第85話 来る
旧市街地。
石畳。
崩れかけた建物。
狭い通路。
高低差。
滑走兵器には不利な地形。
だが、守る側には使える。
フィーナは前席で息を整える。
単独接続10%。
静か。
だが遠方。
地面が震える。
「接敵!」
第1部隊が前に出る。
REVが滑走。
砲火。
衝突音。
赤が視界に入る。
アストラム。
その後方、ゼルガード。
第1部隊が迎撃する。
だが。
速い。
重い。
赤鬼部隊が一線を裂く。
一機、二機、三機。
装甲が割れ、機体が倒れる。
通信が乱れる。
「左翼崩れます!」
「持ちません!」
フィーナの喉が締まる。
残響。
重い。
怒号。
恐怖。
断末魔。
耳鳴りのように広がる。
「フィーナ」
レイの声。
冷静。
「来る」
赤が、こちらを見る。
ルク。
あの動き。
迷いのない滑走。
フィーナは息を吸う。
「共有開始」
レイが即座に応じる。
LNS接続。
残響共有。
20。
30。
40。
50。
60。
安定。
波形が重なる。
重い。
だが、落ちない。
二人で抱える。
一人より、軽い。
視界が澄む。
赤が迫る。
青が横に出る。
オルクシア。
白が続く。
エレジア・パールティアラ。
青と赤が交差する。
金属が火花を散らす。
衝撃。
旧市街の石壁が砕ける。
「……ルク」
レイの声。
初めて、感情が混じる。
赤が止まる。
アストラムのカメラが青を捉える。
「……レイ…?」
わずかな間。
だが、確かに。
声が届いた。
旧市街地に、赤と青が立つ。
戦場が、息を止める。




