第二十四話「砂被り姫の里帰り」前編
ロゼッタたち四人を迎えたのは、当主アレクと、次期当主のアスワンだ。
姉に向けてアスワンは駆け出し、彼女は飛びついてくる彼を受け止める。
「久しぶりだね、アスワン。元気みたいでお姉ちゃんほっとしたよ!」
ぎゅっと抱きしめれば、幼児特有の暖かさと匂いで、心が安らぐ。多くの言葉を交わす必要もなく、互いの安堵が伝わってきた。
久方ぶりの家族との再会を、ロゼッタはぎゅっと噛みしめる。
「ロゼッタ、家族との再会が嬉しいのはわかるけど、本題は別よ。カエルム伯、どこか落ち着ける、人のいない場所がおありかしら?」
「ええ。私の執務室へどうぞ。アスワン、お前はあちらの子の相手をしておやりなさい」
マドレーヌの問いかけに、アレクは答えた。そして息子に役目を与える。父の意図を汲んだのか、それとも単純に同年代の少年を姉が連れてきてくれたからなのか、飛び跳ねるようにティーベの手を取って駆け出した。
「……確認だが、あれは誰の子だ?」
「とあるメイベリアン人の子どもですが、私たちは先日まで一切のつながりがなかった人です」
マドレーヌからも似たような質問があったが、父の方はだいぶ曖昧な聞き方だ。
さすがに娘をそのような話でからかう気にはなれなかったらしい。
通された執務室には、来客用のソファがあった。そちらに座ったマドレーヌとロゼッタ、カイロは後ろに立ち、対面にアレクが座る。
「それでメイベリアンに関して、中央で何か動きが?」
「逆よ。ついに、メイベリアンのほうから帝国へ侵攻しようとしているとか」
きっかけは何か、はっきりとはしていない。
ただ、メイベリアンとの小競り合いは年々減少し、不干渉が続いていた。だが、監視の目を緩めたことも、緩められたこともない。常に互いを牽制しあってきた。
しかし、帝国の兵力が東より西に集中しているのはまた事実だ。特に帝国の最高戦力とされるシャルル大将軍は、西での戦いにかかりきりだ。
むしろ、それが突然先日西側にやってきたことが、メイベリアンを刺激したのか。
「すぐに来るわけではないだろう。全く、厄介なことになった」
「だからそうなる前に、私たちが来ました」
答えたのはマドレーヌではない。
むろん、ロゼッタだ。
ゆっくりとアレクの視線が正面から少しずれる。今はもう娘ではない、一人の考古学者がそこに座っている。
「それは、メイベリアンを先んじて排除するということか?」
「いいえ。全ての争いを――メイベリアンとの正式な和平実現で、終わらせるんです!」
数百年に渡ってできなかったことをするために、彼女らはここにきた。
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