が千切れて焼却したとかじゃなきゃ、大抵のもんは治る。まあ頑張りな、少年」
それだけ言って、術師は手をひらひら振りながら部屋を出ていった。あっさりしている。だが、体を動かしてみると本当に痛みがなかった。完璧に、というのは嘘じゃないらしい。
ベッドの上で上半身を起こした。ミリアがまだ心配そうにこちらを見ている。
「大丈夫だよ、ミリア。もう全然痛くない」
「……よかった」
ミリアが小さく息を吐いた。それから、少し言いづらそうに口を開いた。
「あの……怪我のことなんですけど」
「うん?」
「ギルドの人に聞かれた時、私……ボスの霧鎧熊と戦った時に負った怪我です、って言ってしまいました」
ミリアが俯いた。
「レクトさんたちのことは……怖くて、言えなくて。ごめんなさい」
僕は少し考えて、それから首を振った。
「全然大丈夫だよ。それにミリアに怪我がなくてよかった」
「でも——」
「言ったところで揉めるだけだよ。それに、僕もミリアも第一試練はクリアしてる。それでいいよ」
ミリアがこちらを見た。まだ申し訳なさそうな顔をしていたが、小さく頷いた。
「……ありがとうございます」
「それより、この後の試練って何か発表あった?」
「あ、はい。カイが寝ている間に、第二試練の内容が発表されました」
ミリアがポケットから一枚の紙を取り出した。トーナメント表と、ルールが記載されている。
「第二試練は新星演武。個人トーナメントです。第一試練をクリアした出場者が一対一で戦って、優勝者を決めます」
紙に目を通した。ルールは三つ。
第一条——試合は一対一の個人戦とし、武器・魔法の使用に制限はない。
第二条——降参、意識喪失、または審判の判断による戦闘続行不能で決着とする。致命傷を与える行為は禁止。なお、一定以上のダメージが与えられた場合、腕輪に刻まれた魔法陣によりアリーナの場外へ強制転送される。転送された場合は無条件で敗北とする。
第三条——試合時間は一試合につき最大十五分。時間切れの場合は審判の判定により勝敗を決する。
「致命傷だったとしても死なない、ってことですね……」
「王都の技術はすごいな……」
ルールを聞いて、腕輪をそっと大事に撫でた。
「トーナメント表は——」
ミリアが紙の下半分を指した。対戦カードが並んでいる。目が、一つの名前で止まった。
第二試合——カイ(Eランク) vs オリアナ(Dランク)
「僕が第二試合か」
「はい。オリアナ選手はDランクの魔法使いで、火属性が得意だそうです」
火属性の魔法使い——。
ついに、あの修行で身につけた技を試す時が来た!
僕はベッドから降りて、壁に立てかけてあった剣を手に取った。黒い刀身が、救護室の白い光を吸い込むように鈍く光っている。
「行こう、ミリア!」
「はい!」
扉を開けると、アリーナの喧騒が一気に近づいた。観客の歓声、実況の声、出場者たちの足音。
第二試練が、始まる。




