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第十九話「砂被り姫のフィールドワーク②」後編



「――というわけで、現在この旧帝都は複数の層に分かれた同心円状になっています」

「各層ごとに存在する絡繰りを解除することで層が回転し、中央扉から直線の道ができるようになります」

「現在、古代迷宮(ラビリンス)攻略のための傭兵団による突撃が四度、旧帝都調査委員会発足の騎士団が十一度、いずれも全十二階層中、六階層までの段階で中断しています」

「突入開始から三日が立つと全てが元に戻ってしまうようで、他の個人攻略者ももちろん、全員時間切れで諦めています」


 旧帝都の状況については、ある程度事前に調べが付いた。何せ四百年間も手付かずであるには理由がある。

 それを調べたところ、とんでもない錬金術(アルケミー)製の絡繰りが、冒険者たちの道を阻んでいた。


「よ、よくわかった。現状を説明してくれと頼んだら、まさか旧帝都の設立に関する話しまで遡られるとは思わなんだが……」


 逆に言えば、それだけ二人が念入りに準備してきたことに他ならない。


「しかし、もともと非常時に敵を防ぐための機能が、そんな変質をしてしまうとはな」

「術式の経年劣化と呼ばれる現象ですね。鉄がいずれ錆びるように、術も錆びるんです」

「だが、絡繰り解除の仕掛けは毎度場所を移動するとは、そのあたりはきちんと機能しているところが、何とも皮肉よな」

「本来の目的は、ある程度絡繰り解除で疲弊させたところを、正面突撃で粉砕する、ということを目的に設定されていたらしいのですけれど」

「今では冒険者を阻む硬く高い壁であるのか」


 今ここに、冒険者に該当する人物はシャルル一人だけだ。彼がどれほどの実力なのか知らないが、これまで延々と攻略できていなかったものを、一人でどうにかできるのか。


「明日の発掘開始だが二人には道案内を頼みたい。出てくる敵は全て俺が対処するゆえ、安心して案内をしてくれ」

「もしかして、本気で単独攻略を行うつもりですか」

「単独ではない。卿らがいる」


 そういう問答ではないのだが、本人はさも当然のように答えた。

 彼が率いる部下たちが、シャルルを支持する理由はこれなのだ。自分の実力を把握したうえでの信頼――大丈夫だと信頼しきった眼光に、答えなければと思わせてしまう。


「あの、私たちは戦いには素人です。辺境伯の娘ではありますが、その、神聖刻術(ハイエグリミー)の心得など全くなく……」

「僕は一骨董品店の店主です。なおさら、戦いなんて」

「だから問題ない。古代迷宮(ラビリンス)のオーディムは、戦おうとする者に寄って来る。卿らの戦意がなければないほど、我が負担は軽くなる」


 彼にとって、オーディムと戦うこと自体に何の負担もない。道案内の二人が襲われないと言うことだけが重要だった。


「安心せよ。俺は誰よりも強いから、今の地位にいるのだ」


 顔を見合わせたロゼッタとカイロは、肩をすくめてから頷く。


「閣下にお供させていただきます」


 二人の出した答えに、シャルルは子どもっぽい笑みを浮かべた。






少しでも気に入っていただけたら幸いです。




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