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不死身の元魔王ヴィルヘルミナ~吸血鬼は千年の戦場を見届ける~  作者: Takahiro
第七章 霧になる魔法

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新たな始祖

「あ、あのぉ……ゲルトルートさん、ちょっとよろしいですか……?」

「ん? どうした?」


 腰を低くして話しかけるヴェロニカに対し、ゲルトルートは穏やかに応じた。彼女が敵意を向けるのはヴィルヘルミナただ一人なのである。


「その、ヴィルヘルミナ様が、ゲルトルートさんを呼んでいまして……」

「あいつが? どういう要件だ?」

「ヘルムートの記憶を読んで欲しいとのことです。死体の鮮度が大事だからと」

「ふむ……。確かにそれは一理あるな。既に残りの吸血鬼は三体殺した。わざわざ私が手を貸さずとも大丈夫であろう。すぐに向かう」

「あ、ありがとうございます」


 ゲルトルートとヴェロニカは、ヘルムートの死体とヴィルヘルミナが転がっている洞窟の入口へ戻った。


「ゲルトルート、ヴェロニカから話は聞いてるかい?」


 ヴィルヘルミナが親しげに話しかけると、ゲルトルートはギロりと睨みつけた。


「ああ、聞いている。こいつの記憶を読むことに異論はないが、その前に貴様を何度か殺させてもらおうか」

「ゲルトルートさん!?」

「別にいいよ。好きにするといい」

「では三回ばかり死んでもらおう」

「ええ……」


 ヴェロニカが絶句している横で、ゲルトルートはサーベルを抜き、「一、二、三」と無感情に数えながら、ヴィルヘルミナの心臓を三度突き刺した。サーベルの血を振り払い、鞘に戻す。


 ヴィルヘルミナの服は真っ赤に染まったが、傷口はすぐに塞がり、その血も吸収されていった。


「……では、こいつの記憶をもらうとしよう」


 ゲルトルートはヘルムートの死体の首筋に噛みつき、その血を吸い始めた。血を吸えば吸うほど多くの情報が手に入るので、吸血は数分にわたり、死体の肌の色が徐々に白くなっていった。


「な、何か、情報は手に入ったのですか……?」

「無論である」

「とりあえず、一番気になるのは『霧になる魔法』を持つ血族の始祖についてなんだけど、どうだい?」

「そいつであれば、この洞窟にいるな」


 ゲルトルートの衝撃的な一言に、ヴィルヘルミナもヴェロニカも固まってしまった。


「――そ、そうなのですか!?」

「こいつらの本当の頭はそいつってことかい?」

「そうではない。どちらかと言うと、ヘルムートがそいつのいた洞窟を勝手に使っていると言うべきであろうな」

「あの、その人のお名前は、わかりますか?」

「ノエルというそうだ。変な名前であるな」

「西方帝領のガリア地方でよく見られる名前ですね」

「わ、わかっておるわ、そのくらい」


 ゲルトルートはヴェロニカから露骨に目を逸らした。ヴェロニカはいたたまれない気持ちになった。


「しかし妙だね。近くに吸血鬼がいる気配なんて全然しないんだけど」

「ノエルは気配を消すことに長けているようだ」

「わざわざそんなことをする吸血鬼がいるのですか?」

「まあ吸血鬼に見つかりたくなければ、気配を消したくなるんじゃないかな。吸血鬼同士が殺し合うことはあんまりないから、普通はそんなことしないけど」


 吸血鬼を積極的に攻撃する吸血鬼は珍しい。血液を得たいのなら吸血鬼を襲うより人間を襲った方が遥かに楽だからである。ヴィルヘルミナやゲルトルートは吸血鬼としてはかなりの異端だ。


「それで、そのノエルさんはどこに?」

「この洞窟の最奥にいるらしい。ヴィルヘルミナが回復したら行くぞ」

「待ってくれるのかい」

「万一の際は貴様を囮にする。囮は活きがいい方がよいに決まっておろう」

「まったく、君らしい答えだ」


 ヴィルヘルミナは乾いた笑い声を漏らした。


 二時間ほど待ち、ヴィルヘルミナの下半身が完全に再生したところで、三名の吸血鬼はゲルトルートの案内の下、洞窟の最奥部に向かった。


 ○


 その場所に辿り着くのは簡単であった。しかし問題があった。入口がないのである。正確に言えば、腕一本が何とか通る程度の穴しかない。


「どうなってるんだい、これは?」

「敵は霧になる魔法が使えるのです。霧にならないと入れないということでは?」

「まったく、面倒なことであるな」

「ど、どうしましょうか……」

「掘るしかないかなぁ」


 ヴィルヘルミナはツルハシを作り出して岩盤に叩きつけてみた。小気味いい音がして、ツルハシは弾き返された。


「頑丈だね。壊すのは一苦労だ」

「穴を掘るのであれば、鉱夫を動員して数ヶ月はかかるであろうな。その間、奥にいる奴が黙っているとも思えぬが」

「うーん……」


 ヴィルヘルミナは小さな穴を覗き込んだ。


「この穴自体は、それほど長くないみたいだ。岩盤がちょうど道を塞ぐ壁みたいになってるね」

「そんな地形が自然に生じるんでしょうか?」

「反対側から穴を掘って来たのであろう。そうすれば、向こう側に部屋を造ることもできる」

「他に入口はないはずだけど」

「部屋さえできれば埋め立ればよかろう。そんなこともわからんのか、貴様は」

「そんな怒らないでくれよ」


 吸血鬼ノエルがいると思われる部屋は、頑丈な岩盤の壁で守られている。侵入は極めて困難である。

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