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葡萄と梨

 ルミナス視点


 私は勇者パーティが気絶していることを再確認するとゆっくりと降下していく。


「天使?何でこんなところに」


 私の存在に気づくや否や、そう問いかけてきた。


「別に大した理由は無いわ。たまたま近くにいたから寄ってみただけよ」

「……まぁいいか。それより、退いてくれないかな。そこの人たちに用があるんだ」


 指が指す方は私……の後ろにいる勇者パーティだった。


「守ってあげる義理も無いんだけど、彼女たちは利用価値があるのもまた事実なの」

「利用価値……私と同類ってわけか。だけど、横取りは感心しないな」


 相手はあからさまに不機嫌な態度だが、それも仕方ない。私は少しばかり申し訳ないと思いながらも、引く意思はないことを示す為にまず手始めに葡萄を潰して産まれた魔物を消し去った。


「ッ!?今のは君の仕業、か」

「ご自由に想像してくれて構わないわよ。私は、明らかにこの騒動に関わってそうな貴女にも興味があるの。むしろ、貴女が本命と言ってもいいわね」

「私に?残念だけど、遠慮しておこう。私にはまだ、やらなければならないことがある」

「貴女に選択肢は元から無いわよ。ほら、これでもう動けないでしょ?」


 彼女の身体を幾つもの白い光が射貫いていた。しかし、外傷は無い。これはあくまでも拘束するための魔法だから。


「っ……光2級魔法、だけど、あり得ないくらいに練度が高い」


 身動きがとれない彼女を他所に私は小さな小瓶を取り出した。


「これは真実の秘薬と言って私の仲間から貰ったの」

「君にそれを託したお仲間さんは相当腕のいい薬師のようだ」


 真実の秘薬はその名の通り本当のことしか話せなくなる薬である。その効果は飲ませた者の魔力が秘薬よりも高いと効き目が薄い。その特性故に実用性のある秘薬を作るのが難しく、材料も入手しにくいことで高値で取引される。


 私は強引に口を開かせて秘薬を流し込んだ。


「さあ、教えて貰おうかしら。貴女の目的を」



 エヴァン視点


「その梨。もしかして禁断の果実(フォビドンフルート)のメンバーだったりするのかな?」

「……」


 頭上から話しかけるが、答える様子もない。


迸る紫電(エレクトロ・ショック)


 まずは相手の足を狙う。僕の最速の攻撃魔法である迸る紫電(エレクトロ・ショック)ならラティアスのような上位種でない限り避けられるとは思えない。


 紫の軌跡を残しながら確かに反応することすらできなかった彼女の太ももに直撃した。だが、貫通はしていない。ダメージは大きいだろうが、本来の威力よりも大幅に減衰させられている。


「!?」

「つぅッ!何なんだその馬鹿げた威力は!?」


 彼女の太ももからは血が流れ、膝をついていた。目的である機動力を失くすことには成功したが、相手が何をしているのかは謎だ。


()()()()。減魔領域!!」


 0級!?そんなものが存在するのか!?


 本来魔法は級の数字が小さければ難易度が高く、強力な魔法となり、例外として、文字級魔法がある。しかし、数字は最小で1のはずだ。0なんて聞いたことすらない。


 そんなことを思った途端、全身から力が抜けていく。いや、普通に動かす分には支障はない。飛行と透過スキルを維持出来なくなっているのか?


 段々高度が下がっていき、最終的には自由落下する。


 くっ!魔力が練れないから魔法も使えない!


 幸いにも自由落下し始めた地点が数メートル程度だったのでまだなんとかなった。けど、めちゃくちゃ痛いことには代わり無い。


「魔物が動かないのはエネルギー源が魔力だからか」

「流石に分かるか。にしても、結構高い所から落ちたみたいだが、よく無事でいられるな」

「ただの自由落下だからね。数メートル程度なら問題ないよ」


 彼女は太ももを負傷しているが、なんとか立ち上がる。


 ポーションくらい常備してると思うけど、傷口を塞がないのはポーションの魔力すらも存在出来ないのか?だとしたら魔法が使えないのは向こうも同じなはず、なのになんで彼女の魔法が持続できるんだ?


 存在しないはずの階級の魔法。魔力を失くす空間を創る魔法の中でもまだ持続する魔法。彼女自身のみ例外ならば何故回復魔法を使わない?前人未到の階級まで魔法を極めているはずなのに、回復魔法を使えないなんてありえるのか?


 分からないことが多すぎる。でも、いつまでも考えることは出来ない。僕本来の身体ならともかくトウヤの身体だと魔力を封じられるとポンコツなのだ。(あくまでも魔力だけが25倍と言うほんの少し強い種族なだけで、強くはないけど、レベル差があるのでなんとかなっている)つまり、魔力を失った僕は格好の獲物となる。


 収納庫は動かないから剣すらも無い状態、無手で勝てと?冗談じゃない。レベル差があるかもしれないけど、それは避けたい。


 僕は相手の機動力を失くしておいて良かったと心底思いながらまわれ右をすると全力で走った。

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