表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/100

第十八話「砂被り姫のフィールドワーク①」後編



 旧帝都への出張が決まったとき、まず疑問に浮かんだのは、今回の発掘調査を主導するという軍人だ。

 同じ帝国でも、西と東では気候・環境・太陽の登る時間が違えば暮らし方や考え方も違う。特に温暖で湿潤な気候の東側と、乾燥した平原と砂漠の広がる西側では、育つ植物も動物を全く違う。


「その軍人さんは、帝国騎士の生まれの一人で、十三歳で初めて戦場に立ち、敵将の首を上げたそうだ。そこから西側南北の戦場に立つたびに武勲を上げ、今年で二十になる七年の間に上げた大将の首は八つ、将校首は無数なんだって」


 結果、戦うたびに階級を上げ、それまで下級貴族にも劣る帝国騎士だった家系は伯爵になり、帝国大将の階級へと登り詰めた。

 皇帝からの覚えも厚く、皇帝の孫娘を含め社交界の淑女たちからの熱い視線を一身に受ける美丈夫でもあった。皇族の権勢と温情で出世したなどと陰口を叩かれることもあったが、何より旗下の兵士を納得させるだけの力があった。


「世の中にはすごい人がいるんですね。父は辺境伯ですから、かなり強いです。父とその人では、どっちが強いんでしょうか」

「それを証明される日が来ないことを祈るよ、僕は」


 メイベリアンとの戦いはもちろん、都市から離れるほどにどうしてもならず者が増える。辺境伯は地方の治安と平和を司る身分であり、その役目を果たすにはどうしたって十分な武力が必要となる。

 アレクはメイベリアンの脅威を退け、そして停戦協定を結ぶだけの力量を見せつけた。三百年に渡る紛争を終わらせるだけの者に、実力がないわけはなかった。


「とりあえず古代迷宮(ラビリンス)の攻略に関しては心配いらなさそうだ。正直僕は、荒事はあまり得意じゃない」

「え? でもシュテサルの拳を結構きれいに受け止めてましたよね」

「あ、あのくらいはできるさ。でも古代迷宮(ラビリンス)の《オーディム》を相手にするのは、何の能力もない人間には無理だよ」

「カイロさんも、そのあたりは普通の人間ですものね」


 古代迷宮(ラビリンス)は、そこらの遺跡とは勝手が違う。古代の錬金術(アルケミー)神聖刻術(ハイエグリミー)の影響か、本来の遺跡としてありえない構造になっている。

 そんな異常空間を、古代迷宮(ラビリンス)と呼ぶようになった。


「オーディムと戦えるのは、特別な力を持つ人だけだから」

「私は、古代迷宮(ラビリンス)に潜ったことはないので遭遇経験がありませんが、やはり相当に危険、なんですか?」

「……まだメイベリアンの集落にいたころ、一度だけ入ったことがあったんだ。その時は、母さんと、村の戦士たちが助けてくれて何ともなかったけど、さすがに怖かったな」


 彼がメイベリアンの集落にいたのは十年以上前の話だ。相当怖い思いをしたのか、無意識であろうが、指が震えていた。

 改めて、ロゼッタはこの依頼の危険性を理解する。


「やっぱり、断りませんか? 危険すぎる気がして」

「いや、皇族にも関わりある依頼だから、断ることはまず許されない。受けるしかない」


 これが皇族貴族の道楽であったとしても、一市民に拒否権などない。

 言われたことは忠実にこなし、彼らの功績を作り出さなくてはならない。


「逃げられないなら、全力で挑むだけさ」

「わかりました。やってやりましょう!」


 軽く握った拳をぶつけ合う。この一か月余り、確かに二人は互いを信頼していた。

 たとえ危険な場所に赴くとわかっていても、相棒がいれば、大丈夫だと。





少しでも気に入っていただけたら幸いです。




評価、感想、ブックマーク、どんなものでも大歓迎ですので、お気軽にどうぞ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ