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誇り高き虎

 ラティアス視点


 物心つく頃には既にノルザンシル公爵家にいた。だが、私がノルザンシル公爵の養子だと気づくのはそれほど遅くなかった。


 それは当たり前だ。何せ私は生まれながらに白虎と言う上位種だったこともあり、両親や兄弟たちとは違うのだと嫌でも理解できた。


 けれど冷遇されるどころか逆に公爵家の権威は惜しみ無く使われ、僅か9歳と言う若さで他を圧倒する戦闘能力を手に入れた。


 早急に学院に入れた方がいい、と言う意見も上がったが、上位種である私とて学力は平々凡々。魔法も単体ではそれほど強くはない。あくまでも秀でているのは肉体なのだ。

 当然、記憶力も優れているが、それでもこれまでは最低限の教育に留め、武力を極めてきた私にはすぐに飛び級するのは難しい。それに、公爵家を継ぐことが確定している私は女子にとっては優良物件である。変な女に引っ掛かってはならない、と慌てて飛び級するようなことはしなかった。


 魔法が使える男を養子に迎えた場合、基本的には引き取った家の娘と結ばれることが多い。これは血を絶やさない為だったり、変な女が正室とならないようにする目的がある。しかし、側室は基本的に制限は無い。だからこそ、こうして順当に入学し、進級してきた訳だが──


 全く、どいつもこいつも張り合いがない。


 私の学院生活は退屈なものになっていた。ワラワラと群がる女どもにうんざりする毎日。唯一の友人と言えば副会長のハドロンくらいか。


 ひとつ下には男子生徒はいないが、今年の新入生にはなんと3人もいた。それに、教員の噂によれば3クラスは招待状を送ったにも拘らず、蹴られたとか。普通に考えればあり得ない。何せメリットが皆無なのだ。招待状を送った教員以外の誰にバレることはなく、学院生活での特権が得られる訳なのだから。


 ここから私はひとつの仮説を思い付いた。それは同一人物に招待状が送られたのではないか、と言うものだ。それが2人なのか3人なのか、はたまたたったひとりに4クラスもの招待状が送られたのかは分からないが、いずれにしろ今年の新入生は面白い者がいることには変わらない。



 5月になると生徒会の顔合わせが行われた。本来なら4月でやることなのだが少し調べもの(主に新入生について)をしていたら少し時間がなかった。まあ、そこまで大したことではないので、後回しにしていたと言えばその通りである。

 そこで対抗戦の参加を聞いたところ、生徒会では私の他にリオしか参加しないようだ。だがそれでも構わない。リオはみたところ歳の割には強い雰囲気がする。流石は魔王の息子と言ったところか。4月まではなんとも思わなかったが、姉のリナが消えたことと無関係ではないだろう。


 他に気になるのは、まだまだ子供なのに飛び級してきたトウヤだろうか。飛び級とはそう簡単にはできない。確かロローシュ辺境伯のところの姉妹もそうだが、彼女らは6年前まではそこまで優秀だと聞いていない。そして、同じく6年前に突如現れたトウヤの出自は不明だと言う。これは単なる偶然なのか?



 6月になると魔王がリオを引き取った。これにより月末の対抗戦に参加予定の1チームがひとり欠けてしまった。リオの代わりにトウヤを強引に参加させたのには理由がある。

 Sランク冒険者タッグの片割れであるルシアを侍らせているのは明らかにおかしい。彼女らは誰にも靡かないことで有名なのだが、それがどうだ?トウヤの傍に嬉々としているルシアは嫌そうに見えない。なので彼女が好く何かがあると踏んでのことだ。


 結果的には正解だった。対抗戦でトウヤは私を上回る程の実力を有していることが判明した。


 試合開始直後に飛んできた稲妻はすんでのところで直撃していた。しかし、私は掠っただけだったので魔法障壁(マジックバリア)に罅が入っただけで済んだものの、後衛のチームメンバーに当たってしまった。するとどうだろう。彼女の魔法障壁(マジックバリア)は紙切れのように簡単に貫かれ、脱落してしまった。後から聞いた話では魔力を注いでいなかった訳ではなかったと言う。寧ろ攻撃が来たと分かった途端に全力で魔力を込めたのにも拘らず破れたのだ。


 半吸血鬼とは聞いていたが、たかだか魔攻が5倍で歳の離れた栄光の天気(グローリーウェザー)が一撃だと?それも速度を重視したであろう3級雷魔法で、だ。


 こいつは不味い。私はともかく他の奴等が狙われでもしたらそれこそ試合が終わる。流石にトウヤがじっくりと魔法を撃てる時間を稼がれては敗北する。


 そう思い接近戦を試みたが、背後に現れた熊に対して気を取られてしまい、迸る紫電(エレクトロ・ショック)を受けてしまった。恐らくこれが敗因のほとんどを占めていると言っても過言ではないだろう。満足に動かない手足では勝てるものも勝てない。


 戦闘を行っていても使い魔を出せるのは私とて同じだ。しかし、僅か3ヶ月以内でそこまでできたのかと聞かれれば答えはノーだ。だからこそ不意打ちとなり致命的な隙を晒してしまった。


 正直この対抗戦では勇者パーティが最大の障害だと思っていたが、そんなことはなかった。まだまだ未熟の彼女らよりも圧倒的にトウヤひとりの方が強い。恐らくだが、彼女たちではトウヤの魔法を回避すらできないのではないか?


 切り札である獣化すらも敵わずトドメを刺される寸前で不慮の出来事が起きた。大きな音が地上からするので何事かと思い、痺れる足を動かして外へ出ると魔物がそこかしこで産まれていた。


 一度校舎に戻り生徒たちと合流して学院を出て少しするととある人物が現れた。


「貴様何者だ?こんなところで何をしている」

「ふふ。そろそろ来ると思っていました。ラティアス・ノルザンシルさん」

「あいにくと私は貴様と待ち合わせした記憶はない」


 フードを被ったコートを着た人物は声からして女だろう。


「そうつれないことを言わないでください。このときの為にどれだけ準備をしたと思っているんですか」

「準備?まさか、この魔物の発生は貴様がやったのか?」

「ふふ。真実を知りたいのならば私と来てください。勿論そこの人たちを置いて」


 今まで私が正面を、先生が殿を努める形で進んできた。少し痺れが取れてきた程度の身体で魔力を使わずに済んでいたとは言え、ここで私が抜けるのはスカイ学院の生徒たちからして見ればかなりの痛手だ。


 正直私のスカイ学院での素行は悪い。女を見下し、好き勝手にやってきた。だが、見捨てるのは違うだろう。


「断る。怪しい女にはついていくなとの幼い頃からの約束があるからな」

「おやおや、では強引にでも説得しましょうか」


 彼女はどこからか──恐らく収納庫から──鎌を取り出した。刃の部分だけ真っ赤で他は漆黒のシンプルなデザインの武器はまさに命を刈り取るものだ。


「上位種相手に手加減などできませんので──死なないでくださいね?」


 考える前に身体が動いていた。本能が彼女を街の外へ出せと、戦う場所を移せと叫んでいたのだろう。少し回復した魔力を使って風魔法を起動させ私の拳がヒットする瞬間に彼女を吹き飛ばした。


 外に移動することに成功したはいいが、さっきの魔法で魔力は減り、後は精々簡単な魔法がちょっと使えるくらいで、手足はまだ少しだけ痺れている。


 対して相手は一発当てたとは言え鎌で防御された上で吹き飛ばすことを目的とした一発だ。あまりダメージは期待していない。


 ハッ!いいハンデだ。逆に私が貴様を捕らえてやる。


 爪と鎌が何度もぶつかり合う。しかしそれも長くは続かない。


 貴重な魔力を用いて呼んだ使い魔の土竜を使って相手の足元に穴を掘る。


 チャンスは一度だけだ。


 上手く誘導して穴に嵌めると部分獣化させた腕を振りかざす。


 しかし、私はそのまま動くことが出来なかった。何故なら彼女が持っていた鎌が背中に突き刺さっていたのだから。

トウヤ視点でロノアの話を書こうかなと思ったのですが、このままではラティアス視点書かないと思ったのでさらっと書きました。次回はトウヤ視点です。

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