対抗戦 その4
すみません短いです。
ユティナス視点
目の前にいる土竜は誰かの使い魔なのは間違いない。エルザはハロフィムと応戦しておりそれもハロフィムが優勢なので使い魔を呼ぶ余裕は無いはず。ラティアスはヴィロナと交戦して優勢のようだが、他事をしながら彼女の相手が務まるとは思えない。相手の後衛もまもなくセレナが削りきれる。捨て身の攻撃で使い魔を送ってきたのが可能性としては高いはず。
そう判断すると結界は再構築し強度を上げて身を固めることで相手の魔法の障壁が壊れるまで時間稼ぎをする。ウィレムアの援護もあり余裕が生まれヴィロナの支援をと思い視線を向けると彼女は絶体絶命のピンチだった。
白虎の──ラティアスの爪撃が振るわれる直前。ダメ押しと言わんばかりにヴィロナの下げた左足が深く沈む。
あれは落とし穴!?もしかしてそれも全て予期して……!
完全に体勢が崩れた。重心も後ろにそのまま倒れていくヴィロナ。彼女は無理な体勢のまま強引に剣を合わせるが、簡単に弾かれた。後方に剣が飛ばされ丸腰のヴィロナに容赦なく2撃目が襲いかかる。爪が触れた瞬間にヴィロナの魔法の障壁は破壊されそのまま気を失ったように倒れた。
ヴィロナを倒してすぐに彼はこちらを見ると距離を詰めてくる。
「ウィレムア!」
「分かってる」
ウィレムアが何度も魔法を放つもラティアスには掠りもしない。
「賢者よ。聖女の援護に行ったのは悪手だったな。回復が機能しないこのルールでは勇者の方が優先度は高いに決まっているだろうに」
「……うるさい」
上から火の1級魔法──燃えたぎる結晶を放つ。しかしそれを切り裂くようにしてラティアスは駆け抜けてくる。
「さして魔力を込めていなければ練度も拙い。ただ級の高い魔法を使っていれば良いわけでは無いぞ」
飛び上がり黒天馬もろともウィレムアを叩き落とし魔法の障壁を破壊した。
「聖女はまあ及第点か。だが、貴様自身も戦えるようになることだな」
彼は私を見向きもせず土竜を引き連れハロフィムを襲撃する。咄嗟に結界で彼女を守るも死角から土竜に攻撃されたハロフィムは簡単に吹き飛ばされる。
「勇者もそうだったが、戦いながらでも使い魔くらい呼び出せ」
その後魔法の障壁を破壊された。
「その土竜は貴方の使い魔でしたか」
「その通りだ。ただの土竜だと侮っていたか?」
「ただの土竜に結界を割られては聖女失格でした」
「そうか。まあ、相手が悪かったのは認めてやろう」
そして私の視界は暗転した。
エヴァン視点
城下町の外壁まで着いたは良いけどどうやって入れば正解なのか分からない。
僕──私は誰が魅了されているか判断するために女に戻っている。当然ながらトウヤと入れ替わるときは男にしてから替わり、性転換の方法も教えていない。まず間違いなく私が性転換が出来ることはバレているけど、最近はお互いに忙しくて聞かれる機会がなかったからなんとかなっているだけで何も解決していない。……ほんと、どう説明すればいいの?
「ねぇ。早く行くわよ」
「……なんでルーエルは堂々と門から入ろうとしてるの?」
ため息をつきそうになりながらトウヤの使い魔である彼女にその真意を聞いた。多分ろくな考えではないと思うけど……。
「なんでって、城下町に入る為にはあそこを通らないといけないからに決まってるじゃない」
頭が痛い。別に頭を打った訳ではないから、心労からくる頭痛だと思う。
ルーエルはアルアリン砦で入れ替わったときからずっといる。何度もトウヤが引っ込めても勝手に出てくるみたいでルフトでも相当手を焼いていたらしい。
「おいおい。いくらなんでもこの状況で正面から行くのは無謀過ぎるだろ」
「ラミューラの言う通りだよルーエル。もうレネッフェの本拠地と言っても過言じゃない王城の城下町はどうなってるか想像出来ないの?」
「な、何よ!2人して私をバカにして!ならどうやって入れば良いのよ!」
完全に逆ギレしている。少し責めすぎたかな?
「エヴァンはトウヤに行って欲しいわけ!?」
「……ッ!そんなわけ無いじゃない!!」
「ちょっと2人とも声抑えろよ」
ラミューラが注意してくるけどそんなことは端からわかっている。でもさっきのルーエルの言葉だけは見過ごせない!
「私がどれだけトウヤのことを想ってるのか知らない癖に!私がどんなに苦しい思いをして今足踏みしてると思ってるのよ!!」
本当なら今日中に全て終わらせたい。明日になったらトウヤはなにがなんでも王城に行くだろうから。
「私だって本当は今すぐ王城に行ってレネッフェを倒してリリアーナを助けたい。でも、私じゃあレネッフェには……勝てないから。魅了には抗えないから。トウヤに頼るしか、ないじゃない」
自然と涙が溢れてくる。私が不甲斐ないばっかりにトウヤに全部やって貰ってしまった。魔王討伐だって手伝ってくれたし、眷属にすることで力もくれた。でも、もう彼の居場所はロノアにはなくなってしまった。彼を慕う眷属と行った異世界からでも私のことを助けようとしてくれている。
それがどうしようもなく嬉しくて悔しい。
「なら、トウヤに任せっきりにしないで、せめてお膳立てでもしておくわよ」
「言われなくてもそのつもりだから」
そもそもどうやって入るのかと言う話しだったのに何でこんなこと言ってたんだろ。
「取り敢えず私が透過、飛行、存在隠蔽スキルを使って通過して中の様子を確認するから出来そうなら上からラミューラを抱えて行くよ」
勇者は会長には勝てませんでした。




