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第64話 俺だ

翌朝。


赤鬼部隊 ブリーフィングルーム。


作戦説明は終わっている。


DC2ndは整列。


表情なし。


揺れなし。


命令待機。


ルクは端末を閉じる。


「以上」


それだけ。


ミーファが前に出る。


「隊長」


ルクは視線だけ向ける。


「昨夜のことをお聞きしたい」


沈黙。


空気が固まる。


「……何の話だ」


平坦。


「“レイ”とは、誰ですか」


一瞬。


ほんの一瞬だけ。


ルクの視線が止まる。


だが怒らない。


ただ、わずかに苛立つ。


「関係ない」


ミーファは引かない。


「隊長が夜に名前を呼ぶ存在です」


「無関係ではありません」


ルクは視線を逸らす。


「レイは」


短く息を吐く。


「俺だ」


ミーファの眉が動く。


「……どういう意味ですか」


ルクは答えない。


ミーファは言う。


「仲間ですか?」


ルクの視線が鋭くなる。


怒りではない。


拒絶。


「兵器にとって過去は不要だ」


「以上」


ルクは立ち上がる。


「出撃する」


会話は終わり。


赤鬼部隊が動く。


ゼルガード十二機。


揺れない。


DC2ndは完璧だ。


ルクも揺れない。


だが。



数時間後。


ルクは出撃中。


格納区画。


ミーファはアインスを見つける。


「博士」


アインスは振り向く。


「珍しいね、参謀殿がこちらへ来るとは」


「レイとは誰ですか」


直球。


アインスは微笑む。


「キミ、デリカシー無いね」


「DC1st」


「ルクと同型の初期DC個体」


「実験的プロトタイプ」


ミーファは息を呑む。


「では」


「生きている可能性は?」


アインスは首を傾げる。


「不明」


「戦場で行方不明」


「回収不能」


軽い。


「だが、ルクの内部には残っている」


ミーファは睨む。


「人間だからですか」


アインスは笑う。


「どうだろうね」


一拍。


「DC2ndは揺れない」


「感情干渉を削った完成品」


「だがDC1stは違う」


「揺れる欠陥品」


ミーファは言う。


「それを失ったから、あの人は」


アインスは遮る。


「隣が消えた」


「兵器は隣を必要としない、と彼は言う」


眼鏡を押し上げる。


「だが本当に不要なら、名前など呼ばない」


沈黙。


ミーファはゼルガードを見る。


灰色の群れ。


完璧。


揺れない。


「彼らは完成品です」


アインスは頷く。


「そう」


「そしてルクは未完成だ」


静かに。


「だから私はΩを与えた」


「意志によって限界を超える機構」


ミーファが問う。


「使うと思いますか」


アインスは遠くを見る。


「今は使わない」


「だが」


「人間が限界に触れたとき、兵器はどうなると思う?」


答えはない。


遠方。


赤い機体の戦闘ログが届く。


撃破数増加。


損耗ゼロ。


赤鬼は今日も勝つ。


揺れない。


だが。


夜になれば、


人間かもしれない。

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