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対抗戦 その3

 ヴィロナ視点


 今回は速攻を仕掛けることはせずに大人しくして様子を見ることにする。それはユティナスとウィレムアが使い魔を出して魔法を準備する時間を稼ぐ為に相手の出方を窺い、それに合わせて対応することで致命的なミス──ユティナスとウィレムアを攻撃されることを防ぐのが狙いだ。


「……ふん。来ないのか。勇者ともあろう者が一体どうした?私に臆した訳では無いだろうに」


 この手の作戦なんて珍しいものではない。恐らく私の目的が時間稼ぎということも彼は分かっているはず。


 彼は焦れったいとでも言わんばかりに私に向かって突っ込んで来た。


「まさかとは思うが、稼いだ時間で使い魔を呼べば数的優位を作れる、なんて考えていたか?」


 彼は攻撃しながら至極当然のように私たちの目的を言い当てた。


 それにしても、この拳、一撃一撃が重い……!


「……」

「図星か、それとも防戦一方で声も出ないか、どっちなのだろうな」


 そうこうしている間に後衛2人は使い魔を呼べたようだ。


「全く、残念だ。勇者と言えど、戦闘経験が浅ければこんなものか。それともなんだ?聖剣とやらがあれば別人のように強くなるのか?」


 なんともまあ、言いたい放題言ってくれるわね。けど、実際に優勢なのは明らかに彼の方なのは認めるしかないわ。でも……!


 私の背後から──正確には斜め上から──炎の矢が飛んできて一旦彼と距離を置くことが出来た。


「チッ小賢しい真似を」

「助かったわウィレムア」


 振り返らずとも分かる。彼女が使い魔に乗って援護してくれたと。


黒天馬(ダークペガサス)か。随分と相性の良い使い魔だな」

「ええ。自慢の仲間よ」


 防戦一方だったとはいえ、もろに攻撃を受けた訳では無いので魔法の障壁(マジックバリア)へのダメージは少ないけど、今のうちに削れた分の魔力を注ぐ。


「そうか。勇者とは仲間と連携してこそ、と言うことか。だが、私ばかり気にかけていいのか?」

「……ッ!ウィレムア一気に行くわよ!!」


 彼は誰の援護すら受けていない。それはつまり、他の3人がハロフィムとユティナスと戦っているからに違いない。


 悔しいけど、私1人じゃ彼には勝てない。だからウィレムアと2人ですぐに終わらせる!


「そう焦るな。動きが丸わかりだ。その程度で私を倒せるものか」


 私の剣はいとも容易く払われ、もろに横腹を蹴られた。


「うぐぅっ」


 彼は壁に向かって飛んで行く私をウィレムアの魔法を避けながら追いかけ壁にぶつかった瞬間を狙い追撃をかけてくる。


 後ろは壁でウィレムアの援護も私を巻き込みかねないくらい接近され剣を振るうには短い距離でインファイトを仕掛けられた。



 ユティナス視点


 試合開始直後に使い魔を呼ぶ準備をする。ラティアスという男をヴィロナが、もう1人の前衛らしき女性──エルザをハロフィムが抑えてくれている。


 少しして私の使い魔──聖霊(ホーリースピリット)のセレナが姿を現す。


 相手の後衛は数秒早くに使い魔を呼び出しており、エルザの援護をしていた。


 ラティアスのことはほったらかしみたいですね。彼が余程強いのか、ハロフィムを先に仕留めておきたいからこその一斉攻撃なのでしょうか?


 傷を癒したり、状態異常を治したりしてパーティをサポートするのが聖女の役割で、攻撃に参加することはほとんど無い。


 補助魔法で皆の素早さは勿論のこと、ウィレムアには魔攻の、ハロフィムには攻撃のステータスを上げる。今にもピンチなヴィロナには先にヴィロナ中心に結界を張ってから攻撃と防御のステータスを上げた。そしてセレナにサポートしてもらいながら結界を張る。


 回復がほとんど意味を成さないこのルールでは一番の足手まといは私。だから結界で自身を守りながらセレナに魔力を送ることにした。


「セレナ。お願いします」


 私の声に応じてセレナは空を飛んで行き相手の後衛に魔法を放つ。


 空から降り注ぐ魔法はどんどん魔法の障壁(マジックバリア)を削っていく。


 相手もやられっぱなしではいられないとばかりにセレナに対して魔法を放つも中々当たらない様子。


 これは時間の問題ですね。魔力供給過多にならないように気を付けて次に備えましょう。


 不意に背後からの鋭い一撃で結界が壊れた。


 全体を見渡していましたけど、流れ弾なんて飛んできていません。なら一体誰の攻撃なのでしょう。


 そう思いながら振り返ると目の前にいたのは少し大きな土竜だった。



 ヴィロナ視点


 ラティアスの連撃を急所だけは守りながら耐えていた。一方的にやられっぱなしの光景ではあるけど、このまま終わるつもりは無い。


 うん。大分慣れてきたわね。


 ダメージを最小限にしつつ魔力を魔法の障壁(マジックバリア)に送り、使い魔を呼ぶ準備を見計らう。ある程度集中しなければいけないので戦闘しながらだと難しいけど、防御に専念すればあるいは。


 急に彼の攻撃が何かに弾かれた。


 弾かれた方向からして彼の後ろから何かをした訳では無さそうだけど、もしかしてユティナスの結界?


 私は彼の晒した隙を見逃すことはせずに渾身の一太刀を浴びせた。


「チッ。お仲間からの支援か。鬱陶しいことこの上ないな」


 手応えはまあまあだったけど力が漲るこの感覚、ユティナスの補助魔法?だとしたら思ったよりもダメージ入ったのかも。


「あの辺か。少し遠いな」ボソッ


 彼がユティナスの方を一瞥すると何やら呟いたみたいだけど、聞き取ることは出来なかった。


「不満なら貴方も仲間に助けて貰ったら?」

「ハッ。冗談はよせ。私が助けることはあっても助けられることはあり得ない」


 そう言って彼は再び襲いかかろうとするが、今の私は攻撃に加えて素早さも上がっている。ユティナスからの支援がきたことはバレているけど、それは結界を張ったことと攻撃が上がったことだけ。なら素早さの変化でなら不意をつけるはず。


 難なくラティアスの攻撃を受け流し体勢を崩すと斬りかかるのではなくそのまま走り抜けた。これで場所が入れ替わり彼のすぐ後ろは壁になる。


「下手な攻撃よりも立ち位置を優先するか。今後の展開を良く考えられているな」

「それはどうも」


 上から目線な物言いが気にならなくないけど軽く流して彼の一挙手一投足にも注意を向ける。


「貴様が速くなるのなら、私もそれに応えようじゃないか」


 そう言って彼は自身に風を纏った。これはただ単に素早さが上がっただけでは済まなそうだ。


 案の定攻撃範囲とその威力も上がっており、防御するならともかく回避するときは風をしっかり見ながらじゃないと体勢を崩すだけではなく、魔法の障壁(マジックバリア)にどんどんダメージが蓄積されそれを補うべく魔力が失われかねない。だけど、対応は別に難しくない。だって立ち位置を入れ換えたのならウィレムアの攻撃が彼を捉えることが出来るのだから。


 剣の間合いに入るか入らないかの距離を保ちウィレムアが魔法を放つ。特級や超級では無いものの十分な火力の魔法を彼は鬱陶しそうに打ち落とす。


「……ッ!ごめんなさいヴィロナ。ユティナスに加勢する」

「え!?」


 ユティナスは後方でサポートをしてくれているはず。ハロフィムがもう1人の前衛を、彼女の使い魔であるセレナが相手の後衛2人を翻弄している。なら一体誰にユティナスが襲われているのか。


 思わずユティナスの方を見ると少し大きな土竜がいた。


「も、土竜?」

「余所見とは良い度胸だな。勇者よ」

「しまっ!」


 魔法の障壁(マジックバリア)が無ければ胸元をざっくりと切り裂かれていたことだろう。今にも魔法の障壁(マジックバリア)は割れそうだ。


「まだ耐えるのか。だが、そろそろ限界だろう。次に戦うときは聖剣を持っておくことを推奨しよう」


 そう言って彼は私に向かって腕を振り下ろした。

勇者対ラティアス会長は次回に持ち越しです。

戦闘描写が難しいから文字数少なくなりがちでしたが、今回はなんとかなったのではないでしょうか。因みにですが、ラティアス会長は白虎という上位種なので戦闘時は手足が部分獣化してます。

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