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準決勝直前の出来事

 エヴァン視点


 早朝。

 (スノー)チーム全員で今日の対戦相手と開始時間、場所の確認をしていた。昨日それぞれの訓練場を映し出していた4つの画面が今はひとつとなってトーナメント表を大きく表示させている。


 準決勝の第1試合と第2試合は午前と午後に分けられている。その為決勝戦に進出するチーム同士は必ず1度は相手チームの戦いが観られる。これは決勝戦を両チームが万全の状態で開始出来るようにする為に最終日に持ち越したので2試合しかないのなら平行して行うのではなく午前と午後に分けようという意図があった。

 因みにだが、初日で各ブロックの頂点を決めて学院側がその後トーナメントの組み合わせを決めているので初日の日程を崩すことは出来なかった。


「ラティアス会長のチーム、ですか」


 対戦チームを確認するなりファイ先輩がそうポツリと呟いた。


 スカイ学院からは2チームが初日を勝ち進んだが、組み合わせは完全にランダムなのでこういうことが普通に起こり得る。


「……緊張することはない。今日か明日かの違いだけ」

「緊張はしていませんよコレット。少し驚いただけです。それに、貴女の言う通りですね。これに勝てなければ優勝は出来ませんから」

「なら早速作戦でも考える?試合は午後からだから時間あるよ?」

「そうですね……貴方はどう思いますか?トウヤさん」


 ライカ先輩の提案に思案していたファイ先輩は僕に決定権を委ねた。一応トウヤがチームリーダーを務めることになっているが、リーダーとは名ばかりで実質ファイ先輩がリーダーなのだが、こうして僕の顔を立ててくれる。自分の意見を言わないあたりどっちでもいいのだろう。


「良いと思うよ。でもその前に朝食に行かない?」


 特に反対する理由もないのでライカ先輩の案に賛成する。反対意見は無かったのでひとまず食堂に向かいその後作戦会議となった。



 お昼過ぎ。

 作戦と言っても誰が誰を抑えてとか、最初の展開と言った大まかなものを当初の作戦から少し変えた程度のものだったので思いの外早く終わった。第2試合の開始時刻は3時頃なので時間はまだある。僕はトウヤの部屋にいるであろうルシアとルミナスのところへ向かっていた。


「おや?どうかしましたか?何やらお悩みのようですね」


 僕を見るなりルシアが聞いてきた。


「うん。ルミナスにも聞いて貰いたいんだけど、いるかな?」

「はい。ではご主人様のお部屋に行きましょうか」


 ルシアは言うなり方向転換して歩いていく。僕はそれに着いていく。


 ノックもせずに扉を開けるとルミナスが布団に包まってる姿が見えた。一体何をしていたんだか。


「何か弁明はありますか?」

「私悪いことなんてしてないわよ?」

「服を着もしないでご主人様の布団に包まってるのは悪いこと以外の何物でもありません」


 ルシアが布団を奪い取るとルシアの言っていた通り一糸纏わぬルミナスがベッドの上にいた。


「せめて身体は隠してよ」

「エヴァンは本来女でしょ?隠す必要なんて無いわ」

「バカなことを言ってないで風邪を引くので早く服を着てください」

「布団を取り上げたのがルシアなの忘れてないわよね?」

「再びご主人様のお布団を汚すつもりですか?そんなこと許される訳がありません。ああなんて可哀想なご主人様。ルミナスの匂いがするお布団で寝ることになるなんて……。これは私の布団とチェンジするしかありませんね」

「それはそれで駄目でしょ」


 ルミナスがいつもの服に着替えるのを待ってから本題に入ることにする。


「ラティアスとの試合のことで2人に相談があるんだけど……」

「もしかしなくても加減が分からないの?」


 ルミナスの言葉に僕は頷いた。


「私は全力でも構わないと思いますよ?」

「それはもうトウヤの力がバレてるってこと?」

「いえ、そうではありません。確かにある程度の実力があることは知られていますが、全力となれば話は別です。私が言いたいのは私との繋がりがあると知れ渡ったことでご主人様に何かあると勘づいた者が多いということです」

「まあ、学院でSランク冒険者のルシアが付き添っていたらそうなるよね」

「それだけじゃないわ。ラティアスは私たちと同じ上位種よ。下手に手加減したら負けかねないわ」

「それはそうだけど、僕は別に無理して勝つ必要はないと思うんだ」

「それはどうして?」

「十中八九ラティアスとの試合がこの対抗戦での目玉と言っても過言じゃない。それを僕が代わりにやってる時点でもういいんじゃない?」


 もし仮に全力を出して決勝戦に駒を進めてもトウヤは満足するだろうか。


「確かにご主人様はあまり乗り気ではなかったですけど、中身はエヴァンですけど、それでも私はご主人様の姿が負けることは我慢できません」

「そうね。私もそう思うわ。エヴァンは違うの?」

「……そうだね。ごめん僕が間違ってた。トウヤは目立ちたくないって言うだろうけど、もう遅いし」


 悩み事が解消されラティアスとの試合に気合いが入る。


「あらよっと!やっと着いたわ!」


 何もない空間から現れたのは白い悪魔の右翼と黒い天使の左翼を持った小さな熊だった。


「何その登場……まあいいや。遅かったねルーエル」

「これでも結構頑張った方なの!でももう慣れてきたわ」

「エヴァン。その熊は何?」

「ああ。そう言えばルミナスとルシアはまだ会って無かったよね。えっとトウヤの使い魔のルーエル」


 僕が軽く紹介するとルーエルはなんだか気分が良さそうになる。


「貴女たちがトウヤの眷属?うわぁ可愛いのに強そうなのはちょっと反則じゃない?」

「可愛いですねこの子!抱き締めてもいいですか?」


 ルーエルの返事を待たずしてルシアはルーエルを捕まえてぎゅっとした。


「ちょっと!いきなり何するのよ放しなさい!」


 じたばたするルーエルだが、ルシアの方が力が強いので一向に脱出出来る気配が無い。使い魔にレベルの概念があるのか分からないが、トウヤの眷属は限界値である500に届かないまでも400後半とロノアでもかなり高い。限界値が125のルフトで出来た使い魔がルシアよりも上だとは到底思えないので仕方ない事だ。


「今ルーエルを抱き締めてるのがルシア、こっちはルミナス」

「自己紹介はもういいでしょ。ルシアも放してあげて」

「あ、もしかしてルミナスも抱き締めたくなりましたか?」

「え!?私はぬいぐるみじゃないわよ!」


 確かに扱いはペットとかぬいぐるみと変わらないけどまあルシアが可愛がっているのはいいことのはずだ。


「私は遠慮するわ。ただルーエルだったかしら?その子から何か話があるのかと思ったからそう言っただけ。その状態だと話しづらいでしょ」

「そうですね。仕方ありません。もったいないですけど自由にしてあげます」


 ルシアが手を離すとルーエルは翼を羽ばたかせて空中に逃れた。


「全く、ひどい目にあったわ」

「それで、どうしてルフトに来たの?」

「だってロノアにいても面白くないもん。それに今ルフトで何か強敵と戦うみたいだから私の力を貸してあげようと思って」


 確かにレネッフェ相手だとルーエルは邪魔だろうし対抗戦で一度も使い魔を見せないのも不自然かもしれない。


「そっか。ならよろしくお願いしようかな」

「ふふん。大船に乗った気でいるといいわ」


 正直ルーエルの実力は分からないが、大船の素材が一体何になるのか不安になってきた。

言い忘れていましたが、前回の回想シーンでラミューラの一人称が私なのは意図的です。

今回でラティアスとエヴァン(トウヤの身体)をやりたかったのですが、次回になってしまいました。文字数増やせば良いだけのことなのですが、中々上手くいかなくて……

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