第52話 俺は兵器だ
夜の平原。
赤が走る。
GRASP-α《アストラ》。
接続値 50%。
警告表示は無視。
共和国REVが次々と崩れる。
滑走。
踏み込み。
深い斬撃。
「遅ぇ」
ルクが吐き捨てる。
踏み込みが荒い。
出力は最大。
残響は押し潰す。
通信。
「帰投命令」
「……今行く」
その瞬間。
黒が割り込む。
衝撃。
アストラが大きく後退する。
二本の黒槍。
GRASP-09《レナード》。
両腕装備。
ネスト・アーヴィン。
「乱れている」
低い声。
ルクが笑う。
「テメェか」
刃が交差する。
火花。
地面が裂ける。
ネストの接続値 18%。
静か。
安定。
「50か」
「限界域だ」
ルクは踏み込む。
赤が黒へ突っ込む。
ネストが受ける。
「レイは人間だ」
唐突。
ルクは即答。
「兵器だ」
黒槍が振るわれる。
重い。
正確。
「人間だから死んだ」
一瞬。
刃が止まる。
ルクの目が揺れる。
「死んでねえ」
押し込む。
50%。
波形が荒れる。
残響が濁る。
「お前は揺れている」
「揺れてねえ」
叫ぶ。
「俺は兵器だ」
レナードの二槍が交差する。
踏み込みの深さが違う。
技術が違う。
黒が赤の間合いを奪う。
「お前も人間だ」
断定。
ルクの刃が空を切る。
その一瞬。
隣の空白が、視界を掠める。
レナードの槍が走る。
アストラの胸部を貫く。
警告表示が赤に染まる。
《中枢損傷》
衝撃。
アストラが膝をつく。
ネストは追わない。
距離を取る。
そして言う。
「兵器は隣を必要としない」
静かに。
そのまま帰投。
黒が夜へ消える。
⸻
平原に赤が残る。
動かない。
コックピット内。
警告音。
ルクは歯を食いしばる。
呼吸が荒い。
波形は乱れている。
だが。
「違う」
小さく。
「兵器だ」
沈黙。
アストラは答えない。
「俺は兵器だ」
繰り返す。
「隣なんかいらねぇ」
視界が揺れる。
残響が濁る。
それでも。
否定する。
何度も。
何度も。
夜は静かだ。
赤は、沈黙したまま。




