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不死身の元魔王ヴィルヘルミナ~吸血鬼は千年の戦場を見届ける~  作者: Takahiro
第二章 ウティウム攻囲戦

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攻城塔の突入

「生命への冒涜な気がするけど、まあいいか」


 シルヴァは魔力を集中させる。グレーテルの周囲に転がる死体の下から、ゆっくりと氷の棘が生えてきた。胴体を貫き、やがてその死体を高く持ち上げていく。氷による串刺しである。その異様な様子を敵兵は凝視していた。


 怯える兵士たちに向かって、串刺し地獄を背に、グレーテルは宣言する。


「あなた方と遊ぶのも飽きました。これ以上戦うというのなら、後ろで串刺しになっている方々のように、直ちに皆殺しにさせていただきます。しかし、今すぐ逃げるというのなら、見逃してもいいでしょう。さあ、どうしますか? まだ戦いますか?」


 グレーテルが槍先を向けると同時に、兵士たちの足元に小さな氷塊が作り出された。実際の殺傷能力はなく、ただの演出である。だが、それは最後の均衡を崩すには十分であった。


 まず一人の兵士が何も言わずに武器を捨てて逃げ出した。隣の兵士がそれに続き、そのまた周囲の兵士が逃げ出し、あっという間に彼らの士気は崩壊して、雪崩を打って逃げ出し始めた。


「逃げるな!! 踏みとどまれ!!」

「それは勇敢ではなく無謀というものです」

「ッ……!!」


 わずかに残った兵士は、グレーテルが迅速に皆殺しにした。


「ハッタリが上手くいってよかった」

「ええ。ありがとうございます、シルヴァ様。それと、向こうと同じように氷の壁を造っていただけますか?」

「もちろん」


 ウティウム伯軍の反撃を防ぐため、シルヴァは巨大な氷の棘で壁を造った。


「シルヴァ様、ヴィルヘルミナ様の方にも行きましょう! 壁が溶けそうです!」

「ああ、うん」


 シルヴァはヴィルヘルミナの援護には乗り気ではなかったが、ヴェロニカに散々世話になっている手前、断ることもできなかった。シルヴァはヴィルヘルミナの前にある氷の壁を新たな氷で覆って補強し、ウティウム伯の望みを絶った。


「――ありがとう、シルヴァ。お陰で楽ができるよ」

「お前なんか助けたくないのに」

「そんなこと言わないでくれよ」

「お前と仲良くすることはない」

「まったく……。私はここで敵を押さえておくから、フランク公を呼んでくれ」

「ああ」


 とにもかくにも、化け物たちの突撃部隊は城門周辺の安全確保に成功したのである。まもなくシルヴァが角笛を吹き、フランク公カールに作戦成功を伝えた。


 ○


「て、敵の攻城塔が動き出しました!」

「クッ……。大型兵器は使えない。こうなっては……」

「火矢で攻撃するのはいかがでしょうか? 上手く火がつけば、あるいは……」


 攻城塔は木製である。火を用いるのは常套手段だ。


「そうだな。せめて、できる限りのことはしよう。火矢で攻城塔を攻撃せよ!」


 攻城塔を正面から攻撃することはできないが、何とか斜めから矢を撃ち込むことは可能である。ウティウム伯の命を受け、兵士たちは迅速に火矢を用意した。


「放て! 攻城塔を焼き払うのだ!」


 火矢が放たれ、次々と攻城塔の側面に突き刺さる。魔導弩には使えないため普通の弓を使うことになるが、それでも数十の火矢が命中した。


「このまま、燃え広がるってくれれば……」

「効いています! 燃え広がって――」

「だ、ダメです! 火が消えています!」


 火矢が攻城塔に突き刺さると、塗ってある油によってわずかに燃え広がったが、すぐにかき消されてしまった。結果的にはまるで効果がない。


「何故だ。どうして、そんなことが……」

「どうやら、敵は水を掛けています。非常に単純な話です……」

「単純故に、効果も高いか。準備のいい連中め」


 乾坤一擲の策を完封され、ウティウム伯に打てる手は残されていなかった。攻城塔が近づいてくるのをただ眺めることしかできない。


 ○


「敵の抵抗がない城攻めとは、これほど楽な戦もそうそうあるまい。我が人生で二度とはないであろうな」


 フランク公カールは自ら攻城塔の最上層に乗り込み、城攻めの指揮を執っていた。


「城門にぶつかります! お気を付けください!」

「誰に向かって言っておる!」

「し、失礼しました……」


 攻城塔が城壁にぶつかった。塔全体が大きく揺られるが、若い兵士たちが手すりに身を預ける中、フランク公は何にも掴まらず平然と直立を維持していた。


「よーし! 橋を降ろせ! 突入せよ!!」

「はっ!」


 攻城塔から城壁上に跳ね橋が降ろされる。城壁に直接乗り込むのである。


「敵の射撃です!」

「跳ね橋に盾を並べ、壁を作るのだ! 落ち着いて進め!」


 敵が跳ね橋に向かって矢を放ってくるが、距離が離れており盾だけで十分に防げる。射撃だけで突入を阻止するのは不可能だ。


 攻城塔の内部は階段になっており、これで地上から城壁まで兵士が自由に行き来できるようになった。


「まったく、この時こそが一番の激戦になるというのに、実に楽なことよ」


 本来、攻城塔が到達して兵士が城壁に乗り込む時こそ、敵が最も激しく抵抗してくるところなのだが、敵は一人もいない。ここに至ってもフランク公軍の犠牲はほんの数名に過ぎなかった。


「シルヴァ様に感謝しなければなりませんな」

「他の化け物どもにもな」

「え、ええ、まあ」

「まずは陣地を固めよ! その後、壁上を制圧し、市街地に攻め込む!」

「はっ!」


 反撃を阻止するための陣地を築いた後に進軍。実に堅実な作戦である。


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