第81話 気づいているさ
廃棄区画外縁。
赤と黒が正面で噛み合う。
80%。
振幅ゼロ。
アストラムは安定している。
ネストは黒槍を押し返しながら言う。
「ルク・セルド」
通信は開いている。
「お前は兵器ではない」
即座に返る。
「兵器だ」
衝撃。
地面が砕ける。
ネストは踏み込む。
「兵器は自ら判断しない」
「命令で動く」
赤鬼の刃が迫る。
ネストは続ける。
「Ωは命令で起動したのか?」
沈黙。
赤は止まらない。
ネストは確信する。
「違う」
「お前が選んだ」
「それは兵器ではない」
80%。
出力は揺れない。
振幅もない。
ルクは平坦に言う。
「選んだ」
ネストの目がわずかに開く。
「ならば尚更だ」
「人間が兵器になるな」
黒槍が赤の装甲を裂く。
至近距離。
「レイは揺れた」
「お前も揺れる」
「だから人間だ」
ルクは即答する。
「知っている」
ネストの呼吸が止まる。
赤鬼の刃が押し込まれる。
「知っている」
もう一度。
「だから兵器でいる」
黒槍が弾かれる。
ネストは最後に叫ぶ。
「気づけ、ルク・セルド!」
「お前は最初から――」
赤い刃が迷いなく走る。
黒槍ごと貫く。
コアへ一直線。
衝撃。
ネストの声が途切れる。
機体が停止する。
黒槍が地に落ちる。
赤鬼は引き抜く。
振り返らない。
通信を開く。
「任務完了」
アインスの声。
「……そうか」
短い満足。
通信が切れる。
ルクは滑走を開始する。
80%。
Ω表示が赤く灯る。
振幅ゼロ。
夜風の中、低く呟く。
「気づいているさ……」
モニターを見る。
Ω。
80%。
「……だから」
表示がゆっくり65へ戻る。
だが軌跡は残る。
赤鬼は帰投する。
迷いなく。
兵器の道を。




