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不死身の元魔王ヴィルヘルミナ~吸血鬼は千年の戦場を見届ける~  作者: Takahiro
第二章 ウティウム攻囲戦

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ウティウム攻略開始

「如何するかな、シルヴァ殿?」

「仕方がありません。本当なら攻城塔を最低でも二つは用意したかったですが、一つだけにします。七日で、いえ六日で用意します」

「東方正帝が迫る中、六日も時間を消費する余裕があるものでしょうか?」


 グレーテルが問う。答えたのは皇弟リヒャルトであった。


「どの道、攻め落とすのに掛かるのは一日であろう。それに失敗すれば、数ヶ月は掛かることになる。六日の差はあってないようなものじゃ」


 要するに、作戦が成功して一日で攻め落とすか、さもなくば数ヶ月の攻城戦に発展するかの二択しかないのである。ならば六日の準備を挟んだところで大した問題ではない。


「あの……東方正帝の軍勢は近づいてきているのですよね? ウティウムを落とせたとしても、道を塞がれてしまうのではありませんか?」


 今度はヴェロニカが問う。


「東方正帝がそんな大っぴらに敵対することはないと思うけど、どうかな、リヒャルト?」

「儂もそう思う。あくまで援軍としてしか、東方帝の軍勢は戦わぬであろう」


 北方帝と東方帝が真正面から戦争状態に陥るのは、両者にとって危険が大きすぎる。東方帝としては、戦争の主体はあくまでウティウム伯にしたいだろう。そのウティウム伯が降伏すれば、戦う大義はなくなる。


「もっとも、ウティウムの先にも東方帝についている連中がいたら、どうしようもないけどね」

「左様な二段構えが待っているのであれば、どの道勝てはせぬ。今はウティウムの攻略に全力を賭すべきであろう。シルヴァ殿、よろしく頼む」

「承知しました。やってみせます」


 シルヴァは早速作業に取り掛かるべく、フランク公の本陣に舞い戻った。


 ○


「昼夜問わず造り続けよ! 最も早く造れた班には、たんまりと金子をくれてやろうぞ!」

「「おう!!」」


 フランク公カールは皇弟リヒャルトと大して歳の変わらない老人だが、まるで十代の若者のように活動的である。今日も自ら攻城塔の建造を指揮していた。


 時間がわずかしか残されていない現状、フランク公は工作兵を二つに分け、それぞれ昼と夜に作業をさせていた。一瞬も休むことなく攻城塔を造り続けるのである。


「この調子なら、四日で完成しそうですね」

「早いに越したことはあるまい! 皇帝家の度肝を抜いてやろうぞ! フハハハハッ!!」

「……人間は元気ですね」

「ポメレニア辺境伯を出し抜いてやるのだ。奴に活躍などさせん」

「なるほど。腹黒い」


 フランク公の指揮の下、攻城塔の組み立ては迅速に進められた。完成までに掛かったのは、シルヴァの予想を裏切り、たった四日であった。


 ○


「――一つだけだが攻城塔は完成した。これよりウティウムに攻めかかる。ここで失敗すれば、今度の遠征はランゴバルド王国に踏み入ることも叶わず失敗となるであろう。大失敗もいいところじゃ。頼んだぞ」


 皇弟リヒャルトは、ヴィルヘルミナ・ヴェロニカ・グレーテル・シルヴァと最後の打ち合わせを終えた。出撃である。


「それにしても、君は鎧とか着た方がいいんじゃないの?」


 ヴィルヘルミナは緊張感もなくグレーテルに尋ねた。グレーテルはいつものメイド服のままであった。


「鎧を着るより動きやすい方がいいのです」

「死にかけたら吸血鬼にしてあげることもできるよ」

「願い下げです」

「冷たいなぁ」


 誰も鎧を纏う気がない珍妙な集団だが、北方帝領が用意できる最高戦力に近いことは間違いない。真夜中の闇に紛れ、作戦は開始された。


 ○


「伯爵様! 敵の攻城塔が動き出しました!」

「まさか本当に攻めてくる気か? 連中は正気か?」

「さ、さあ……」

「東方正帝陛下の軍勢が向かっていることは、敵は確実に知っているのだな?」

「無論です。密偵を出して確認しています」


 東方正帝の軍勢が接近中だという情報は、ウティウム伯があえて流したものだった。それを知れば皇弟リヒャルトの軍勢が退却すると見込んでのことである。まさか敵が一日で城を落とそうとしているとは、夢にも思っていない。


「しかも、たった一つの攻城塔で何をする気なのだ……」

「さあ……」

「ともかく、全軍直ちに戦闘配置! 敵を近づけるな! 私も前に出る!」

「はっ!」


 敵はすぐそこにいるので、ウティウムは常に臨戦態勢であった。ウティウム伯も城壁の塔に入り、自ら戦いを指揮する。


「攻城塔が止まりました!」

「何だと?」

「敵までの距離、およそ三百メートルです。こちらの矢は届きません」

「向こうの矢も届かんだろう。連中は何を考えている……」

「ん……? 伯爵様! 城壁に近づいてくる者がいます! たったの数人のようですが……」

「何だそれは?」

「あれです!」


 城門に近づいてくるほんの数人の人影。夜闇に紛れてよく見えないが、明らかに異様だ。


「今更になって和睦の使者でも寄越したのか?」

「そういう雰囲気ではありませんが……。それに、大した武器を持っているようにも見えません。何の旗も掲げておりませんし……」

「…………まあいい。敵でなくとも、こんなところにいる方が悪いのだ。あの連中を攻撃せよ!」

「はっ!」


 ウティウム伯は眼下の人影に対し、壁上からの攻撃を命じた。

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