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不滅の元魔王ヴィルヘルミナ~討伐されたはずの吸血鬼のやり直し戦記~  作者: Takahiro
第四章 フロレンティアの戦い

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布陣

 偵察隊が帰ってきた。ランゴバルド王国軍およそ一万三千は魔王の道を塞ぐように布陣。堀や柵、それに逆茂木を多数設置し、どっしりと待ち構えている。北方帝領の軍勢はそれから二キロばかり離れた場所にとりあえず布陣したが、指揮する者はおらず、膠着状態にあった。


 ポメレニア辺境伯アドルフはヴィアドルス宮中伯コンラートの陣を尋ねていた。宮中伯もそれなりの大貴族なので、千五百の兵を連れてきている。


「宮中伯殿下、殿下に総大将になっていただくことはできませんか?」

「そ、それは……無理だという話になったではないか。会議の進行役を押しつける者はいても、私の命令を聞く者などおらん……」

「私などとは違い、宮中伯殿下は比較的諸侯に好かれています。それでも叶いませんか?」

「すまないが、無理そうだ……。私よりも多くの兵を動かせる諸侯もいるのだ」


 ヴィアドルス宮中伯は権威の上では総大将たるに相応しいが、実力が伴っていなかった。フランク公、ラエティア大公、オストマルク辺境伯などは、彼よりも多くの兵を動員している。


「や、やはり、全体を指揮する者がいなければ、この戦いは厳しいか……?」

「ええ。統制の取れていない軍隊など、群衆と何ら変わりありません」

「卿ではダメなのか……?」

「私は敵が多いのです。私の命令に従ってくれる者は少ないでしょう」


 ポメレニア辺境伯は実力の上では総大将に相応しいが、権威はそれほどでもないし、初代アドルフが勇者だというだけで北方帝領最大の諸侯になったことを、多くの諸侯は四百年経った今でもよく思っていない。


 そういうわけで、北方帝領の諸侯をまとめられそうな人材はやはりいないというのが結論である。


「し、しかし……どうするのだ? バラバラに攻めかかっては、勝てない気がするが……」

「ええ、その通りでしょう。敵の一万三千に対し二万と兵力では勝っていますが、敵は守りを固めております。敵の守りは堅牢であり、統制が取れていたとしても、容易に勝てる兵力差ではありません」


 守勢を固める敵に攻撃するには、ポメレニア辺境伯の経験では最低でも倍の兵力が必要である。しかも今回の敵はかなり堅牢な野戦築城を行っており、条件はもっと悪い。


「か、勝てるのか……? 卿ならば勝てる策があるのだろう……?」

「私の手持ちの四千だけでは厳しいでしょう。ただ、何人かの諸侯に協力を得られれば、活路はあるかと」


 全体を統率するのは最早諦めた。話のわかる一部の諸侯だけで勝つつもりなのである。


「そ、それは誰だ? いくらでも仲介するぞ」

「では、フランク公カールとヴァルシュヴァ伯フリーデに話を通していただければ」

「な、何と……。フランク公と協力するのか……? それにヴァルシュヴァ伯も……あまり良い記憶がないが……」

「フランク公軍の工作能力と、ヴァルシュヴァ伯軍の突撃力。これは実に頼りになるものです」


 フランク公カールはポメレニア辺境伯に匹敵する力を持って帝国西方の雄であり、昔から仲が悪い。そしてヴァルシュヴァ伯フリーデは、二年ほど前のブロベルクの戦いで辺境伯の本陣まで攻め入り、そこにいた辺境伯と宮中伯を殺しかけた英傑である。


「やってくださいますよね、宮中伯殿下?」

「も、もちろんだ……。すぐに用意をしよう」


 ということで、ヴィアドルス宮中伯はまずフランク公から謁見の許しを得ることに成功した。彼の政治的手腕は確かである。ポメレニア辺境伯は早速、宮中伯と共にフランク公の本陣を訪ねた。


「――面会は許したが、貴様なんぞに手を貸すつもりはないぞ」


 会話劈頭から、フランク公カールはまるで協力するつもりがない。頑固な老人である。


「ここで勝てなければ、我々は全員、北方帝領に帰還できません。そんなことを言っている場合ではないのでは?」

「そんなことはわかっておるわ。だが貴様の命令を聞く気はない」

「でしたら、私が殿下の命令を聞くのであればよいのでは?」

「……何だと? それなら構わんが、貴様はどうせ策を用意しておるのだろう?」

「無論です。策には従っていただかねば、勝てません」

「癪に障る奴め。それでは結局貴様に従っているも同じではないか」

「考え方によってはそうかもしれませんね。しかし、策を考える者と実際に指揮する者が別なのは、よくある話では?」

「それはそうだが……」


 辺境伯にしては珍しく正論。参謀と将軍が別なのは至って普通のことである。これにはフランク公も言い返せなかった。


 と、その時、エルフのシルヴァが割って入った。シルヴァは元々フランク公の客将である。


「ポメレニア辺境伯軍は我々の中で最大の兵力を持っています。殿下が辺境伯をこき使えば、兵力は八千近く。悪くない兵力です」

「確かに、勝てない兵力差ではない。だがそういう問題ではないのだ」

「ポメレニア辺境伯に頼らず勝てる見込みがあるのならそれでいいでしょうが、そうでないなら勝手に死んだ愚か者になってしまいます」

「……言うではないか。わかった。ポメレニア辺境伯、貴様は儂の部下になってもらうぞ。よいな?」

「私の策を取り入れてくださるのなら、もちろんです」


 かくして辺境伯はフランク公を協力させることに成功したのである。

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