第53話 赤鬼
帝国、セルド研究施設。
搬入区画。
十二の機体が並ぶ。
灰色の装甲。
識別番号のみ。
GRASP-08《ゼルガード》。
量産戦術特化型。
接続値 20%固定運用。
上限ロック。
揺れを許さない設計。
その前に、十二人。
DC2nd。
無表情。
視線は正面。
命令待機。
ルクは静かに立つ。
負傷は癒えていない。
だが背筋は伸びている。
副官が言う。
「実験部隊へ配属。隊長直轄です」
ルクは一体の前に立つ。
「発砲」
即座に銃口が上がる。
引き金が引かれる。
標的が砕ける。
迷いなし。
感情なし。
揺れなし。
20%。
安定。
完璧な兵器。
ルクは思う。
――兵器とは、これだ。
隣を必要としない。
残響に耳を傾けない。
引き金を引くために在る。
俺も。
こうなればいい。
その瞬間から。
ルクの目から光が消える。
⸻
格納区画。
赤い新型。
GRASP-Ω《アストラム》。
アストラの正統進化。
接続値上限65%。
兵装は同一。
双刃。
高出力。
だが内部に異なる機構。
Ωシステム搭載。
接続者の意志による突破機構。
アインスが言う。
「限界を越えることも可能だ」
「興味は?」
ルクは機体を見上げる。
「ねえよ」
即答。
「俺は兵器だ」
65も、突破も、どうでもいい。
撃てればいい。
斬れればいい。
スコアを出せればいい。
アインスは柔らかく笑う。
観察は続いている。
⸻
実戦。
赤が滑走する。
後方、十二のゼルガード。
整然。
正確。
命令のみ。
共和国REVが崩れる。
赤が深く踏み込む。
揺れはない。
あるいは。
押し殺している。
撃破数が増える。
制圧数が増える。
スコアが積み上がる。
「赤鬼」
誰かが呼ぶ。
ルクは振り返らない。
鬼は振り返らない。
隣はない。
部下はいる。
だが隣はいない。
夜。
格納庫。
アストラムが沈黙する。
ルクはリンクスーツを脱がない。
鏡を見る。
何も映らない目。
「兵器だ」
確認のように。
繰り返す。
背後で、ゼルガードが整列する。
十二の揺れない兵器。
赤鬼部隊。




