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不死身の元魔王ヴィルヘルミナ~吸血鬼は千年の戦場を見届ける~  作者: Takahiro
第六章 西の吸血鬼退治

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吸血鬼捜索

「――で、いい加減バカ共の拠点は見つけられないのかい?」


 ヴィルヘルミナは辺境伯アドルフに刺々しい口調で尋ねた。というのも、ヴェロニカが帰ってきてから二ヶ月が経過しているのに、ポメレニア辺境伯領西部で暴れ回っている吸血鬼の足取りが掴めないのである。


「申し訳ありません、ヴィルヘルミナ殿。近頃連中による被害が出なくなったのは喜ばしいのですが、そのせいで足取りを追う手がかりがほとんどなくなってしまったのです」

「それは……困ったね」


 ――まあ誰も死んでないのはいいことだけど。


「兄上、こんなに長い間、農民を村から切り離して大丈夫なのですか?」


 ヴェロニカが尋ねた。


「大丈夫かと問われると、全くそうではない。農作物が収穫できない以上、軍を動員している時と同じく外部から食糧を輸入しなければならない。これは全面戦争に近い負担だ」

「ど、どうにかできないのでしょうか……」

「それができれば苦労はしないってもんだよ」


 ヴィルヘルミナもアドルフもヴェロニカも、こればかりはお手上げと言ったところであった。


 しかしこの日、一筋の光明が射した。それは光明と呼ぶにはあまりにも暗い報告だったが。


「申し上げます。ヴィアドルス宮中伯領内にて、吸血鬼による被害が出たとのこと。村を一つ壊滅させる規模の攻撃です」

「わかった。下がれ」

「これはこれは。まあ、これまでヴィアドルス宮中伯領の方に縄張りが広がっていなかった方が妙だったけど」

「そちらに手を出すとヴィアドルス宮中伯が本気で動いてしまいますから、意図的に避けていたのでしょう。しかし我が領内で人を喰えなくなって、仕方なく向こうにも手を出したものかと」

「なら、早速そこに向かうとしよう。行くよ、ヴェロニカ」

「は、はい! ですが、行ったところで何かわかるものでしょうか……」

「それは行ってみればわかることだよ。私達は足が速いから、すぐに目的地につけるしね」


 実際、吸血鬼が夜間だけでも全速力で走れば、相当な移動速度になる。ここから現場の村まで、普通の行軍であれば十四日はかかるだろうが、吸血鬼であれば二日もあれば到着できる。


 というわけで、ヴィルヘルミナとヴェロニカはヴィアドルス宮中伯に入り、被害を受けた村落に到着した。事前に魔導通信で宮中伯側に連絡していたので、特に問題なく受け入れてもらえた。


「うっ……。これは、酷いですね……」

「前回から反省したのか、一日で皆殺しにするようにしたみたいだね」


 百五十人ほどの村人は一人の例外もなく殺されていた。その死体は宮中伯軍の兵士が村の中央にまとめ、少しずつ焼いて埋葬していた。ヴェロニカは吐き気を催したが、吸血鬼の性質上、何も吐き出すことはできなかった。


「やあ。生存者はいないのかな?」


 ヴィルヘルミナは兵士に尋ねてみる。


「はい。我々がここに来た時には、生存者は一人としておりませんでした。他には吸血鬼の死体が一体。それなりの抵抗はしたのでしょう」

「どうして、皆殺しなんか……」

「大して意味はないと思うけど、情報が漏れるのを恐れたんじゃないかな。まあ生き残りがいたとしても、奴らの拠点に繋がるとは思えないけど」

「そんなことで……」


 ヴェロニカは吸血鬼となった今でも、この残虐な行為に恐れを抱いていた。吸血鬼になったところで精神性が変わるわけでもなく、当然のことだろう。


 と、その時であった。


 ――ん? 吸血鬼の気配?


「どうしました、ヴィルヘルミナ様?」

「近くから吸血鬼の気配がしてね。しかも近づいてきている」

「ま、まさか、これをした人達が戻ってきたとか……?」

「いや、相手は一人だけだ」


 ――それにこの気配、馴染みがある。ゲルトルートだな。


 それからすぐ、一人の吸血鬼が姿を現した。純白からわずかに離れた肌と髪、そして焼けつくような赤い目を持ち、貴族のような出で立ちをした少女である。


「やはりいたかヴィルヘルミナ! 貴様がこれをしたのだな!?」


 ゲルトルートはサーベルを抜き、ヴィルヘルミナの心臓に突き付けた。


「違うって。前に言っただろう、この辺で暴れ回ってる吸血鬼がいるって」

「そ、そうですよ! ヴィルヘルミナ様は関係ありません!」

「ん? なんだそいつは?」


 ゲルトルートからするとヴェロニカは初対面の相手である。ヴェロニカが隣にいるのを見ると、ゲルトルートはすぐにサーベルを収めた。ヴィルヘルミナに対する強烈な敵意は変わりないが。


「そいつも不幸にする気か、貴様は」

「なんでそうなるのかな」

「わ、私は不幸になんて……」

「そいつは信用しない方がいい。で、お前は何者だ?」

「ああ、この子はヴェロニカといって――」


 ヴィルヘルミナはゲルトルートにヴェロニカのことを軽く説明し、ヴェロニカも自己紹介を行った。


「そんなことよりゲルトルート、この村を襲った吸血鬼共がどこに潜んでいるか知りたい。君ならできるだろう?」

「そうなのですか……?」

「無論である。吸血鬼の死体は残っているということだな?」

「ああ。こっちに来てくれ」


 ヴェロニカがよくわからない間に、ヴィルヘルミナとゲルトルートには通じ合うものがあったようだ。ゲルトルートは一旦矛を収め、素直にヴィルヘルミナについて行き、村の中央部に向かった。

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