第二十話「砂被り姫のフィールドワーク③」中編
結果は、予想を上回る。
十数体目になるオーディムの単眼を叩き切ったシャルルは、疲れた様子もなくカイロのほうへ振り返る。
「ふむ、これで第八階層も突破というわけだな」
「そ、そうですね」
カイロは曖昧に頷きながら、防衛者のいなくなった絡繰りを起動した。
本来なら、古代迷宮の攻略を生業とする者たちが徒党を組んで挑んでも三日という限界が来てしまうはず。その旧帝都攻略が、たった一人の軍人によって、一日で既存の階層全てが突破された上、さらには三階層分進もうとしていた。
「それで、この状態でも発掘品なんかは見つかるものなのか」
「ええ。むしろ旧帝都は突発的な遷都や移転が行われた結果、異民族の侵略で失われてしまった貴重な資料・絵画が残っているんです」
「確か、帝都博物館にも何点か飾られているものがありましたよね」
第六階層までは、すでに既知の領域だった。だが、今回シャルルによって二階層分の地図が出来上がった。絡繰り解除の位地は変わるとは言え、構造それ自体が大きく変わるわけではない。
次からは、他の冒険者たちも攻略が楽になるだろう。
「ここに来るまでの間に通った場所では見つけられませんでしたけど、旧帝都の地図が正しいなら、この第九階層には旧帝都美術館があったはずです」
「ふむ。つまりそこまでいけば、掘り出し物があると言うわけか」
遺跡の発掘とは違い、古代迷宮は様々な遺物が放置されていることが多い。時間が停まったかのように当時の遺物が残されている。
冒険者たちは宝飾品や貴金属なら回収してくれるが、残念ながら絵画や本などは手荒に扱い、時には焚火にくべて燃やしてしまうろくでなしもいる。
「当時の公文書館があったのは十階層付近……さすがにそこまで行くのは、きついですね」
「俺はまだ余裕だぞ? ただ、君たちのほうが辛そうだな」
「はは……おっしゃる通りで」
カイロの言葉にシャルルが問いかける。オーディムは通路上にいるばかりではない。
突然瓦礫の裏や、遺物の隙間から姿を見せることがある。襲われにくいとは言え、気の抜けない道中、カイロたちの神経を削っていた。
「新しい階層に到達できたことであるし、今日はここまでにしよう」
そう言いながら近くに現れたオーディムの額に斧を投げつけて一撃で仕留める。彼の対オーディム戦も、だんだんと洗礼されてきていた。
「よろしいのですか。攻略が皇帝陛下からのご指示では」
「暇つぶしにやってみろと言われただけだ。義務ではない」
「わかりました。では、帰還いたしましょう」
「……カイロさん、シャルル閣下とすっかり仲良くなったなぁ」
先ほどからずっとカイロはシャルルに遺跡の解説をしたり、彼が拾ったものを調べたり、ずいぶんと楽しそうだ。
同性の友人、というのはやはり違うのだろうか――肩を並べて笑う二人の後姿を見るロゼッタは、少し眉をひそめた。
「まぁ、カイロさんが楽しそうだし、いっか」
荷物を担ぎ直したロゼッタの視界の端に、白い影があった。
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