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不滅の元魔王ヴィルヘルミナ~討伐されたはずの吸血鬼のやり直し戦記~  作者: Takahiro
第四章 フロレンティアの戦い

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ジルベールの弱点

「その力、万能すぎない? 弱点とかないのかい?」

「わざわざ弱点を教えると思っているのか?」

「だって、弱点が全くなかったら殺し合いが楽しくないじゃないか」


 ヴィルヘルミナがふざけた調子で言うと、ジルベールの逆鱗に触れたらしい。


「……やはり貴様も、人殺しを楽しむ外道か。必ずここで殺しきる」

「そういう風に取られるのは心外だな。戦場に立っている者に容赦はしないが、罪のない人間を殺したりはしない」

「信じられるか!」


 ジルベールはヴィルヘルミナに斬り込んだ。ヴィルヘルミナも斧で応戦するが、ジルベールは左腕の盾で受け止めつつ懐に潜り込み、ヴィルヘルミナの心臓へ右腕を突き立てた。


「だから、無駄だって言ってるだろう」

「黙れ」


 心臓に突き刺した刃をそのまま右に動かし、ヴィルヘルミナの胸部を切断する。胴を半ば真っ二つにする一撃であったが、しかしヴィルヘルミナの肉体はすぐさま再生する。裂けた肉は速やかにくっつき、傷の一つも残らない。


「忌々しい……」

「それはどうも」


 ジルベールはまたしても飛び退き、距離を取る。彼の両腕は普通の人間の形に戻っていた。


 ――そう言えば、毎度わざわざ腕を元に戻しているな。そうせざるを得ないのであれば……


「君、腕を武器に変えた状態を長く維持できないんじゃないかい?」

「どうしてそう思う?」

「だって、戦いの最中にわざわざ元に戻すのは意味がわからない。わざわざ隙を晒しているだけだからね」

「戦い慣れしているな。だが、それがどうした? お前が矢を放ってからでも変形できる」

「まあねぇ」


 ヴィルヘルミナがすぐ目の前から矢を放っても、ジルベールはその矢が届く前に左腕を盾に変え、矢を防いだ。その反応速度は吸血鬼であっても追随を許さない。


 ――確かに、だからどうしたって話ではある。ここはやはり、策を切り替えるべきか。


「ヴェロニカ、私がこいつを足止めしておくから、君は敵の兵士を殺して回ってくれないかい?」

「わ、私ですか!?」

「ああ。私が血をたくさんあげたんだ。君ならできるよ。それとも、ただの人間は殺したくないかい?」

「戦争である以上、人を殺すこと自体は躊躇いません。しかし、ヴィルヘルミナ様ほど上手くやれるかは……」

「上手くやれるよ。シルヴァもいるしね。当然、手伝ってくれるだろう?」

「……まあ、ここで負けるのは困るから」

「だそうだ。じゃあ頑張ってくれ」


 相手はただの人間だ。ヴィルヘルミナでなくとも、荒らして回ることは可能なはず。ヴィルヘルミナが相手にするべきはジルベールの方である。ヴェロニカは顔を青くしながらも、ランゴバルド軍の中に突っ込んでいった。


「話は終わったか?」

「ああ。けどいいのかい? ヴェロニカを止めないと、君達は負けるよ?」

「俺は戦争など興味はない。ただ吸血鬼を殺すだけだ」

「ブルグントに雇われてるんだろう?」

「契約条件は吸血鬼を殺すことだけだ」

「変な奴だねぇ。まあ、こうして私を足止めできている以上、間違ってはいないか」


 相手が吸血鬼を出してきた時の対抗手段として吸血鬼を雇うのは、実に合理的なやり方だ。倫理的に非難されることもなく、戦力としても役に立つ。ヴィルヘルミナとしても、ジルベールの性格がもっとまともであれば、手放しで称賛するところであった。


「さて、殺し合いを再開しようか。お待ちいただき感謝するよ!」

「また斧か」


 ヴィルヘルミナは再び大斧を叩きつける。ジルベールはすぐさま右腕を剣に、左腕を盾に変形させ、真正面から振り下ろされる斧を受け止めた。ヴィルヘルミナが一旦下がると、ジルベールは腕を元に戻した。


「まだまだ!」

「無駄なことを」


 ヴィルヘルミナは数度にわたって攻撃を仕掛けた。ジルベールはことごとく完封したが、彼の動きにわずかな変化が出てきたのを、ヴィルヘルミナは見逃さなかった。


「君、腕を溶かすのが遅くなってきてるよ?」


 これまで目にも留まらぬ速さで腕を変形させていたが、いつの間にか人の目でも追える程度になっていた。


「……」

「図星か。力を使い続けると疲労するのは、やはり吸血鬼に普遍的な現象のようだね」


 腕を溶かして血の武器にするのは、それなりに体力を消耗するようだ。いつか限界が訪れるだろう。


「お前こそ、いつまで再生できるんだ?」

「確かに私も再生に限界はあるが、君みたいに綺麗に心臓だけ貫いてくれると体力の消耗は少ない。何より、君は攻撃を受け止めるだけで体力を消耗するのに対し、私は傷を負わなければいい。どちらが先に斃れるかは、言うまでもないだろう?」

「…………」


 ジルベールは忌々しげにヴィルヘルミナを睨みつける。ヴィルヘルミナの指摘を認めざるを得ないようだ。


「ならば、今日はあのヴェロニカとかいう奴を殺そう」

「それは許さないよ? 私を殺せたら先に行くといい」

「貴様……」


 立場が逆転した。ヴィルヘルミナはジルベールを足止めすればいいのである。ジルベールは苛立ちを隠せなかった。

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