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不死身の元魔王ヴィルヘルミナ~吸血鬼は千年の戦場を見届ける~  作者: Takahiro
第二章 ウティウム攻囲戦

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化け物たちの会合

「さて、卿一人だけにこの作戦をやってもらうわけではない」

「グレーテルにもやらせるのかい?」

「その通りじゃ。皇帝家の先槍として、グレーテルには卿に助太刀をさせる。よいな?」

「……はっ。殿下のご命令であれば喜んで」


 明らかに嬉しくなさそうであったが、明らかに間違っている命令でない限り、グレーテルが私情で命令を拒否することはない。


「よろしくね、グレーテル」

「……こちらこそ、よろしくお願いします、ヴィルヘルミナ様」


 ヴィルヘルミナが差し出した手を、グレーテルは露骨に溜息を吐きながら取った。


「うむ。それともう一人、優秀な者を呼んでおるぞ」

「他に吸血鬼でも雇っているのかい?」

「吸血鬼ではない。おい、シルヴァをここに」


 ――どこかで聞いたことのある名前だなぁ。


 皇弟リヒャルトが人を遣って呼ばせたのは、際立った風貌をしたエルフ。両足と左腕が金属の義肢になったエルフの女である。人間の基準では見た目は若者のようだが、実際の年齢は誰にもわからない。


 エルフのシルヴァは魔法で少し浮き上がり、従者に手を引かれていた。義足では歩けないからである。彼女が天幕の中に入ってくると、真っ先にヴィルヘルミナと目が合った。


「……ヴィルヘルミナ」

「久しぶりだね、シルヴァ。元気にしていたかい?」

「フランク公の下で世話になっている。元気」

「それはよかった」

「…………」


 シルヴァは不機嫌そうに目を逸らした。ヴィルヘルミナは一緒に戦う予定の二人のどちらにも嫌われているらしい。


「ヴィルヘルミナ様とシルヴァ様はお知り合いなのですか?」

「ああ。二年前のブロベルクの戦いで知り合ったんだ。あの時はポスナニア公に庇護されていたね」

「左様でしたか。それにしては、単なる恨みという風でもありませんが」


 シルヴァは戦いに負けてヴィルヘルミナを恨んでいるという風でもない。


「……吸血鬼など恨むに値もしない」

「まあ、色々と複雑なんだよ」

「はあ」


 シルヴァはヴィルヘルミナに捕らえられたが、ヴィルヘルミナのお陰で無事に逃げられたのである。恨みというより屈辱の方が勝るだろう。


「それと、私にも連れがいるんだ。参加させてもいいよね?」

「うむ。無論構わぬ。卿が薦める者であれば、心配は要らぬであろう」

「ちょっと待っててね」


 ヴィルヘルミナはヴェロニカを連れてきた。ヴェロニカは今回の作戦に自分から志願したのである。ヴェロニカは戦争に参加すること自体への忌避感は特にない。


「よ、よろしくお願いします」

「よろしくお願いいたします、ヴェロニカ様」

「はい……」


 思えば、ヴィルヘルミナがグレーテルに喧嘩を売った時、ヴェロニカもそこにいた。


 ――あれ、そう言えば、この前は偽名を使ったんだったよな……


 グダンツでグレーテルと会った時、ヴェロニカはヒルデガルドという偽名を名乗ったわけだが、グレーテルは特に何も言及しなかった。


 ――忘れたってことではないだろうし……。弱みを握られた可能性もあるか?


 グレーテルがヴェロニカの正体――ポメレニア辺境伯の妹であること――まで勘づいているのかはわからないが、触らぬ神に祟りなし。ヴィルヘルミナは気づかなかったことにした。


「役者は揃ったようじゃな。では早速、取り掛かるとしようか」

「待ってください、殿下」


 皇弟リヒャルトが今すぐにでも始めたそうにしているところに、シルヴァが割って入った。


「ふむ。何じゃ?」

「私とグレーテルとそこの吸血鬼が一緒にやれば、城門の上の守備兵くらいは壊走させられるでしょう。ですが、それだけで城を落とすのは困難です。ここは、更なる衝撃を与えた方がいいかと思います」

「と言うと?」

「我々の突撃と同時に、攻城塔で兵士を送り込みます。最初の一撃を我々が担えばいいのです」

「私達のすぐ後に、兵士の皆さんに続いてもらうということですか?」


 ヴェロニカがシルヴァに問う。シルヴァは「そういうこと」と気怠そうに答えた。


 攻城塔による城攻めでは、城壁に乗り込むまでが一番苦労する。そこで強力な衝撃力を持つ彼女たちが一番槍となって敵の妨害を排除すれば、攻城塔を城壁まで持っていくことは比較的容易である。攻城塔が取り付き、兵士が壁上になだれ込み始めれば、戦況は一気に傾く。


「それはいいけど、攻城塔の準備は時間が掛かるんじゃないかい?」

「それなら、我々フランク公国軍が用意する。殿下、半月もあれば十分に整えられます。いかがでしょうか?」

「うむ。半月程度であれば我慢できぬこともないか。シルヴァ殿の作戦を採用する。フランク公によろしく頼むぞ」


 皇弟リヒャルトは乗り気であったが、その時、伝令が飛び込んできた。


「申し上げます。東方正帝が動き出しました。ここには半月もあれば到達するものかと存じます」


 東方正帝が裏で糸を引いているのは本当だったらしい。


「ううむ……。思ったより早く動き出したな……」

「これは困ったね」

「ど、どうするのでしょうか……」

「ご自分で考えたらいかがですか?」

「…………」


 化け物たちが言いたい放題している間、いきなり作戦を台無しにされたシルヴァは黙りこんでいた。

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