表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不滅の元魔王ヴィルヘルミナ~討伐されたはずの吸血鬼のやり直し戦記~  作者: Takahiro
第四章 フロレンティアの戦い

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

108/158

味方を動かす策

「私は生憎、自分の手足にならない味方を使うことには慣れていないもので。ここはフランク公の長年の経験を頼りにしていますよ」

「儂とて、これほど極端な状況に陥ったことはない。しかし、貴様よりはまだマシであろうな」

「というと?」

「ポメレニア辺境伯領は貴族への統率が効きすぎているのだ。普通の戦は臣下の貴族と合議しながら戦うものだからな」


 辺境伯が命令を下せば誰も迷いなくそれに従う。軍隊としては理想的であるが、それを実現しているのはほとんどポメレニア辺境伯軍だけなのである。


「それは面倒ですね」

「まったくだ。だが、いい策を思い付いたぞ」

「おや、本当ですか?」

「全ての諸侯にこのように伝える。『我らはこれより総攻撃を敢行する。全ての諸侯に参加を要請する。もちろん、その能力がない者は無理に参加してくれなくても構わない』とな」

「それはいい煽り文句ですね」


 味方を挑発して攻撃に参加させようというのがフランク公の作戦である。これに加わらなかった場合、戦いに怖気づいて他の諸侯に守ってもらった軟弱者という誹りは逃れられまい。


「し、しかし……後ろ指をさされるからという理由だけで、全ての諸侯が動いてくれるのか?」


 ヴィアドルス宮中伯が疑義を呈する。名誉より実利を優先する諸侯がいてもおかしくはないという指摘は、至極真っ当である。


「必ずしも全ての諸侯に動いてもらう必要はありません。そして、一定以上の大貴族であれば、この誘いに乗らないわけにはいかないでしょう。周辺の貴族への求心力を失うことは避けたいはずです」


 およそ騎士役地千人分――人口にして五十万以上――の領地を有する大貴族は、周辺の小貴族を従えて勢力圏を築いている。もしも小貴族の方がこの攻撃に参加し、大貴族の方が尻込みしていれば、勢力圏の瓦解を招く。力を見せることは実利的にも重要である。


「な、なるほどな……」

「ではフランク公、よろしくお願いします」

「わかった。すぐに取りかかろう」


 フランク公は全諸侯に魔導通信で総攻撃への参加を要請した。


「我らが先陣を切る! 全軍、前進せよ!!」


 フランク公がは本陣に残していた一千の兵を全て突撃させた。ポメレニア辺境伯も同様である。彼らの本陣は最低限の守備隊として二百の兵しか残らなかった。


 その突撃を合図に、フランク公に従っていない貴族たちも一斉に攻撃を開始。敵の全軍に一気に圧力を掛ける。


「無理に堀を越える必要はありません。少なくとも我々は、射撃で敵を牽制することとしましょう」

「そうだな。敵を拘束すればよいのだからな」


 魔王の道の上を除き、敵の陣地は堀で守られている。ここを突破するのは難儀であり、犠牲も大勢出るだろう。フランク公の指揮下にある諸侯の軍勢は堀の手前に盾などを並べ、魔導弩の一斉射撃を仕掛けた。


 多くの諸侯も、内心では兵を損ないたくはないので、そのやり方に倣った。敵味方共に身を守りながらの撃ち合いであり、どちらの損害も小さいが、ランゴバルド軍が持ち場を離れることは困難になった。


 皇弟リヒャルトが率いている二千五百の北方帝直轄軍も全力で攻撃をしかけている。グレーテルが暴れているのか、直轄軍が攻めている部分だけは、堀を超えて直接攻撃を仕掛けていた。


 だが、大貴族と言える家の中で唯一動かない者があった。


「申し上げます。ラエティア大公、動く様子がありませぬ」


 ラエティア大公は北方帝領第三の諸侯であり、三千ほどの兵を動かせる。


「動かないとしたら奴だろうと思っておったわ。いけ好かない奴よ」


 フランク公はポメレニア辺境伯以上にラエティア大公を嫌っていた。


「さすが、魔王を土壇場で裏切った一族の末裔なだけありますね。裏切られたらさすがに困りますが」

「大方、諸侯が消耗するまで様子見でもしているのだろう。裏切りまではしないだろうが、最後の一押しだけを決め、美味しいところを持っていこうとでも考えているのだろうな」

「適当に圧力をかけて動かせないでしょうか」

「ふむ。奴なら我が身可愛さに従うか……」

「やってみればわかることです。こういう時はヴァルシュヴァ伯が頼りになるでしょう」

「それがよかろう」


 フランク公は早速、ヴァルシュヴァ伯をラエティア大公のもとへ送り込んだ。ペガサス騎兵がいきなり目の前に現れれば、大抵の人間は従うだろう。


 ○


「こんばんは、ラエティア大公殿下。わたくし、ヴァルシュヴァ伯フリーデと申します」


 十騎ほどの供回りを連れ、ヴァルシュヴァ伯フリーデはラエティア大公オイゲンの目の前に降り立った。ラエティア大公はやる気なさげに椅子に座っており、ヴァルシュヴァ伯が見下ろす格好になる。


「魔導通信を使えばいいものを、わざわざここまで来るとは、いかなる要件かな?」

「大公殿下には総攻撃に参加していただきたいのです。殿下のお力抜きでは、勝利は遠のいてしまいます」

「卿にそこまで言われるのはありがたいが、当家にも事情があるのだよ」


 少なくともペガサス騎兵の脅しは効いていない様子である。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ