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葡萄 その2

 ルミナス視点


 トウヤの私物を回収してから寮の外へ出るとそこらかしこで魔物が産まれている奇妙な光景を目にする。それはだんだん産まれるスパンが縮まっていることを表していた。つまり、ここら一帯の魔力濃度が格段に上がってきてると言うこと。


 明らかにおかしいわね。これまで多少の変動はあったにせよ魔力濃度が著しく高まる現象なんて聞いたことがないわ。


「そう言えば、勇者パーティを見てないな」

「勇者パーティ?そんなの今はどうでもいいでしょ。早く行くわよ」

「ダメですよルミナス。ルフトの勇者はエヴァンが圧倒したラティアスとか言う男よりも更に弱いみたいですから。下手をすれば死んでしまうかもしれません」


 わざわざ心配するほど勇者が弱いとは思いもよらなかった。実際に会ったことはないけど、15歳の勇者パーティが弱い訳がないと勝手に思い込んでいた。と何せエヴァンはたったの14歳で魔王を討伐したのだから。


「Aランクが少しいる程度で大半がBかCランクよ?」

「今の彼女らは聖剣が無いんだ。死ぬ可能性は十分ある」


 勇者パーティは魔王を討伐しなければならないのだ。聖剣が無いとは言え今の歳でAランクの魔物を倒せないなんて、魔王を討伐する気がないとしか考えられない。


 ルフトとロノアでは魔物のレベルが違うのでルフトにとっての強い魔物はロノアにとっては雑魚でしかない。そのせいで感覚がずれているだけなのだろうか?


「聖剣を持ってこないなんて、何を考えてるんでしょうね。それよりも、聖剣が無ければ戦えない勇者や剣聖なんているの?そんなので勇者が務まるだなんて、ルフトの勇者はどうなってるのよ」

「仕方ないよ。ルフトの今代の魔王はちょっと特殊みたいで、平和主義らしいんだ。平和ボケの弊害と言えばそうだけどね」


 魔王が平和主義だなんて、到底信じられる話ではないけれど、実際にこの6年間で冒険者としてルシアと一緒に見てきたルフトは──平和だった。

 勇者や魔王の話はあまり聞かなかったので、ルフトにはそういうものは無いのだと勘違いした程だ。


「なら、私が探しに行くわ。ルシアとエヴァンは街のハンタークランでリテラナと合流してから近くの町にでも向かって」


 リテラナはトウヤの眷属の中でもトップクラスに強い。流石竜人とでも言ったところだろうか、あっという間にハンターのサブクランマスターになっている。近くにいるのなら合流しない手はない。


「分かりました。では気を付けてくださいね」


 エヴァンは存在隠蔽、飛行、透過スキルを、ルシアはむき出しの背中から悪魔らしい漆黒の翼を広げて飛行スキルではなく飛翔スキルで使って街へ向かう。


 私もいつも羽織っている上着をしまい天使の純白の羽を広げてルシアと同様にして勇者を探す。一応髪の色や制服は把握しているのでなんとかなるだろう。


 私がひとりで探すことにしたのは理由が2つある。

 ひとつはトウヤの身体をいち早く安全なところに逃がしたかったこと。その為には私かルシアが一緒に行く必要がある。何せエヴァンはトウヤと共通する魔法やスキルしか使えないのだ。その程度の弱体化でルフトの魔物とか人間とかにやられるとは思えないけど、エヴァン(トウヤの身体)に何かあってからでは困るのは私たちトウヤの眷属なのだ。

 最後の理由は単純に興味があるのだ。ルフトの勇者パーティはそんなにも弱いのか、ただの勘違いではないのか、と未だに信じられない。


 とにかく早く見つけないといけないわね。


 エヴァンとルシアの話では勇者パーティは死ぬ可能性があるらしいので適当に助けなければならない。


 どうせ私だけ別行動ならこれが自然災害だとは思えないし、この事件の黒幕を暴いておきたいところね。


 私は勇者パーティついでに怪しげな者がいないか探し始めた。



 幸いなことにすぐに勇者パーティは見つけることが出来たけど、これは酷い。


 何が酷いかと言えば、たかがAランクの魔物1体と白衣の人物1人を相手に満身創痍になっていることだ。

 勇者パーティって言うのは普通誰が相手であろうと1人だけなら例えAランクの魔物が居ようと負けることはないのだ。


 特に賢者には失望よりも怒りを覚える。なんだかトウヤが侮辱されている気分になった。それはトウヤがもともと勇者パーティの賢者だったことが関係している。


 落ち着かないと。目的を見失って逆に殺してしまってはトウヤは勿論、他の眷属と合わせる顔が無くなってしまう。


 すぐに助けるつもりはない。魔王も倒さずにいつまでも平和と言う名のぬるま湯に浸かっている勇者パーティなど許されることではない。何よりも私が許さない。


「弱い。弱すぎる。いや、この場合は私とこの子が強い、のか?」


 白衣の人物が葡萄を一粒口の中へと放り込んだ。途端に白衣の人物の魔力が回復した。


「一体何者なの?あなたは確かにその葡萄らしきものでその魔物を産み出した。でもそんなことが出来るなんて聞いたことが無い」

「んー。分からないなら教えられないな。悪いけど無意味に正体を明かす趣味は無いんだ。有名になりたい訳では無いからね」


 勇者ちゃんの質問に答えることはせずに葡萄を食べる白衣の人物。


「でも安心していい。どうせ君たちは今日ここで1日死ぬことになるだろうから、私が何者かなんてどうでもいいことになる」


 白衣の人物は回復した魔力で魔法を放つ。私はそれをただ見ているだけで守ろうとはしない。聖女が結界を展開するもガラスを落としたかのように簡単に砕け散った。魔法を受けた勇者パーティは死んではいないものの誰一人例外なく地面に倒れ伏していた。


 そろそろ限界ね。


 使い魔すら維持出来ていない彼女らを助けるべく私は存在隠蔽と透過のスキルを解除した。

本当に申し訳ないです。短くて

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