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不死身の元魔王ヴィルヘルミナ~吸血鬼は千年の戦場を見届ける~  作者: Takahiro
第六章 西の吸血鬼退治

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ヴィルヘルミナの消耗

 その矢を、ゲルトルートはサーベルで弾き返した。ゲッツの棍棒を受け止めながら、そのサーベルを少し回転させ、矢を防いだのだ。人間業ではない。手練の吸血鬼にしか不可能な芸当であろう。


「おお、やるじゃないか」

「その程度で私を殺せると思うな。わかったら、私と戦うことは諦めよ」

「そいつは無理な相談だな」

「ヴィルヘルミナごときに義理を尽くす必要はあるまい。奴を利用するだけ利用すればよいのだ」

「それを決めるのは俺達だ。ヴィルヘルミナには結構な恩があるんでな。昔の悪行なんぞ知らん」

「話の通じん奴め。まあいい。ヴィルヘルミナが動けなくなるまで、ここで遊んでやろう」

「随分と舐められたもんだなぁ!」


 ゲルトルートはその気になればヘルヴェコナ伯ゲッツを殺せたが、その気は毛頭なかった。ひたすら足止めするだけである。一方、ヴェロニカは両者の激しい戦いに介入できずにいた。


 ○


「まあ、余計な邪魔が入らないのは、それはそれで好都合だ。私の手で、君達を皆殺しにしてあげよう」


 ヴィルヘルミナは両手に大斧を作り出した。眼前の吸血鬼、残り十二体を皆殺しにするつもりである。


「そいつを殺せ!」

「「おう!!」」


 ヘルムートの命を受け、二体の吸血鬼がヴィルヘルミナに斧で襲いかかる。洞窟は狭く、同時に戦えるのは二体が限界であった。ヴィルヘルミナにとっては非常に有利と言ってよい。


 二体の斬撃をそれぞれ片手で受け止め、そのまま押し込んでいく。ヴィルヘルミナは力が強いタイプではないが、若い吸血鬼相手に二対一で力負けすることはない。


「クッソ……! こいつ、強い……!」

「君達も耐えるねぇ」


 両手を塞がれている状況。相手は守りに回っており、決定打に欠く。


「騎士道なんて君達に適用されるはずもない。せこい手段も使わせてもらおうか」

「そいつは……!」


 ヴィルヘルミナの爪が伸びる。斧を持ちながら、伸びた爪先が吸血鬼の胸に迫った。


「ク、クソッ……!」

「終わりだ」


 爪は皮膚を破り肉を裂き、吸血鬼の心臓を突いた。間欠泉のように血を吹き出し、吸血鬼の片方が倒れた。その隙を逃さず、ヴィルヘルミナは自由になった左手の斧で、右の吸血鬼を真っ二つにした。


「さあ、次はどいつだ?」

「矢を放て!」


 ヘルムートが大声で命令する。いつもの淡々とした仮面は剥がれていたが、判断力が鈍っているわけではない。二本の矢がヴィルヘルミナに飛んできて、片方が彼女の左腕を貫いた。銀を鍍金してある矢が刺さった途端、肘から先が吹き飛んだ。


「まったく。その程度で勝った気に……」


 ――回復できないか。やはり消耗が激しい。


 ゲルトルートが言った通り、心臓から身体を完全に作り直すのは体力を大きく消耗する。ヴィルヘルミナは片腕すら満足に回復できなかった。


「もっとだ!」

「さすがに許せないね!」


 ヴィルヘルミナは吸血鬼の射手に獣のような勢いで飛びかかった。だが、その右手の斧が射手を切り裂く寸前、別の吸血鬼が彼女の斬撃を斧で受け止めた。


「いい動きじゃないか」

「調子に乗るな、化け物が!」

「まったく。君達に化け物呼ばわりされるのは実に不愉快だ」

「今度こそくたばりやがれ!」

「クッ……」


 もう一人の斧持ちの吸血鬼が、ヴィルヘルミナに襲い掛かる。片方がヴィルヘルミナと鍔迫り合いしている間に、もう片方がヴィルヘルミナに斬り掛かろうとしているのだ。


 吸血鬼は斧を横に構え、ヴィルヘルミナの胴体を真っ二つにしようと振りかぶった。


 ――それはさすがにマズいな。


 まだ左腕は再生できない。ヴィルヘルミナは非常手段に訴える。


「何だ!?」

「血を固めた武器だ。使い勝手は悪いんだが」


 左肘から、赤黒い刀身のようなものが生えていた。血で作った剣のようなものである。もちろん腕としての機能はなく、何かを握ることはできず、攻撃範囲も極めて狭いが、攻撃を受け止めることだけは可能だ。


 かくして、右手の斧、武器と化した左腕で、ヴィルヘルミナは何とか二対一の戦いを凌ぐ。


 ――左が、ちょっとキツいか……


 斧に押され、即席の血の剣にひびが入ってきた。焦って生み出した武器故に、耐久力が確保できていなかったのだ。だがヴィルヘルミナも反撃の一手を用意している。


 ――そろそろ、いけるか。


「次は、私の番だ」

「クッ……!?」


 破壊される寸前、血の剣で斧を弾き返した。その一瞬の隙に左腕を再生する。じっくりと生命力を集中させることで、一気に再生させたのである。


 再生させた左手に槍を作り出し、左側の吸血鬼の心臓を貫いた。片方が消えればどうということはない。もう片方も瞬時に首を落とした。


「まったく……。苦労させてくれるね……」

「今度こそ、死んでもらおうか」

「おやおや」


 四体の吸血鬼がヴィルヘルミナに向かって弓を構えていた。手前の二体が膝立ちになって、後ろの二体の射線を確保している。


「放て」


 ヘルムートが合図すると、四本の矢がヴィルヘルミナに放たれた。

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