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不死身の元魔王ヴィルヘルミナ~吸血鬼は千年の戦場を見届ける~  作者: Takahiro
第二章 ウティウム攻囲戦

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城塞都市ウティウム

 帝都ウィンドボナから唯一の都レムリアまで、片道およそ一千キロ。その間にあるのは半島本土の付け根を押さえるランゴバルド王国だけである。ランゴバルド王国を抜ければ首都長官領に入ることができ、ここは各皇帝であっても武力を行使できない不可侵地帯である。


 ランゴバルド王国は西方帝領に属し、人口は百八十万ほど。単独であればそれほど大きな脅威ではないが、北方帝のレムリア遠征を嫌う西方帝領の諸国や東方正帝が支援しており、侮れない相手である。


「ここで止まっていただこう! このウティウムを易々と通れるとは思わないでもらいたい!」


 魔王の道を塞ぐように建設された城塞都市ウティウムは、ランゴバルド王国の東の国境を守備する最重要拠点である。


「何を言うか! ランゴバルド国王陛下より通過の許しは得ているのだぞ!」

「国王陛下が認めたとて、ウティウムは認めぬ!」

「ッ……!」


 ウティウムは城門を固く閉ざした。壁上や塔から数百の兵が姿を現わし、皇弟リヒャルトの軍勢に弓を向けた。即座に開戦とはならなかったが、通してくれる気はまるでなさそうである。


 ○


「――それで、状況はどうなっているんだい?」


 ヴィルヘルミナはポメレニア辺境伯アドルフに尋ねた。辺境伯はちょうど、皇弟リヒャルトらとの軍議から戻ってきたばかりである。日も落ちてきたので、ヴィルヘルミナもヴェロニカも自由に活動できる。


「見ての通りです。ウティウム伯は我々を通す気はありません。無論、これほどの城塞都市を迂回するのは非現実的ですね」

「今回は略奪が許されないから、でしょうか?」


 ヴェロニカが兄に尋ねる。


「ああ。我々はあくまで平和的にレムリアに向かう軍勢だ」

「やはりそうですよね……」


 物資の現地調達は許されない。となると、北方帝領から兵糧などを輸送する必要があり、補給路の安全を確保しなければならない。このウティウムが敵対している限り、先に進むのは不可能だ。


「それにしても、事前にランゴバルド王国に何も言わずに出兵したのかい?」

「そんなはずはありません。ランゴバルド国王から通過の許可は得ています」

「じゃあウティウム伯が勝手にやってるってことかい?」

「その可能性が高いでしょう」


 ランゴバルド王国は半島本土の付け根という戦略的に非常に重要な位置にある。それ故に諸外国からの干渉が甚だしく、ランゴバルド国王は国内諸侯を統制し切れていないのだ。


「一介の伯爵が北方帝陛下に喧嘩を売るなんて、あまり考えられませんが……」


 ヴェロニカの疑念はもっともである。ウティウムはそれなりに強力な要塞であり、北方帝相手でも暫く耐えることはできるだろうが、長期的な勝ち目は全くない。


「背後に別の勢力がいるのだろう。恐らくは東方正帝だ」

「やはり、北方帝陛下が有利になることは妨害したいのでしょうか」

「今回の目的は帝位継承なんだ。邪魔したくなる気持ちもわかるね」

「北方帝を弱らせたい、ないし混乱させたい勢力がウティウム伯を支援していることは、自然なことです」


 本当に東方正帝が背後にいるのかはともかく、大国がウティウム伯を支援しているのは間違いないだろう。


「それで、これからどうするのでしょうか……。交渉が通じればよいのですが……」

「さあねぇ。背後に大国がいるなら、交渉なんて通じないんじゃないかな」

「こちらから更なる利益を示せば、鞍替えしてくれるかもしれません。元より非公式な取引である以上、寝返ることに抵抗は少ないかと」


 ウティウム伯はあくまでランゴバルド王の臣下。外国勢力と通じていると公言するのは体面が悪い。堂々と反乱を起こす方がマシだ。


「ともかく、今はリヒャルト殿下の決定を待ちましょう。我々はそれに従っていればよい。大した相手でもありませんし」

「随分と消極的だね」

「わざわざ積極的になる理由がありません。私は別に、この遠征が失敗しても構わないのです。いやむしろ、失敗してくれると嬉しい」


 ――ほう。面白いことを言う。


「あ、兄上……!」

「冗談だ。気にするな」

「本当に冗談なのかねぇ」


 ポメレニア辺境伯のことだから、この遠征が失敗して北方帝の権威が失墜し、権力に空白が生じることを望んでいるのではなかろうか。ヴィルヘルミナにはそうとしか思えなかった。


 ○


 皇弟リヒャルトはウティウム伯と数日にわたって交渉を行ったが、先方はまるで受け入れる気がなかった。時間の浪費に終わったのである。


 そんな中、ヴィルヘルミナはリヒャルトから呼び出しを食らった。


「――いよいよウティウムを攻撃するつもりかい?」

「いかにも。しかし普通に城攻めをすれば、時間が掛かりすぎ、犠牲も多く出る。時間を掛けすぎれば、ウティウム伯の背後にいる者が援軍を寄越すかもしれぬ。そこで卿には、敵の士気を崩してもらいたい」

「なるほど。敵を怯えさせて降伏させると」

「降伏まで行かずとも、城門の守備を崩せば十分。城内に突入すれば敵も自ずと降伏しよう」

「それはいい作戦だ」


 ――私と考え方が近い人間でよかった。


 双方犠牲を最小限に抑えることができる。ヴィルヘルミナとしても、悪い力の使い方ではない。

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