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第18話 招待

深い蒼色の鱗に覆われた四メートルはあるであろうシーサーペントの巨体が、真っ二つに裂けた。

断面から青い光が溢れ、体が崩れ落ちていく。後に残ったのは、拳ほどの大きさをした青い魔石だけだった。


「やった!!」


思わず声が出た。剣を納めながら、荒い息を整える。


ひかりん:倒したね!これで20層突破だ!!


「ありがとうございます!やっと、ここまで来ました」


あの狼との戦いから、一週間が経っていた。

医務室で目を覚ました翌日から、僕は再びダンジョンに潜り始めた。11層から一つずつ、一層ずつ確実に敵を倒しながら階層を上げていった。


あのとき20層に落ちたときとは違う。今度は自分の足で、一歩ずつここまで来た。

この一週間で、一つ大きく変わったことがある。

あの狼との戦いで体の中から溢れ出た、白い光。あれが何だったのか、ヒカリンさんに聞いた。


魔力、というものらしい。


ひかりんさんの説明によると、魔力は生きている人間なら誰でも体の中に持っている力だという。ただ、その形は人によって違う。生まれたときから決まっていて、一人として同じ形はないらしい。


形というのは、魔力そのものが持つ手触りのようなものだ。滑らかで流れるような形をしている者もいれば、硬く角張った形をしている者もいる。その形が、魔力の性質を決める。


例えば、熱を帯びて揺らぐような形の魔力を持つ者が力を放てば、それは炎になる。冷たく尖った形なら氷に。魔力の形が、そのままその人の戦い方を決める。


体に巡らせれば身体能力が上がる。武器に流し込めば切れ味が増す。ここまでは魔力の形に関係なく、誰でもできることだという


その形に応じて、魔力でできることが変わってくる。体に巡らせれば身体能力が上がる。武器に流し込めば切れ味が増す。ここまでは魔力の形に関係なく、誰でもできることだという。


「じゃあ、僕の魔力はどんな形なんですか?」


ひかりん:うーん、正直わかんない。カイの魔力、すごく透き通ってて、私も見たことない感じなんだよね


「透き通ってる……」


ひかりん:うん。だから今はまだ、どうなっていくかわかんないかも。でも焦んなくていいよ。まずは身体強化から慣らしていこ


「なるほど。わかりました!」


というわけで、今の僕は魔力を体に巡らせて身体能力を底上げする、という使い方だけを練習している。ひかりんさんの助言を受けながら、少しずつ自分の力として馴染ませているところだ。


ただ、現状あの時のようには使えなかった。

あの狼と戦ったとき、全身を包んだ白い光。剣を振るうたびに雷を押し返した、あの力。今の僕が出せているのは、あのときの五分の一にも届いていないと思う。まだ、自分の中にある力の大半を引き出せていない。


今はただ、使えるものを少しずつ馴染ませていくしかない。


ひかりん:焦ることないよ。ちゃんと伸びてる

ひかりんさんの言葉に、素直に頷いた。


それと、もう一つ。僕は今、あの戦いで手に入れた漆黒の剣を握っている。誰かが投げ込んでくれた、あの黒い剣。


ひかりんさんに相談した。この剣を使っていいのかどうかを。

ひかりん:えっ!? 全然使っていいと思うよ!

ひかりん:というかもうカイに馴染んでるっていうか

ひかりん:めちゃくちゃ合ってる!


なんだかすごい勢いで押された。そこまで言うなら、と思い、今もこの剣を借りて戦っている。


ひかりん:そういえばその剣に名前つけた?


「名前ですか?」


ひかりん:そう! 名前つけた方が自分のもの感出るし、もっと強くなったら自分の象徴になったりするから


ちょっと、強くなった自分を想像してしまった。テンションが上がる。


「じゃあ、ひかりんさんが名前つけてください!」


ひかりん:えっ 私が!?


「はい!」


ひかりん:ちょ、ちょっと待ってて!?


しばらく時間が空いた。


ひかりん:えっとね……


少し間があった。


ひかりん:「暁闇の黒剣(デュランダル)」ってのはどう?


暁闇の黒剣(デュランダル)……」


ひかりん:暁って、夜が明ける直前の、一番暗い空に最初の光が差す瞬間のことなんだけど

ひかりん:カイがあの真っ暗なダンジョンの中で一人で戦ってる姿が、なんかそれに重なったの

ひかりん:それに、勇者の祖「暁の勇者アルス」も最初はたった一人でダンジョンに挑んだって言われてるでしょ? 誰もいない暗闇の中から始めて、それでも剣を振り続けた。今のカイと同じだなって

ひかりん:だから、暁闇の黒剣(デュランダル)。暗闇の中から夜明けを切り拓く剣。……どうかな


「……すごくいいと思います!」


暁闇の黒剣、デュランダル。

口に出してみると、なんだか剣が手に馴染んだ気がした。


それに、もう一つ気になっていることがある。あの最後の瞬間、この剣を握ったとき、白かった光が黒と赤に変わった。あの力が何だったのか、今でも分からない。同じことを再現しようとしても、魔力は白いままで、あの深紅の光にはならなかった。


魔石を拾い上げて、荷物袋にしまう。20層のボスを倒した。ここまで来られた。


「じゃあ、今日はこれで帰ります!」


ひかりん:おつかれさま! ゆっくり休んでね


そして僕は、転送石で地上に戻った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

翌日。冒険者ギルドの受付に、20層のシーサーペントの魔石を差し出した。


「これ、20層のボスの魔石です。昨日倒しました!」


受付のクレアさんが魔石を手に取って、少し驚いた顔をした。


「受理しました。鑑定が終わって確認が取れ次第、報酬をお渡ししますね」


「はい!」


クレアさんは魔石をカウンターの下にしまった。


「そうだ、カイくん、ちょっと時間ある?」


「はい?」


「話があるの。少しだけ待ってて」


クレアさんが奥に消えて、しばらくして戻ってきた。ついてきて、と言われて案内されたのは、ギルドの奥にある小さな控室だった。


扉を閉めて、クレアさんが向かいの椅子に座る。少し改まった表情だった。


「単刀直入に言うわね」


一拍置いて、クレアさんが口を開いた。


「カイくん。あなたに、新星杯の出場権が与えられました」


「……新星杯?」


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