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第63話 完成品

赤鬼部隊 格納区画。


整備終了後。


ゼルガードの一機が、静かに固定具に収まっている。


コックピットが開く。


降りてきたのはDC2nd。


灰色のリンクスーツ。


目は澄んでいる。


感情はない。


ミーファが歩み寄る。


「識別番号」


「08-03」


短い。


「損耗は」


「軽微」


「精神負荷」


「許容範囲」


単語。


必要最小限。


ミーファは一瞬、言葉を探す。


「……怖くないの?」


沈黙。


数秒。


「質問の意図が不明」


DC2ndは瞬き一つしない。


「任務完遂」


肯定。


それだけ。


ミーファは息を呑む。


「迷わないの?」


「不要」


即答。


「後悔は」


「概念未定義」


ミーファの喉が詰まる。


「君は……」


言いかけて止まる。


何と言えばいいのか分からない。


DC2ndが続ける。


「次任務待機」


それだけ言って歩き去る。


背筋は真っ直ぐ。


揺れない。


その様子を、


少し離れた場所からルクが見ている。


赤い影。


無言。


視線は一瞬だけミーファとDC2ndに向けられる。


だが。


何も言わない。


興味もないように。


そのまま背を向ける。


ミーファはその背中を見つめる。


「……完成品」


小さく呟く。



夜。


帝国前線基地 居住区。


静かな廊下。


ミーファは資料を抱えて歩いている。


赤鬼部隊の損耗率。


補給計画。


次戦域の分析。


足が止まる。


ルクの自室前。


扉は閉じている。


中から、声。


小さい。


「……レイ」


一瞬、聞き間違いかと思う。


だが、確かに。


もう一度。


「レイ……」


掠れた声。


兵器の声ではない。


ミーファの指先がわずかに震える。


壊滅した第8の最後の夜。


隊員の名を呼んだ声。


あれと似ている。


だが。


扉は開かない。


中で何が起きているのか分からない。


赤鬼部隊の隊長。


戦場で揺れない男。


「……人間じゃない、はずでしょ」


ミーファは小さく呟く。


返答はない。


廊下の灯りが、静かに揺れる。


赤鬼は強い。


赤鬼は迷わない。


だが。


夜だけは、


何かが聴こえる。

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