第十六話「砂被り姫の報告会」後編
その年の考古学協会主催の学会は、帝都の劇場を借りての開催となった。
残念ながらやはりメイベリアン遺跡に関する報告書を上げることはまだできておらず、今回は他の研究者たちの話を聞くのが主となるだろう。
「帝都かぁ、久しぶりだな」
「ロゼッタさんは、帝都に来たことがあったんだ」
ロゼッタとカイロは、マドレーヌの馬車に揺られて国の東から中央へと足を運んだ。
辺境伯といえども貴族であるロゼッタには、中央へ出向いたことがあった。それは五年ほど前に帝国の建国祭に訪れるためであり、それ以来の訪問だ。
「マドレーヌ様は、何度も足を運んでおられるんですよね」
「ええ。私は自分の周りに作者本人を住まわせるけど、中には帝都を離れたくないと言う者ももちろんいたわ。そこの立地を大切にしている者もいれば、生家として居ついている者もいた。私は自分の街を最高に自分好みにしているから、ここに留まる気はないけどね」
自らの趣味のために都市そのものを改造する女領主マドレーヌ。その才覚と資産に引かれて多くの者が彼女の領地には集まっている。
そういう意味では、帝都より最先端を行くのは、彼女の街であるかもしれない。
寄り道らしい寄り道もなく、三人は学会へと赴く。
「今回の発表会は、帝国の西方での発見に偏っているみたいだな。旧帝国時代に滅ぼされた大都市が、確かあったはず」
「国境沿いの街の一つですね。街の内部自体が迷路のような構造になっていて、領主の館を最後の砦にして、市民八千人が最後まで抵抗したとか」
今、帝国は西国との緊張状態が増している。最初の発表内容が、その都市の発掘調査結果というのは、どこか作為的なものを感じざるを得なかった。
「これが歴史学会だったら、たぶん帝国暦十年代の建国将軍たちの研究生が大半を占めているだろうね」
「帝国軍の高官や上級貴族が好きそうな話題ね」
「あ、でもこれは、彼らも興味を惹かれそうですよ」
ロゼッタが見つけたのは、一つの発掘成果に関する報告だった。
「第二十五次旧帝国陵墓発掘調査結果、千年級蒼の国工芸品の発見と復元……湾岸部第七遺跡群における、大型古代機人の発掘報告……」
「ハリエさんは、メイベリアン系の遺跡で見つけたんですよね」
「そう聞いている。北部にもメイベリアン系遺跡があったのか。それとも旧帝国以前の産物か……」
「聞いてみればわかることよ。うちの発掘のためにもね」
内容に不安を覚える二人に、マドレーヌは大丈夫と肩を叩く。自分たちの発見がなにを齎すのだろうか。少しだけ不穏な気持ちを覚える。
「僕たちの研究は、悲しみを生み出すためのものじゃない。きっと、それを証明して見せよう」
「はい。東の山の向こうに、親しい友人がいる。それを伝えるために」
たとえ、この学会に訪れる者たちがなにを望んでいたとしても、二人がするべきことは変わらない。
少しだけ触れ合った手をすぐにお互いに引っ込める様子に、マドレーヌは手で口を押えて、笑いをこらえた。
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