第十六話「砂被り姫の報告会」前編
結果、一か月半に及ぶ第一次発掘調査は、そのうち三分の二を、遺跡周辺の整地作業に使用された。
これから先の遺跡の保全、調査の実施を考えれば打倒なものだった。しかし、この現場に携わっていない者や、状況を理解していない者からすると、これは時間の浪費だった。
「というわけで、学会報告を、あなたたちにお願いしたいの」
前置きを話したマドレーヌは、『ル・ビュー』で調査報告書を作成しているロゼッタとカイロの下を訪ねてそう言った。
「学会報告……それは、できません」
「ええっ!? なんでよう、あなたたちにとってチャンスじゃないの?」
「それは、メイベリアンの遺跡調査の結果がまだ半分も上がっていないのと、資料が少なく過ぎるからです。この調査に意義があったかどうかを証明することが、今の段階では不十分何です」
「下手に成果報告を行えば、マドレーヌさんが見つけた黄金像と同じようなものを狙った輩が増えるでしょう。それは、夫人もお望みではないでしょう」
「それもそうね」
少なくとも、マドレーヌは正当な報酬でもって、正当な手続きを踏んで、遺跡の調査発掘を行い、その保全に努めている。
帝国の文化庁、考古学協会、歴史学会、帝国博物館、帝国図書館その他もろもろ。
国内で歴史や伝統を司る者たちから支持を得て、発掘調査を行っている。
「もし発掘品の話が下手に広まれば、荒らされる遺跡は増えます」
「幸い、遺跡があるのはカエルム領に集中していますから、その大半はお父様が保護してくださっていますし、マドレーヌさんも協力してくれています。けど、他の所は……」
そもそも、古い王族の墓が、とっくに墓泥棒によって暴かれていたなんてことはよくある話だ。メイベリアン遺跡が発掘しづらい山岳部周辺にあるため盗掘にあいづらいだけであり、人の欲望が高まれば、どんな場所でも掘り返すだろう。
「それに、ハリエさんが見つかったのも、メイベリアン遺跡だったはずです。祖父の日記には、そうありました。あまり広めすぎるのも、得策ではないでしょう」
ベアーガの骨董品店は、開かれて長い。代々考古学、発掘作業に携わっており、ハリエという存在を見つけたのも、彼の家だった。管理自体はアミーポーシュ家に委託しているとは言え、長い間、カイロとその家族はハリエに見守られ続けてきた。
「今回の調査はかなり内陸部です。頭の固い老人たちといえども、さすがに無視できないものになります」
「できればより多くの調査を完了したうえで、学会に望めればと」
掘り出すもの全てを先に掘り出してしまえば、あとから介入してくることも、問題のある者たちの寄り付く島もなくなる。
何より、きちんと価値を示せなければ、古来の技術というものは、手痛いしっぺ返しを食らわせてくるかもしれない。
「わかったわ。でも、学会への出席券はあるから、行くわよね?」
「もちろん!」
その問いかけには、二人は揃って肯いた。
実際この学会が開かれるのはほんの一週間後であり、到底、二人の提出した論文は、議論の場には間に合わなかっただろう。
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