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 エヴァン視点


 ハンターのクランに向かう道中。既に街に入っているが、空から眺めると地上のどこを見ても必ず1体は魔物が産まれている異様な景色が広がっている。建物はあるけど、魔物が産まれる道には視界を遮るものがあまりないので魔物が良く見えるのだ。本来ならそれは魔物側も同じなのだが、存在隠蔽のスキルが姿を隠してくれるので僕たちだけが一方的に上から見ている。


「そう言えば、勇者を倒したラティアスがあんなに弱かったからなんとなくルフトの人々が弱いことくらい気づいてるけどさ。なんでルミナスと冒険者やってるの?」


 ルミナスとルシアは天使と悪魔と言う珍しく、ある程度強力な種族なのだが、眷属(我々)の中では微妙な立ち位置にいた。決して弱いわけではないのだが、他の眷属の方が強いので、ルシアはメイド染みたことをしているし、ルミナスは回復担当の立ち位置だった覚えがある。


「ルミナスが冒険者なのは私が誘ったからですよ。一緒にやりましょうって」

「へぇ。意外だね。天使と悪魔ってなんとなく嫌悪くなイメージだったよ。で、なんで冒険者に?冒険者って何でも屋みたいなところがあるけど、戦わないわけじゃないのに」

「戦えるメイドって憧れますよねっ」


 満面の笑みでそう告げるルシアを見ると不思議と府に落ちてしまった。


「なるほどね。それに付き合わされるルミナスが可哀想だけど」

「一応ルミナスは非常勤ですが、治療院で働いていますよ。お偉いさんからすれば腕がいいだけで取り敢えず指名したいと思うでしょうからコネをつくるのには片手間でやっていても問題ありませんし、自由度の高い冒険者と兼業でも差し支えないのが大きいと思います」

「へぇ。ルミナスって天使だし、教会に属しててもおかしくないって思ったけど、大抵面倒な場所だし冒険者にって言うのは難しいか。ルシアは何かやってないの?」


 僕の質問に苦笑いするルシア。


「どこかのメイドをすることも考えましたが、ご主人様はひとりだけなので」

「いくら冒険者が自由と言っても数日間拘束される依頼もあるだろうし、ルミナスみたいに上手く噛み合う仕事って中々無いか」

「ルミナスは魔法が使えますけど、私は難しいですからね。スキルポイントを使って何か習得することも考えましたが、割りに合わなかったので」

「いくつだったの?」

「えーっと、このくらいでしたかね?」


 ルシアはそう言って左手の指をすべて広げた。


 流石にそのままの5Pだったとは思えないし、その10倍、いや100倍か?


「500ってこと?」


 ルシアは首を縦に振った。スキルポイントは才能によって消費量が変動する。つまり、それだけルシアには魔法の才能が無いと言うことだ。


「所詮は落ちこぼれってことですかね。おや……どうしてあんなところに人が?一般人では無さそうですが」


 ルシアが指し示す方を向くと確かに誰かがいた。その人物の周囲でも当然のごとく魔物は産まれているのだが、どういうわけか次々と倒れ伏していくのだ。それもCやBランクだけでなく、動けない魔物の中にはAランクの魔物も存在する。

 一般人ではないと言った根拠はルフトではその光景が異常だったからだろう。いくら自分の間合いに獲物が立ち入ったとは言え、魔物が目立つ外傷なしに力なく倒れていくのだ。


「見ただけでヤバそうだよ。近づくのは嫌だし、ルミナスが来るまで待つ?」

「上から話しかけてみましょうよ。エヴァンなら魔法が使えますし遠距離で仕留められます」

「……よし。分かったよ。じゃあルシアは待ってて。僕ひとりで行くから」


 本来ならルシアに話させて僕が隠れて魔法の準備をするのが一番なんだろうけど、他に仲間が居た場合が厄介だ。僕が見張れば万が一のことがあればルシアを危険に晒すことになる。それは避けたい。


「……分かりました。では、私は周囲の警戒を務めましょう」


 存在隠蔽のみを解除すると僕は謎の人物の間合いよりも少し離れた位置で上から声をかけた。


「そこの君。一体何者だい?」

「チッ。お前は……学生か?私はハンターだ。空からご挨拶とはいいご身分だな。さっさと降りてこい。それと、人に何者か聞くときは自分から名乗れ」

「悪いけど信用出来ないかな。Aランクの魔物をも間合いに入れば動けなくすることが可能のに、ハンターである貴女が何も回収しようとしないのは不自然だよ。ああ、名乗るの忘れてた。エヴァンだよ」

「私はプラムだ。何が能力の引き金(トリガー)か、なんて分からねぇのが普通だろ?何も不自然じゃねぇな」


 なるほど一理あるか。ルフトのハンターは使い魔が居ない方が稀で、僕は使い魔に詳しくない。だから方向性を変えてみることにした。


「リテラナからは何か言われてないの?」


 僕はこの非常事態にリテラナが何も策を打たないとは思えなかった。プラムがハンターだと言うならリテラナの名前を出せば何らかの反応があって然るべきだ。


「リテラナ?……いや、何も聞いてねぇな。さっきからそっちの質問ばかり答えてんだ。私の要求くらい呑め。──降りてこい。ガキが、あまり舐めてんじゃねぇぞ?」


 ダメだ。相手がハンターなのか危険人物なのか分からない。本当にリテラナは何も指示を出してないのか?いや、リテラナの名前を出して僕が何者か聞かないあたり──黒か?


 とりあえず、こっちが一方的に要求を押し付けるのは良くないので、仕方なく僕は今よりも距離を空けて地上に足をつけた。


「僕は貴女のことを知らないんだ。それに、その魔物たちを見れば警戒するのが普通だと思うけど?」

「チッ。んなこと知ったことじゃねぇ。ガキに見下されるのが我慢ならねぇんだよ」


 僕からすればそれこそ知ったことじゃないんだけど。


「貴女はここで何してるんですか?」

「見りゃ分かるだろ。魔物討伐だよ」


 周りにある魔物を見れば確かに魔物を狩ってると言えるけど、おかしいことがある。


「移動もせずに?」


 魔物を狩るのに待ち伏せすることはある。現に彼女の間合いに入った魔物はその悉くが倒されていた。しかし──


「向こうから勝手に寄ってくるからな。獲物の解体は後でやるし、管理込みで待ってる方が楽なんだよ」

「この現象がいつか終わると確証でもあるんですか?」


 ──彼女は魔物を処理していなかった。どこもかしこも魔物が産まれて得る場所で呑気にそんなこと出来ないと言われたらそうかもしれない。だけど、それなら彼女はただの経験値稼ぎのために魔物を狩っていることになる。ではなんのために?彼女はハンターを名乗った。そのハンターがレベル上げ?魔物の処理もせずに?おかしいだろう。


「あ?……確かにねぇな。そりゃ不自然に写るか。あー失敗したなぁ」


 彼女の雰囲気が変わった瞬間に足をつけただけの身体を上昇させた。


「けど、いい実験結果が得られたんだ。──てめぇでも試して、引き上げることにするか」


 そう言ってプラムはどこからか梨を取り出してかじりついた。

先週お休みした理由は単に模試が忙しかったからです

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