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第二話「砂被り姫の追放先」後編

本日は第5話までお楽しみください。


 親友マドレーヌの領地アミーポーシュ領へとやってきたロゼッタは、男爵邸への道すがら、人の集まりが目についた。

 男爵領では「才ある者が美を作り、能ある者が金にする」という。画商、宝石商、彼らは美を金にする名人だ。


「さぁご覧あれ! この宝石は旧王朝三代女王クネフェルが身に着けたペンダント! ルビー、エメラルド、サファイヤの三種! 販売許可書と鑑定書もつけてこのお値段!」

「四百年前、弾圧されし退廃芸術の画師ミロスの遺作『アミーポーシュの宴』! 一点限りの掘り出し物だ!」


 通りの隣り合う宝石商と画商に目を留めた。

 そこで売られているのは見事な宝石細工に立派な額縁に入った風俗画。どちらも埃や汚れが付かぬように厚い硝子のケースに覆われ、道行く人々の目を奪う。

 宝石細工のほうは金のベースに散りばめられたラピスラズリと大粒の宝石が輝く。

 風俗画はこの街でかつて行われたカーニバルを描いたものだ。非常に細かい人物一人一人が描き分けられ、高価な顔料が使われており、それだけでもかなりの額だろう。


「それ両方とも贋作ですよね」


 それを、焼けた肉のように斬り捨てる。


「な、なにをおっしゃるのですお嬢さん。触れもせず、そんな人ごみの向こうから見て何をおっしゃいますか」

「その通り! この筆の使い方、構図、間違いなくミロスのもので、四百年前当時の特注の額縁。たとえ劣化していようと、これが偽物のはずは――」


 商売の邪魔をされて怒る商人たちに、ロゼッタは冷静に答える。


「見ればそのペンダント、硝子ケース越しでもチェーンが偽物なのがわかります。当時はまだそれほど小さな鎖はできなかった。それに左右対称が尊ばれた旧王朝ですが、クネフェル女王はそれを崩す変わり者。彼女の装飾品のベース部分の右側、実は左側と宝石類の配置がずれてるんです」


 つらつらと流れた言葉に、宝石商は開いた口が塞がらない。


「そちらの絵ですが、そもそもキャンバスが違います。当時使われていたポプラ板を湿気に当てて割れ目を作ったんでしょうけど、割れ跡が本物と異なります。わざと切れ目を付けて割れやすくした傷は細すぎます。額縁のほうはいい仕事していますが、銀の艶を消しすぎです。古く見せるだめでしょうが、銀の経年劣化表現には物足りません」


 ここまで言えば、画商は受け答えもできなかった。

 周りの客は帰る者もいれば、衛兵を呼びに行く者もいる。芸術の都において、贋作・模造品の流通はすでに日常だ。それを見極められない者が泣きを見るが、それを売った者に寛容であるはずはない。

 この街の名声を貶める者に、アミーポーシュの民は容赦がない。


「ひ、人の商売の邪魔しやがって! おいお前ら!」

「このガキが、縛り上げて娼館に売り飛ばしてやる!」


 商人の声に合わせて、悪人面の輩が裏通りから顔を出すが、すぐに顔が青くなる。襲い掛かってくるかと思ったら何もせず、ロゼッタの後ろを見ていた。

 どうしたのかと首を傾げた彼女に声がかかる。


「あらら、さっそく揉め事かしら。ロゼッタ」

「マドレーヌさん!」


 そこには、私兵を率いたマドレーヌが立っていた。

 蜘蛛の子を散らすように逃げ出した悪徳商人たちだが、彼女の私兵から逃れることはなかった。



少しでも気に入っていただけたら幸いです。




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