第87話 100%
旧市街、南通り。
ゼルガードが三機。
無機質な動き。
迷いがない。
一拍の遅れもない。
刃の軌道が最短。
滑走角が正確。
本当の兵器。
「くっ……!」
エレジア・パールティアラが踏み込む。
白刃が交差。
装甲を裂く。
だが二機目が即座に横から入る。
躊躇がない。
仲間を庇わない。
撤退もしない。
ただ、処理する。
一機、破壊。
二機目、撃破。
三機目。
時間がかかる。
第1部隊が支援する。
それでも押される。
迷いがないから。
心がないから。
そして。
感じる。
遠く。
赤。
何かが変わった。
鼓動。
重い。
圧が違う。
共有60%の奥で、震えが走る。
「……レイ?」
違う。
これは。
残響ではない。
何か別の――
Ωの鼓動。
空気が歪む。
フィーナの心臓が早くなる。
「あれは……何?」
⸻
青。
前方。
赤。
見えない。
いや、見えている。
反応もできている。
だが、遅い。
一手。
常に一手。
防ぐ。
受ける。
逸らす。
反撃が届かない。
100%。
波形が読めない。
揺れがない。
残響がない。
そこに心がない。
「ルク……」
青が滑る。
赤が横に現れる。
衝撃。
装甲が裂ける。
オルクシアが後退。
共有60%が軋む。
フィーナの波形が遠くで揺れる。
「くっ……!」
攻めたい。
だが攻められない。
追いつかない。
それでも立つ。
⸻
100%。
静かだ。
音がない。
残響がない。
世界が透明。
軽い。
動く。
最適解。
最短距離。
青を撃つ。
回避される。
角度修正。
再度撃つ。
当たる。
敵。
味方。
識別は可能。
だが意味がない。
排除対象。
処理。
撃つ。
踏み込む。
防ぐ。
撃つ。
そこに怒りはない。
そこに記憶はない。
レイ。
その名の重さは消えている。
ミーファ。
ネスト。
何も響かない。
ただ演算。
ただ動作。
ここにルクはいない。
兵器だけがいる。
⸻
赤が踏み込む。
青が弾かれる。
白が遠くで揺れる。
旧市街が崩れていく。
完全接続。
それは。
到達してはいけない境地。




