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不滅の元魔王ヴィルヘルミナ~討伐されたはずの吸血鬼のやり直し戦記~  作者: Takahiro
第四章 フロレンティアの戦い

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フランク公の攻撃

 フランク公に話を通した後、ヴィアドルス宮中伯はヴァルシュヴァ伯を自身の陣地に呼び出した。ポメレニア辺境伯もそこで待っている。


「お久しぶりですね、ポメレニア辺境伯殿下!」

「ええ、久しぶりですね、ヴァルシュヴァ伯」


 淑やかさを常に醸し出しながら、しかし常に快活な女性、ヴァルシュヴァ伯フリーデ。甲冑を纏い笑顔でやって来た。


「それで、わたくしは殿下に手を貸せばよろしいのですか?」

「ええ。貴女が飼い慣らしているペガサスは、局所的には非常に強力な戦力になります」


 どうやったのかはわからないが、ヴァルシュヴァ伯は、ほとんど人間に懐かないペガサスを軍用に飼い慣らすことに成功していた。


「そうは言っても、今のところは五十騎くらいしか用意できませんよ?」

「それで十分です。協力してくれますよね?」

「もちろんです! こんなところで死にたくありませんからね」

「二年前のことは特に気にしないのですね」

「戦争なのですから、家臣がほんの数人殺されたくらいで根に持ったりはしませんよ。それよりも殿下を殺さなくてよかったです。あの時に殺していたら、わたくし達はここで全員死んでいたでしょう」

「それはそれは。買い被っていただき光栄です」

「買い被りなどではありません。殿下から命令があれば、何でも従いましょう」

「ありがとうございます。もっとも、今回の総大将はフランク公ではありますが」


 ヴァルシュヴァ伯は不気味なほどに快諾した。合理的ではあるが、あまりにも割り切りすぎている。


 その後、ヴィアドルス宮中伯は諸侯に、フランク公が総大将を務めるという条件で指揮下に入るよう要請した。結果として総勢一万二千ばかりの軍勢が、曲がりなりにも纏まりを持って動けることになった。敵の一万三千には劣るが、これで何とかするしかない。


 ○


 フランク公は改めて話のわかる諸侯を集め、軍議を開いた。ポメレニア辺境伯はフランク公の参謀という立場から、諸侯に作戦を説明する。


「今回の敵は、魔王の道を塞ぐことを目的として布陣しています。それはつまり、魔王の道に対して垂直方向に動くことができない――道沿いに動くことしかできないということを意味します」

「本当にそこまで道に固執するものでしょうか?」

「もしも敵が魔王の道から外れてくれれば、我々はその道を通って逃げ帰ればよいのです」

「……本気で仰っているのですか? 敵を目の前にして逃げると?」

「敵から攻撃を受けながら移動するというのは、古代の戦いでもいくらか例があります。決して不可能ではありません」


 別にランゴバルド王国軍を殲滅する必要はなく、北方帝領まで逃げ帰れればいいのである。敵の攻撃を受けながら道を進むのは難儀ではあるが、前例がないわけではない。


「なるほど……」

「であるからして、敵が魔王の道に陣取り続けた場合を考えましょう。この場合、敵には動けないことと、魔王の道そのものの防御は薄くなるという弱点が生じます」

「防御が薄くなるとは?」

「少なくとも数日程度では、頑丈な石畳で造られた魔王の道に堀は造れません」

「石畳など剥がしてしまえばよいのでは?」

「簡易な石畳であればそうかもしれませんが、魔王の道は古代街道の最も広いものより更に頑強で、地下数メートルに渡って石が敷き詰められています。これを掘り返すのは容易ではありません」


 魔王の道は間違いなく世界で最も高規格の道路である。排水などを目的としてその構造は地下深くに及んでおり、簡単に破壊できるものではない。


「つまり、堀を造れない魔王の道の上こそ、敵勢の最大の弱点と言えよう。ここを中心に敵陣の中央突破を図り、一気呵成に勝負を決めようというのが、我らの作戦である」


 フランク公が最後にまとめた。敵は魔王の道を中心に横長に布陣しており、その真ん中を突破できれば戦況は一気に傾く。


「しかし……それは敵もわかっているのでは? 敵勢の中央に突撃するというのは、どうも無謀では……」

「だからこそ、癪ではあるが……ポメレニア辺境伯の第二の策を用いる。敵が魔王の道から動けぬことを使うのだ」

「なるほど……?」

「我が国の得意技よ。しかと見ておれ」


 早速、フランク公はその策の準備にかかった。


 ○


 翌日の夜。日が暮れた頃、それは唐突に始まった。


「陛下! 我が方の陣地が、敵の投石機の攻撃を受けています!」

「な……何だと!? て、敵にどうして投石機などがあるのだ! 準備している時間はなかろう!」


 ランゴバルド国王アストルフォ――あまり統率力がなく、今回の裏切りも家臣に突き上げられて嫌々行ったものである。しかし国王たるからには相応の知識はあった。投石機がわずか一日で組み立てられるはずがないということも知っている。


 その常識に反して、フランク公軍は魔法で迅速に攻城兵器を組み立てることに長けており、こうしてランゴバルド王の意表を突いたのである。


「敵は対空炸裂弾を使っている模様! 我が方の陣地が吹き飛ばされています!」

「す、すぐに兵を散開させるのだ! 急げ!!」


 開戦劈頭、ランゴバルド王国軍は大混乱に陥った。最低限の統制は取れているが、その対処は逃げることくらいしかなかった。

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