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不滅の元魔王ヴィルヘルミナ~討伐されたはずの吸血鬼のやり直し戦記~  作者: Takahiro
第四章 フロレンティアの戦い

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中央突撃

「敵勢が動き始めました! 我が軍の中央に攻撃する模様!」

「な、何故だ……! 敵は統率者がいないのではなかったのか!?」

「敵勢の中で動いているのは一部だけのようです。統率が取れているとは言い難いかと」


 ランゴバルド王の一番の部下、老将ヤヌア侯ロレンツォは言った。


「そ、そうか……。敵が一部しか動かないのであれば、勝機はあるか……。と、とりあえず、前線に出るぞ! それと、予備兵力を敵の前に集めよ」


 王は自ら騎乗して前線の指揮に向かった。総大将は自らの目で戦場を見て指揮するというのが、エウロパ全体で受け入れられている美徳である。


「敵はおよそ一千メートルに迫っております!」

「敵は……騎兵か。騎馬突撃を行うつもりか。あれは何人くらいなのだ?」

「およそ、一千と思われます」

「それほど多くはないが……この惨状で食い止められるものか……」


 ランゴバルド軍が用意した陣地はフランク公の投石機によってめちゃくちゃにされてしまっている。柵は爆風が逃げるため案外無事であったが、逆茂木などの障害物は大部分が吹き飛ばされてしまった。兵士も散り散りになっており、陣形らしい陣形を組めていない。


「ん? 攻撃が止まったのか……?」

「味方に当たるのを恐れているのでしょう。不思議なことではありません」


 ヤヌア侯はこんな前代未聞の状況でも、敵軍の意図を読めていた。


 敵軍が五百メートルばかりまで迫ったところで、投石機からの攻撃が止まった。投石機は基本的に狙撃に向いておらず、これほどの距離でも誤射の危険があるのだ。だが同時に、それは突撃の開始を告げる合図でもある。


「な、なるほど……。では、戦闘の備えをさせよう!」

「はっ。それがよろしいかと」


 敵の突撃に備え、槍兵は武器を構え、弓兵は柵の後ろに並び決戦の時を待つ。


「敵勢が突撃を開始しました!」

「は、早くはないか……? まだ五百メートルも離れているのに……」

「確かに早いですが、そんなことを言っている場合ではございません」

「そ、そうだな! 皆の者、急いで守りを固めるのだ!!」


 敵は一千の騎士。密集陣形を取り、正面幅は百メートルほど。その幅に対し、ランゴバルド軍は槍兵と弓兵合わせて三千ばかりである。まず一千の弓兵が柵のすぐ後ろで魔導弩を構える。


「魔導弩の射程に入りました!」

「よ、よし! 放て! 敵を一人でも多く討ち取れ!」


 足を速めてきた騎兵に魔導弩の射撃が開始される。だが、彼らはすぐさま違和感に気づいた。


「や、矢が弾き返されておるのか? あれは普通か?」

「普通ではありませんな……。敵の鎧は明らかに尋常ではない強度です」

「な、何だと……!?」


 ポメレニア辺境伯軍の騎兵はやけに白い鎧を纏っており、それは真正面から直撃した矢すら弾き返す性能を誇っていた。両軍の距離は、百五十メートルを切っている。


「な、何なのだあれは!?」

「わかりませぬ。しかし、今はそんなことを議論している場合ではありません」

「そ、そうだな。つ、次は……」

「――弓兵は下がれ! 槍兵を前に押し出すのだ!」

「あ、ああ、すまぬ……」


 弓兵を交代させ、槍兵を前に出して待ち構える。柵の前方五十メートルばかりは、対空炸裂弾の砲撃で並びを乱されてはいるものの、多数の障害物が散らばっており、容易に騎馬突撃を行うことはできない。


「障害物で突撃の勢いを削ぐことができれば、射撃が通じずとも防ぎ切れるはずです」

「そ、そうだな! 皆の者、恐れるでない! 騎士など恐るるに足りぬ!」


 実際、このような守りを固めた陣地に対し正面から攻撃するのは愚策である。いくら投石機による事前攻撃を行ったとしてもだ。それに加え、ランゴバルド軍の陣地は野戦築城としては最も堅牢な部類に入る。


 だが、ポメレニア辺境伯とフランク公がそれを知らず無闇に攻め込むわけもない。


「陛下! 空から、空から何かが迫っています!」

「そ、空だと!?」

「あ、あれは、ペガサスです!」

「なっ……一人ではないのか!? あれほどの数とは聞いておらんぞ!」


 ヴァルシュヴァ伯が個人的にペガサスを飼い慣らしているとの噂は耳にしていたが、数十人規模とは言えペガサスの部隊を用意しているとは、ランゴバルド王国の誰にも初耳であった。


「あれでは障害物の意味がないではないか!」

「左様かと。しかし、戦えないわけではありません」

「ゆ、弓で射落とせ! 鳥でも狩れるのだから、人にくらい当てられよう!」

「「おう!!」」


 上から来る相手には後方の弓隊も射線を確保できる。連射が効くし矢が真っ直ぐ飛ぶ魔導弩は対空戦闘には有利であった。幸いにもペガサス兵は矢を弾き返す鎧を装備してはおらず、馬でも人でも、矢が刺されば落ちた。


 だが、空を自由自在に動き回る的を狙うのは、人間にはやはり困難であった。わずかに四騎ばかりを落としたところで、ペガサス騎兵が一気に急降下を仕掛けてきたのである。


「槍衾だ! 槍衾で迎え撃て!!」


 槍兵の一部が斜め上に槍を向け、ペガサス兵を迎え撃とうとする。


「地上の敵が迫っております!」

「ど、どちらにも備えよ!」


 正面の騎兵は障害物で足並みが乱れているものの、五十騎のペガサス兵が上から突撃してくるだけで、兵らの注意は分散してしまっていた。そこで統制を取り戻すだけの力量は、ランゴバルド王アストルフォにはなかった。

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