第82話 整理の時間
カルネア連邦 中央観測室。
円形スクリーンに映る赤い数値。
80%
帝国領、廃棄区画外縁。
単独接続。
振幅――ゼロ。
議場がざわめく。
「上限突破」
「安定維持」
「100%到達の前段階では――」
言葉が交錯する。
中央。
グレイヴス・ウィリオ・カルネアが立つ。
「静かに」
一言で止まる。
スクリーンが切り替わる。
極秘ファイル。
LNS強制遮断プロトコル
逆共鳴崩壊波形
位相破断干渉式
淡々と説明される。
「100%に到達した場合」
「維持は不可能です」
「破壊は可能」
言い切る。
議場の空気が落ち着く。
恐怖はない。
計算だけ。
「問題は到達そのものではありません」
グレイヴスは続ける。
「誰が到達するか」
帝国。
単独突破。
共和国。
共有拡張。
思想が違う。
到達の意味も違う。
「均衡は崩させない」
断定。
「監視は継続」
「介入は最小限」
「壊す準備は維持」
スクリーンの80%が消える。
記録保存。
「整理の時間です」
穏やかな声。
「慌てる必要はない」
「まだ、80です」
一拍。
「ですが、もう80です」
会議は解散する。
⸻
深夜。
代表執務室。
照明は落とされている。
グレイヴスは一人、窓のない壁の前に立つ。
都市の光は見えない。
端末を起動する。
暗号回線。
接続。
向こう側の姿は映らない。
声も加工されている。
「状況は確認済みかい」
グレイヴスは穏やかに問う。
数秒の沈黙。
「確認済み」
短い応答。
「帝国は80へ到達」
「共和国は共有拡張」
グレイヴスは椅子に腰掛ける。
指先が机を軽く叩く。
「均衡はまだ保たれている」
「だが、動きが速い」
沈黙。
そして、微笑む。
「1つ手を打とう」
向こう側が問う。
「どのように」
グレイヴスは視線を落とす。
端末に映る二つの波形。
「戦争だよ」
通信が切れる。
部屋は再び静かになる。
カルネアは焦らない。
だが。
動き始めている。




