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不滅の元魔王ヴィルヘルミナ~討伐されたはずの吸血鬼のやり直し戦記~  作者: Takahiro
第四章 フロレンティアの戦い

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ヴェロニカの活躍

「これも犠牲を減らすため……。すみませんが、死んでもらいます」

「吸血鬼!?」「何で人を背負ってるんだ?」「そ、そやつを殺せ!!」


 背中にエルフを背負っている吸血鬼という珍妙な存在が戦場に姿を現した。ランゴバルド軍としてはヴィルヘルミナとヴェロニカの区別などつかないので、吸血鬼というだけで排除の対象となる。


「シルヴァさん、掴まっていてください!」

「え、このまま戦うつもりなの?」

「もちろんです! 安全な場所なんてないですし」

「え、あ、ちょっと――」


 ヴェロニカはシルヴァを背負ったまま、両手の爪を刃のように伸ばし、襲い来る兵士たちへ逆に突っ込み、その喉元を次々と掻き切った。シルヴァはその間、死ぬ気でヴェロニカにしがみつきながら、ひっそりと浮遊魔法でヴェロニカへの負担を軽減していた。


「一瞬で四人殺したね」

「首は鎧で守られていませんからね」

「まあ……うん」


 ヴィルヘルミナとはまた違った恐るべき存在に兵士たちは尻込みし、領主が命じているにも拘わらず攻撃できない。


 高位の吸血鬼にとって、武器を使うのはむしろ手抜きのようなものである。ヴィルヘルミナはあまり吸血鬼らしさを出したくないという拘りから武器を作って戦うことが多いが、爪の方が圧倒的に小回りが利く。


「って、君、腹が斬られてるじゃないか」

「ああ、このくらい、平気です」


 さすがはヴィルヘルミナから直接血をもらった吸血鬼。傷はあっという間に治った。


「血族の始祖から血をもらうと、こんなに強いのか」

「そ、そうでしょうか……。比較対象がないのでわかりませんが」

「君はかなり強い方だよ。それはそうと、この辺の兵士を指揮しているのは、あそこで馬に乗っている偉そうな奴だ」


 五十メートルほど離れた地点で、子爵くらいの貴族が指示を飛ばしている。


「わかりました。あの人を殺せば、この辺は片付きますね……」


 ヴェロニカは、ほっと息を吐いた。


「うん。あいつに向かって跳んで。そうしたら、あそこまで浮遊の魔法で行ける」

「よくわかりませんが……シルヴァさんを信じます!」


 ヴェロニカは吸血鬼の脚力で思いっきり飛んだ。それだけでは目標に届かないはずであるが、ヴェロニカの身体は不自然に宙に浮き、跳躍の勢いのまま殺すべき貴族の目の前に着地した。


「な、何なのだお前らは!?」

「あなたが死んでくだされば、それで戦いは終わるのです」

「ッ……!」


 軽く跳ねてその貴族の首を落とし、目標は達成である。たちまちその男の配下であった兵士は統制を失って逃げ出し始めた。そしてシルヴァは貴族を含めた死体を氷で串刺しにし、周辺の兵士を強烈に威嚇する。


 ○


「ば、馬鹿なッ! まさかジルベールが負けたというのか!?」

「違います! ジルベール殿はまだ交戦中です!」

「で、では何なのだ! 敵には複数の吸血鬼がいたのか!?」

「想定外ですが、そうとしか考えられませんかと」

「これではどうしようもないではないか……」


 ランゴバルド王アストルフォに、これ以上の臨機応変さはなかった。串刺しの死体が量産されていくのを眺めていることしかできない。


「しかし陛下、中央部は何とか耐えられています。この調子であれば、敵が消耗し切るのが先であるかと」


 ヤヌア候ロレンツォはまだ勝てると踏んでいた。


「だ、大丈夫なのか……? 右翼と左翼から兵を引き抜いているが……」


 ランゴバルド軍の中央はおよそ四千の兵力でポメレニア辺境伯軍・フランク公軍と戦っている。辺境伯と公爵の手持ちの兵力は合わせて七千であるが、全てを前線に出しているわけではなく、騎士と歩兵合わせて五千ほどが攻めかかってきている。


「敵の大部分に動く様子は見られません。これまでの動きを見るに恐らく、敵の全軍を統率する者がいないのでしょう」

「た、確かに……北方帝が不在である以上は、誰も指揮できんか」

「我が軍の目的は敵を足止めすること、負けなければよいのです」


 北方帝領諸侯の連携が取れていないことはさすがに見抜かれていた。ヴェロニカがいくら奮闘したところで、決定的な打撃を与えるのは難しい。


 ○


「このままでは押し切れんぞ。どうするつもりだ、辺境伯」


 フランク公とポメレニア辺境伯は馬を並べて戦場を見ていた。戦場からは兵らの叫び声や悲鳴がよく聞こえる。


「やはり、劣勢な兵力で防御を固めた相手に攻め込むのは無謀でしたね」

「貴様、まさか諦める気か?」

「それは条件次第です。我々は敵中央を突破する寸前ですが、敵が耐えているのは両翼から兵士を引き抜いているからです」

「総攻めすれば勝てるとでも申すか?」

「ええ、まさにその通りです」

「だが、それが無理だから、こうして一部の諸侯だけで戦っているのではないか」

「この際、秩序立った攻撃でなくても構いません。全軍で一気に攻撃を仕掛けられれば、敵は崩れます」

「……その言葉、偽りはあるまいな?」

「ええ。こちらの兵力を全て使えれば、負けるはずはありません。もっとも、それが難しいのですが」

「うーむ……」


 フランク公はポメレニア辺境伯の作戦を実行に移す算段だけを考えていた。


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