第86話 ルク
旧市街地、中央広場。
崩れた鐘楼。
割れた石畳。
白は別区画で戦っている。
残響共有は続いている。
60%。
安定。
だが、フィーナの波形が遠くなる。
第1部隊を立て直すため、別方向へ展開。
白と青は分断される。
共有は切らない。
繋いだまま。
⸻
レイの前に、赤。
GRASP-Ω《アストラム》。
黒い内部フレームが露出している。
赤い装甲が朝日を反射する。
「ルク」
レイの声。
わずかに震える。
赤が止まる。
アストラムの視線が固定される。
「……レイ…」
低い。
だが確かに。
「無事だったか」
レイは言葉に詰まる。
「ルク、俺は……」
出ない。
言葉が。
ルクが言う。
「問題ない、だろ?」
いつもの調子。
揺れない。
レイは頷く。
「……ああ」
短い。
ルクは続ける。
「気にすんな」
「俺たちは兵器だ」
赤が一歩進む。
「拾ったやつが使う」
変わらない理屈。
変わらない声。
レイは首を振る。
「違うんだ、ルク」
「俺たちは――」
言葉が追いつかない。
共有60%。
フィーナの波形が遠くで揺れる。
ルクが遮る。
「レイ」
短い。
冷たい。
「行くぞ」
その瞬間。
アストラム内部。
Ω表示が点灯する。
警告なし。
制御解除。
接続値、上限突破。
70。
80。
90。
レイの視界が震える。
共有60%が軋む。
ルクの波形。
初めて。
異質。
100%。
完全接続。
アストラムが変わる。
動きが一段、深くなる。
重さが消える。
赤が消える。
次の瞬間、青の横。
衝撃。
オルクシアが吹き飛ぶ。
石壁を砕く。
レイの脳内に衝撃が走る。
だが、残響はない。
100%。
そこには――揺れがない。
完全な兵器。
レイが呟く。
「……ルク」
赤が振り向く。
視線は冷たい。
だが。
奥底に、わずかに何か。
戦いが、始まる。




